IBM人事「学生は受け身にならず積極的に考え抜け」IT企業 新卒採用の裏側(2)(2/2 ページ)

» 2009年08月14日 00時00分 公開
[田中悠満, 岑康貴法政大学/@IT自分戦略研究所]
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世の中と主体的にかかわる、という観点を大切に

―― どのような学生を採用したいと考えていますか?

学生記者の質問に答える杉内氏 学生記者の質問に答える杉内氏

杉内 「想い(パッション)がある人」と「新しいことにチャレンジしたい人」の2つがあります。前者の「想い」とは、「この道でプロになるんだ!」、あるいは「この技術でお客さまに貢献したい!」という熱意のことです。また、IBMはどんどん変化していく企業なので、変化を好意的にとらえ、新しいことにチャレンジしていける人材を求めています。

 逆に、変化が嫌な人は向かないでしょうね。IT業界もIBMという企業も、変化が非常に激しいですし、ビジネスモデルやビジネスプロセスがどんどん変わっていきます。そうした変化を楽しめる人でなければつらいと思います。

―― 技術的な知識やスキルに関してはどうでしょうか。

杉内 特に研究系や開発系に関しては、学生時代の専門性が問われますし、ITエンジニア系についても、情報系のことを勉強してきている方はアドバンテージがあると思います。ただ、学生時代の専攻と異なった仕事に就いても、大きな成果を出して、大きな仕事に携わっている方はたくさんいますから、こだわることなく、積極的にチャレンジしてほしいですね。

―― 学生時代に「これはやっておいてほしい」ということは?

杉内 「受け身にならず、積極的に考え抜く」ということです。世の中のさまざまなことに対して、「これはどうやったらもっとうまくいくだろうか?」とか、「自分のスキルがどう生かせるだろうか?」といったことを常に考えてほしいですね。自分が中心になって何かをしていくという観点を持って、世の中と主体的にかかわっていくことが大切だと思います。それによって、世の中の広がりを感じ取ることができると思います。

 企業のインターンシップに参加するのもいいと思います。日本IBMでも夏休みに3週間のサマーインターンを行っています。最初に必要最低限の研修を行ってから、実際に仕事に加ってもらっています。現場の先輩がアドバイザーとなり、その人と働くというという形ですね。学生さんがIT業界の仕事について学ぶスタートポイントになって、IT業界の未来を担うエンジニアを生み出していけるといいなあと考えています。

 インターンシップは企業や実際の仕事を知るのに最適ですし、考え方やものの伝え方といった、社会人に必要となるスキルを磨く良い機会だと思います。新卒採用の専攻には直接関係しませんが、そこで学んだことは専攻でも生かせると思います。

変化を楽しめる人でなければ合わない

―― 採用では、学生のどのようなところを重視していますか?

杉内 開発職は特殊なので少し異なりますが、基本的には職種適性検査、作文(エントリーシート)、面接、グループワークを行っています。

―― エントリーシートや面接では、どのようなところを見ているのでしょうか。

杉内 聞かれている題に対してちゃんと答えているか、ということです。よくいるのが、あらかじめ決めてある「自分のアピール文章」をそのまま書いてしまう人ですね。何を聞かれていて、何を答えるべきなのかをちゃんと考えてください。

 面接は現場の責任者が行います。将来、学生さんの上司になるかもしれない人たちですね。面接ではIBMのカルチャーに合うか、入社して活躍していく可能性があるかどうかというところを見ています。また、外資系企業なので、英語に関してはTOEICのスコアなども参考程度には見ています。さらに、ITエンジニア系職種であれば「IT業界やIBMのことをきちんと理解できているか」を確認します。開発職であれば、これまで学んできたプログラミング言語やアーキテクチャについてもお聞きします。

―― IBMのカルチャーとは、先ほどいわれた「変化していく」ということでしょうか。

杉内 その通りです。社会も業界もIBM自体もどんどん変わっていくので、その中で自分も変わっていけて、その変化を楽しめる人でなければ合わないと思います。

―― ちなみに、大学や学部は見ているのでしょうか。

杉内 大学や学部による見極めはありません。もっとも、結果として情報系学部の方が多くなる傾向にはあります。

人数は減らしているが、採りたい学生像は変わらない

―― 新卒で入社後はどのようなステップを踏むのでしょうか。

杉内 人によって全然違いますね。最初に全体研修を行うのですが、これは「IBMer」になるために必要な知識を教えるもので、ほんの数週間です。その後はもう各部署に入ってもらうのですが、長く研修をするところもあれば、3カ月くらい集中研修を行って、どんどん現場に入っていく部署もあります。

 もともとスキルのある人は、どんどん仕事を任せていきます。逆に育成が必要な人は、最初は先輩のサポートなどの仕事が多い。ただ、スキルアップに貪欲で、吸収の早い人は仕事を任されるようになります。本人の頑張り次第ですね。

―― 現在、経済状況があまり良くありませんが、新卒採用に影響はありますか?

杉内 採用人数は多少、減らしていますが、採るべき学生像自体は変えていません。「時代がこうだから、こういうスキルを持つ人を」という採り方しているわけではありません。そもそも、新卒採用では「こういうスキルを持っている人を採りたい」というのが目的ではありません。「想いがある人」と「新しいことにチャレンジしたい人」を求めています。

 いまは大きな時代の転換期で、ITの世界が大きく変わる節目でもあります。この時代の中で、企業や業界がどのように変わっていくか、その動きを見極め、皆さんが今まで学ばれてきた知識や熱意をそこにうまく結びつけてください。

取材を終えて

 取材というもの自体が初めてだったので、慣れないことが多かったが、いざ取材してみると、IBMという会社について詳しく知ることができ、非常に楽しかった。

 この連載では引き続き、さまざまなIT企業の人事担当に取材をしていく予定だ。自分も取材をしたいという学生の方は、jibun@atmarkit.co.jpまで連絡してほしい。また、「この企業の人事に取材してほしい」「もっとこんなことを聞いてほしい」というご要望もお待ちしている。

【学生記者募集】

IT業界就職ラボでは記事の企画・取材・執筆を行う学生記者を募集しています。大学生、大学院生、高等専門学校生で、IT業界に興味のある方が応募条件となります。執筆者には謝礼をお支払いいたします。ご興味のある方はjibun@atmarkit.co.jp宛に「学生記者募集」という件名でご連絡ください。編集部にて面談を行い、可否を判断いたします。


筆者紹介

田中悠満(たなかゆうま)

法政大学情報科学部コンピュータ科学科1年在学。小学校高学年のころからインターネットに興味を持ち、Webページを作り始めた。高校時代はパソコンの分解に興味を持ち、中古のパソコンを買っては改造や修理をしていた。今年の夏休みは大学の授業を生かしサーバの構築に尽力している。



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