アマゾンの子会社でクラウドサービスを提供するAmazon Web Services(AWS)は5月20日、同社のクラウド型ストレージサービスで大規模なデータをダウンロード/アップロードするのに、USBの外付けハードディスクなど物理デバイスが使える新サービス「AWS Import/Export」を発表した。限定ベータ版として米国内のユーザーからのアップロード(Import)を受け付け、今後数カ月でダウンロード(Export)サービスも提供する。
ストレージサービス「Amazon S3」を使えば、大規模なデータの保存や利用ができるが、インターネット経由でこうしたデータを出し入れするのは帯域コストや所要時間から現実的でない。AWSは具体的な数値として、例えば1MbpsのT1回線で1TBのデータを転送するには80日かかると指摘。こうしたケースでは、ハードディスクを直接郵送で送る方が短時間、低コストでデータを移動できる。同社は2TB以上のデータならAWS Import/Exportを考慮したほうが合理的だとしている。
回線速度 | 所要日数 | 利用を考慮すべきデータ量 |
---|---|---|
T1(1.544Mbps) | 82日 | 100GB以上 |
10Mbps | 13日 | 600GB以上 |
T3(44.736Mbps) | 3日 | 2TB以上 |
100Mbps | 1〜2日 | 5TB以上 |
1000Mbps | 1日以内 | 60TB以上 |
回線速度と1TBのデータ転送にかかる時間の関係(出典:AWS)
利用料金はデバイス1台当たり80ドルの手数料がかかるほか、データのロード時間1時間当たり2.49ドルかかる。このほか通常のAmazon S3の利用料がかかる。デバイスはアマゾン到着後にデータセンターに移送され、翌日にはデータ転送が行われるという。同社データセンター間の接続は高速で、500Mbpsでデータをロードできるとしている。ほとんどの場合、ボトルネックはデバイス側にあり、ロードするデータの平均的なオブジェクトサイズにも依存するという。このため、読み出し速度の速いデバイスを選んだほうが、AWS Import/Exportの利用料は安くなるという。
想定している利用シーンは、クラウドへのデータ移行時、オフサイトバックアップ、災害復旧など緊急時。このほか、定期的に顧客とデータをストレージデバイスでやり取りしているような場合に役立つとしている。
利用可能なデバイスは、USB2.0対応の標準的な米国の電源プラグで対応可能なもの。重量は50ポンド以下(22.68kg)。インターフェイスにはeSATAを推奨している。利用可能なファイルシステムはNTFS/ext2/ext3/FAT32。デバイスの種類については特に指定はないが、TB級のハードディスクの利用を推奨している。デバイス送付時には、YAMLファイルでAmazon S3上のデータ領域を指定するほか、電子署名などを添付する。処理後のデバイスは利用者に返送される。
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