花粉症のつらさを少しでも緩和しようドクトル・ピノコのプチ元気の薬(7)(2/2 ページ)

» 2009年04月03日 00時00分 公開
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対処法はいろいろとある

 実は現在のところ、花粉症を完全に治す方法はないのです。あー、自分で書いてへこんでしまいましたわ。よく病院で処方される花粉症の薬は、根本的に花粉症を治すものではなく、あくまでも症状を和らげているだけ。では、どのようにして花粉症と戦っていけばよいのでしょう。

 わたしは患者の方にいつも、「花粉症の一番の治療は体に花粉が入ってこないようにすることです」とお話ししています。体に花粉という異物が入ってさえこなければ、理論的に花粉症の症状は起こり得ないんだもの。

 もちろん現実的に、この時期にまったく花粉に接しないというのは無理な話だけど、できるだけ入ってくる花粉の量が少なくなるように努力することは簡単でしょう。部屋にいる時には極力窓を閉め、空気清浄機を使ったり、外出する時にはマスクやゴーグルを付けたり、部屋に入る時には体に付いた花粉をはらったり……。とてもシンプルで当たり前のことですが、これだけで症状はびっくりするほど軽くなることが多いのです。

 次に、花粉が入ってきて症状が出てしまってからの対処法について。大きく「手術による治療」と「薬による治療」に分けられます。手術は鼻づまりの原因となるポリープを取ったり、曲がった鼻の仕切りをまっすぐにして通りをよくしたりと、花粉のそのものの治療ではなく、あくまでも鼻づまりを楽にするためのものです。

 薬による治療として一般的なものに、飲み薬や点鼻薬などによるものがあります。よく使われるのは抗ヒスタミン剤の飲み薬やステロイド、血管収縮薬などの点鼻薬ですが、結局これらも、「症状を楽にしている」だけであって、根本的に花粉症を治しているわけではないのです。薬の成分によって眠気が生じ、逆に仕事の効率が悪くなることもあるのがつらいところ。

面倒で大変だけど効果のある「減感作療法」

 花粉症を根本的に治すことはできないのでしょうか。根本治療に一番近いものとして、「減感作療法」があります。これは、アレルギーの原因となる悪者(例えばここではスギ花粉とします)のエキスを少しずつ体に注射していくという方法です。わざと花粉エキスを体に入れることによって、体をだんだん慣らしていくのです。

 そうすると、春になって本物の花粉が体に入ってきても、アレルギー反応が起こりにくくなり、症状が軽くなったりまったく出なくなったりするんです。すごーく嫌いな同僚でも、隣のデスクで毎日仕方なく顔を合わせていればだんだん仲良くなってくるようなものかしら? 実際この治療で、1年中まったく薬を使わなくても大丈夫になる患者さんがたくさんいます。

 ただし、減感作療法にもいくつか欠点があります。そのうちの1つが「毎回注射をされて痛い」ということなんです。エキスを体に入れるために、腕に注射をします。これを、最初は週に1回、その後2週に1回、落ち着いたら月に1回と続けていかなくてはなりません。どの時点で治療を終了するかは人によって違いますが、ほとんどの場合、通算の注射回数は100回を超えることになります。注射が好きな人はあまりいないので、だんだん病院に行くのが嫌になり途中で辞めてしまう人が多いというのも納得ですね。ちなみにMなわたしとしては、痛いお注射をされるのはちょっぴり良かったりするわけですが、こういうのはごく少数意見なんだろうなー。

まずは手軽な予防法から始めよう!

 最近のトピックとして、注射の代わりに、エキスを口の中に2分ほど含むだけでいいという「舌下減感作療法」というものが注目されるようになりました。

 現在はごく限られた施設で、研究という位置づけで行われている段階なのですが、これが一般的に受けられる治療になる可能性はかなりあります。そうなると、エキスを口に含むだけなので注射と違って痛くもないし、患者さんが自宅でできるようになり、通院の頻度もぐっと減ることになるわけで、「これならやってみようかな」という人も増えるかもしれません。何とも画期的なお話! 合コンの話のネタにしたら若いギャルが「スゴーイ! そんなこと知っててカッコイー!」っていってくれるかも(いわないかも、どっちでもいいや)。

 花粉症の症状によって集中力がなくなり、仕事がはかどらなくなっているあなた。まずは簡単にできる「予防法」からぜひ実践してみてください。花粉症の治療法は日々進化しています。わたしも鼻垂れなくなったら、もう少しモテるようになるかしら。

今回のポイント

  • 花粉症治療の第一は「予防」! マスクや空気清浄機など、うまく活用して
  • 症状を抑える薬はいろいろあるので、症状や体質に合わせてチョイス。それらによる眠気などの副作用には注意
  • 根本的に治すなら減感作療法。注射がどうにもつらいという人は、新たな治療法の実用化まで待つという方法も?

著者プロフィール

ドクトル・ピノコ

女医。医大生時代には体育会に属しつつ、某社キャンペーンガールや大手塾講師など数々のバイトもこなし、現在、酒と体力だけには自信アリの超体育会系の外科医として某病院にて働く。趣味は、酒、男、足裏リフレクソロジー。現在、「週刊ビジスタニュース」に月イチでコラムを連載中。ぼちぼち書き仕事も募集してます。


この記事は、ITmedia Biz.IDに掲載された連載「ドクトル・ピノコのプチ元気の薬」を再編集して掲載しているものです


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