「Java News.jp(Javaに関する最新ニュース)」の安藤幸央氏が、CoolなプログラミングのためのノウハウやTIPS、筆者の経験などを「Rundown」(駆け足の要点説明)でお届けします(編集部)
インターネットを利用するための料金は、十数年前と比べると大変安価になりました。無線LANのホットスポットなど、限りなく「無料」に近い形で利用できる場合も多くなってきています。
そして日々、皆さんが1人の利用者として使うWebサービスには、どんなものがあるでしょうか? ほとんどのサービスは無料、もしくは広告が入ることによって無料で使えるものが多いでしょう。その一方、企業向けの比較的高価なWebサービスを専門的に利用している人もいるでしょう。
またWebサービスを提供する側としては、「無料で提供されるのが当たり前のようになっているWebサービスを、いかにユーザーに嫌われないように“対価”をいただいて収益化するか」という課題に頭を悩ましているところでしょう。最近も以下のような事例がありました。
「タダより高いものはない」という言葉があるように、Webサービスが無料で使えることには、どのような利点や欠点があるのでしょうか?
本稿では、Webサービスの提供者側から考える無料であることの意味、有料であることの意味を考えてみましょう。そして、サービスのあり方や、またその際に気を付ける項目などを紹介します。
Ruby on Railsの作者として著名なDavid Heinemeier Hansson氏の所属する37 signalsでも無料アプリケーションの提供に関しての提言がなされています。
そこでは、サービスの提供を安易に無料で始めないこと、そして小規模でもよいので、有料で使っていただけるお客さまに対して有益なサービスを提供し続けることがうたわれています。
サービスを無料で提供する、または有料で提供することに対して、さまざまな戦略と考えがあります。ここではいくつかの観点とポイントを紹介します。
無料といえども、サービスの継続性(サスティナビリティ)を考えるのが重要です。また、ユーザーもいつなくなるか分からないサービスよりも、永続的に続くであろうサービスを使いたがります。一方、「無料でサービスを提供しているのだから、いつ止めてもいいだろう」という考え方もあります。
ただし、急にサービスがなくなる事例が繰り返されれば、利用者は、ある会社のほかのサービスさえも利用し始めることが心配になることでしょう。永久に続くサービスはないのかもしれませんが、利用者に安心感を与えるのも大きな使命です。
さまざまなWebサービスにとって「使える」ことだけではなく、大切な事柄がいくつもあります。サービスのデータそのものや、検索エンジンで見付け出すことのできるリンクのつながりや読者、コミュニティなど、すべてがサービスの資産であることを十分考慮しましょう。
利用者にとってつらい事例の1つとして例えば、Windows 7 RC版の自動シャットダウン機能が話題になりました。
これは、Windows 7 RC版を利用している場合、2010年3月1日以降、2時間おきに自動シャットダウンするという仕組みです。もちろん、これは正式版の移行を勧めるための仕組みではありますが、自動シャットダウンのことを知らない、または気が付かない利用者にとってはつらい出来事かもしれません。
継続性(サスティナビリティ)の話題と関連して、ライセンスキーが必要なアプリケーションの中には、「エマージェンシー(緊急)ライセンス」を発行してくれるサービスもあります。
例えば、アプリケーションを購入して使っているマシンが急に壊れてしまったが、納期が近いため、どうしてもほかのPCで使い続けたいときや、間違って登録ライセンスを消してしまったが、正式ライセンスが再発行されるまでの間、短期間でもいいので使い続けたい場合に便利な仕組みです。
最近では、動画共有サイト「eyeVio」の運営会社が変更されたり、動画共有サイト「Ask Video」や、前述で挙げたようにアバターSNSサービスの「Cafesta」などがサービスを停止するアナウンスをしたりしています。同様のサービスが乱立する中での競争は激しく、未来永劫に続くサービスはないと思います。それであっても、“美しい幕引き”もサービスとしては重要な要素なのかもしれません。
経済の仕組みを考えると、無料でサービスが提供されている場合は、お金ではない、ほかの何らかの“価値”や“情報”が生み出されているはずです。安易に「無料」を売りにしている、うさんくさいサービスではなく、価値を持った無料サービスであること、または「有料」でありながらも、その支払いの分の価値を十分に持ったサービスであれば、利用者は喜んで“対価”を支払うはずです。
この記事を読んだ読者の方々の中には、小規模なものから大規模なものまで、実際に無料、または有料でWebサービスを提供されている方もいらっしゃることでしょう。現場の声として、成功例や、うまくいかない事例など、お知らせいただければ、ありがたく思います。
次回は2009年7月初めごろに公開の予定です。内容は未定ですが、読者の皆さんの興味を引き、役立つ記事にする予定です。何か取り上げてほしい内容などリクエストがありましたら、編集部や@ITの掲示板までお知らせください。次回もどうぞよろしく。
安藤幸央(あんどう ゆきお)
1970年北海道生まれ。現在、株式会社エクサ マルチメディアソリューションセンター所属。フォトリアリスティック3次元コンピュータグラフィックス、リアルタイムグラフィックスやネットワークを利用した各種開発業務に携わる。コンピュータ自動彩色システムや3次元イメージ検索システム大規模データ可視化システム、リアルタイムCG投影システム、建築業界、エンターテインメント向け3次元 CG ソフトの開発、インターネットベースのコンピュータグラフィックスシステムなどを手掛ける。また、Java、Web3D、OpenGL、3DCG の情報源となるWebページをまとめている。
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OpenGL_Japan (Member)、SIGGRAPH TOKYO (Vice Chairman)
主な著書
「VRML 60分ガイド」(監訳、ソフトバンク)
「これがJava だ! インターネットの新たな主役」(共著、日本経済新聞社)
「The Java3D API仕様」(監修、アスキー)
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