IT業界を目指す学生にとって、IT企業の人事担当者は気になる存在だ。果たして、IT企業はどんな人材を求めているのか。新卒採用のキーパーソンに学生記者が迫る。
IT企業の新卒採用にかかわるキーパーソンへのインタビューを行う連載「IT企業新卒採用の裏側」。第1回の日本HPに続き、第2回は日本IBMの人事 新卒採用マネジャー 杉内智子氏に話を聞いた。
IT企業の中では高い認知度を誇るIBM。新卒採用においてはどのような狙いをもっているのだろうか。
―― 日本IBMでは、新卒採用でどのような職種を採用するのでしょうか。
杉内 営業系、ITエンジニア系、開発系、研究系、スタッフ系など、いくつかの職種別に採用を行っています。ITエンジニア系は、お客さまの新しいビジネスや経営の効率化など、ありとあらゆる課題解決を実現する仕事です。ほかにも、IBMのソフトウェア製品やミドルウェア製品、ハードウェア製品を開発する開発系、新しい技術研究を行う研究系などがあります。
―― 日本IBMが職種ごとに分けて採用するのはなぜですか?
杉内 学生さんには「自分がどのような仕事をしたいのか」「将来にわたって社会とどのように関わっていきたいか」といった意志を持っていただき、自分のキャリア実現とリンクさせていただきたいと考えるからです。最初は職種の違いについて悩むかもしれませんが、入社前から職種を考えることで、「自分はこういう仕事をこれからやっていく」という将来のビジョンを描くことができます。
―― 開発系についてお伺いします。製品の開発は日本でも行っているのでしょうか?
杉内 IBMは基礎研究所を全世界に8カ所持っていますが、そのうちの1つである東京基礎研究所が大和事業所にあります。大和事業所にはそのほかに、ソフトウェア開発研究所とハードウェア開発研究所もあり、日本の研究開発拠点として位置づけられています。研究開発は、ほかの国の研究員や開発者とグローバルに連携して先端技術の研究や製品の開発を行うので、技術力や専門知識に加え、英語によるコミュニケーション能力も必要です。日本単独で開発を行っている企業と比べて、それだけダイナミックな仕事ができると考えていいでしょう。
―― それぞれ、新卒採用時の人数比率はどのくらいなのでしょうか。
杉内 年によっても違いますが、ITエンジニアが大多数です。技術系職種の中で、ITエンジニアが約7割、それ以外が3割くらいです。
大きく分ければどれも技術系職種ですが、それぞれの仕事はまったく違うものですし、それぞれに専門性が求められます。そのため、就職活動時にある程度、自分がどの道に進むのかを決めてもらいたいのです。学生の皆さんには、就職活動時に会社研究だけでなく、将来、ご自身が何を生業(なりわい)にして社会と向き合っていきたいのか、考えてみることをお勧めします。そのうえで成果を出して、また新しいチャレンジをしたくなれば、社内異動を利用し、次のステップに進んでいただきたいと考えています。
―― IBMの仕事とは、どのようなものなのでしょうか。
杉内 現在の日本IBMの売り上げのうち、約7割が「サービスビジネス」と呼ばれるもので、主にお客さまのシステム構築と運用・保守、コンサルティングなどがこれに当たります。残りの3割がソフトウェア製品とハードウェア製品ですね。
ただ、技術の進展に伴って、お客様のご要望はどんどん変わっていきます。そのため、日本IBMには、最先端の技術を駆使したシステムから、社会基盤を支える堅牢なメインフレームのIBM System zによるシステム構築まで、幅広い仕事があります。
―― ITエンジニアには具体的にはどのようなキャリアパスがあるのでしょうか? また、開発職との違いはどのようなところなのでしょうか。
杉内 ITエンジニア系は、ITの全体設計を行うITアーキテクトや、お客さまからオーダーいただいたプロジェクト案件を統括するプロジェクトマネジャ−、プロジェクトの中での個々の開発に責任を持つITスペシャリストなど、多彩なキャリアパスが存在します。よく、学生さんには「プログラミングの仕事ですか?」と聞かれるのですが、どちらかといえば、プロジェクト単位で仕事をする中で、お客さまのご要望を実現するためのリード役というのが適切です。もちろん技術的にプログラムの知識は必要ですが、あくまで仕事をするうえで必要な要素の1つです。
開発系は、IBMの「製品」を作るのが主な仕事です。ITエンジニア系の仕事が個々のお客さまに対応した仕組み作りで、開発系がより汎用性のある製品を作る、というイメージです。
―― 学生にとって「IBMで働く魅力」とは、ひとことでいうとなんでしょうか。
杉内 「一歩先、二歩先の社会を作れる」ということだと思います。IBMは、地球がより賢く進化していくことを示す「A Smarter Planet」という新たなビジョンを掲げました。世の中のあらゆるものがデジタル機能を備えていくことで、ビジネスや地球環境、エネルギー、医療、交通といった社会にかかわる様々な課題を解決していこうというものです。ITは新しい社会を作っていく重要なインフラです。IBMは「未来の社会のあり方」を考え、最先端の技術で一歩先、二歩先の社会をどう作っていくかを日々議論し、お客さまとともに、社会を変革していくことのできる会社です。
―― 具体的な事例にはどんなものがありますか?
杉内 例えば、スウェーデンの首都ストックホルムの交通渋滞を解消させるためのプロジェクトがあります。ストックホルムは状況によって課金額が変動する「渋滞税(道路課金システム)」の導入を決めました。これは、交通が集中する時間帯は高い税金がかかるようにすることで、渋滞を改善しようという取り組みです。道路にカメラを設置し、そこを通る車に自動的に課金し、渋滞状況に合わせて金額を変動させるようなシステムをIBMが構築しました。これによって「車の流れ」が大きく変わり、渋滞が解消され、交通量の低減により二酸化炭素の排出量を減らすことができました。
―― 規模の大きな仕事をするチャンスがある、ということでしょうか。
杉内 そうですね。IBMはお客さまや自治体と協力して、社会に価値あるイノベーションを生み出し、世の中の仕組みを変えていける会社だと自負しています。そのベースには、各国の基礎研究所で生み出される世界最先端の技術を持っているという強みがあります。
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