―― アルバイトを含め、すでに働いている人にお聞きします。実際に働いてみて、それまで趣味でWebサイト作りやプログラミングをしていたのと、何か変わった点はありますか?
赤松 仕事をするようになって、趣味の延長ではないなと感じました。もともとプログラミングが大好きな人だと、仕事になって、顧客との折衝を面倒に思っちゃう人もいるんじゃないかな。好きなことを仕事にしては駄目だなと思った時期もあります。好きなことを好きなようにやれないことがあるので。
大礒 アルバイトを始めてからAdobe Flexというものに触れたんですが、やってみるとすごく面白くて、家でもコードを書いたり、いろいろ調べたりしていたら、あっという間に仕事で使えるレベルになりました。この業界は年齢は関係ない、やる気さえあればできる、と感じますね。仕事だからと割り切っている人は、仕事以外ではプログラミングをやらないですよね。そこで差が出るように思います。また、趣味だとほかの人に使ってもらえるレベルまで仕上げるのは大変だけど、仕事だとチームがあって、デザインなど自分が苦手な部分が逆に得意な人もいるので、仕事もいいなあと思います。
赤松 僕も仕事は好きですよ(笑)。趣味と仕事で、楽しさのベクトルが違うと思います。趣味は1人が多いけど、仕事だとほかの人とかかわることになりますよね。チーム開発とか、楽しいです。
佐孝 目指すところが違うと思う。趣味は「こう作りたい」という方向に進むんだけど、仕事は「こうなるべき」を優先する。両方、楽しい。
―― 楽しみ方が違う、というイメージですね。
佐孝 でも、実際に仕事をするようになって、「こんなに好き勝手にできるんだ」って驚きました。これ作りたいから作っちゃいました、が通る会社なので。iPhoneアプリは仕事ですが、もともとは仕事ではなかった。「作っちゃいました」って持っていったら、ディレクターが「じゃあそれリリースしましょう」って(笑)。そういうことができる会社もあるんだ、というのが新鮮でした。
赤松 うちは受託開発だから、ちょっと違うね。自社サービスかどうかで違うかも。
川上 みんながそうかは分からないけど、(ITに触れるのは)ライフスタイル。プログラムを書いたり、インターネットでコミュニケーションを取るのがライフスタイルなんです。だから、大学にいても、家にいても、会社にいても、ずっと同じ流れの中にいる感じ。
―― 「いまは会社の自分」というような切り分けが存在しない?
川上 切り分けない、っていうと怒られそうですけど(笑)。その場でその仕事をしているだけで、それが会社の仕事なのか大学の仕事なのかは関係ない。まだアルバイトだからというのもありますが。家に帰っても、サーバにトラブルがあれば作業するし。
佐孝 「仕事しているときに何しているの?」って聞かれると、日中はコードを書いて、休憩時間はインターネットして、家に帰ったらゲーム。「じゃあ休みの日は?」って聞かれると、コード書いてインターネットしてゲームして……結局、変わらない(笑)。確かにライフスタイルですね。
大礒 RSSリーダーやiGoogleは、会社でも家でも同じアカウントで入れば、家とか会社とか関係なく使えるし、使うソフトもやってることも、ほとんど一緒かな。
廣瀬 僕は家では、コード(会社で作っているもの)を書かないです。週末はSkypeもメッセンジャーも立ち上げない。なるべくインターネットから離れています。インフラ周りの仕事なので、会社に行かないと作業環境がないというのもありますけど。時々、何かを作りたいときは家にこもって作業してますが……。
―― 上の世代とのギャップを感じることはありますか?
川上 「Twitterの魅力が分からない」と先輩によくいわれます。
佐孝 僕は会社では世代間のギャップはあまり感じないですね。社長が僕のブックマークを毎日チェックしていて驚かされるような会社ですし(笑)。
大礒 別の会社の社長の方とお話をしていたときの話なのですが、その方は「ITはビジネスの道具」という考え方を持っておられたんです。価値観の問題なので、それはそれでいいんですけど、僕らにとってITはもはや「生活の一部」なんです。たまたまそれが仕事になっちゃった、というだけで。
廣瀬 僕は経験が浅いので、会社の人の話している内容が分からないことがあります(笑)。
―― 今後、こんなことがしたい、こんなふうになりたいなどの夢を教えてください。
橋本 僕はまだIT業界で働いた経験がないのですが、バリバリのエンジニアというより、自分でものを作るだけではなく、どうやって売るかも自分で考えられるようになりたいですね。就職先として、それができる会社を選んだつもりです。
大礒 終身雇用が当たり前ではなくなってきて、カンファレンスやユーザーグループ、ブログなど、いろんなところでいろんな人が出会い、つながっているので、会社という枠にとらわれずにプロジェクトができるようになるといいなと思います。例えば、Wiiの『大乱闘スマッシュブラザーズX』というゲームは「ソラ」という2人だけの会社が中心になって、そのゲームを作るためだけに100人もの技術者が集まったそうです。そして、ゲームが完成したら解散。1つのプロジェクトのためだけにチームが作られる、というのがこれからできてくるかもしれないと思っています。会社がメンバーを決めるのではなく、自らの意思で集まる。いつも同じメンバー、同じ開発手法ではなく、さまざまな経験や価値観を持った人と出会い、絶えず刺激を受けながら常に新鮮な気持ちで仕事ができる、そうなると面白いですね。そして、いつかどこかでみんなと再会できればいいな。
佐孝 好きなことをやっているだけで、そのままいければいいなあと思っています。Web上でコミュニケーションを取るためのサービスを作るのがいまの仕事なのですが、ブログだと孤独過ぎるし、SNSだと逆に密度が高過ぎて窮屈だと思っています。その間の、ちょうどいいサービスを模索しています。なかなか見つからないんですけどね。でも、Twitterやはてなグループというサービスがきっかけでみんなと出会えて、コミュニティができた。ここ(ハチロク世代)に入れたのはすごく良かったと思っています。僕もこういう良い出会いを生み出せるようなサービスを作りたいですね。
赤松 僕は受託開発を地道にやっていきたいなと思っています。顧客の出した要件と、実際にでき上がるもののギャップがまだまだ存在する。顧客と作り手がうまくやっていけるような取り組み方を、開発側から考えられるといいなと思います。
廣瀬 インターネットの世界をまったく知らない状態から入って1年半くらいなのですが、いろいろ分かってきたので、これからもがむしゃらに頑張って、みんなの役に立つことをやっていきたいです。
川上 自分にはあまり価値がないと思っているので、こういう(ハチロク世代のメンバーのような)価値のある、優秀な人たちを集めて、価値を高めていくお手伝いができればいいなと思います(笑)。
1週間、毎日更新でお送りした特集「『ハチロク世代』がやってくる」はいかがだっただろうか。
世代論なんてクダラナイ、と感じる人もいるだろう。新卒採用の余裕なんてない、という中小企業も少なくないはずだ。
だが、確実にいえることがある。時代は変わったのだ。ハードウェアの発展の歴史があり、ソフトウェアの発展の歴史があった。いま、エンジニアとして働いている人の多くは、そうした歴史の中で生まれ育ち、仕事をしてきたのだろう。これからの新人たちは、Webの発展の歴史の中で生まれ育った世代だ。彼らは「新しいIT業界」を担う主人公なのである。
新人を育て、業界を発展させる。いま、あなたが新人の教育担当者なのであれば、あなたもその使命を担っているのだ。
この特集が、ほんの少しでもあなたの役に立ったのであれば幸いである。
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