SEのための認知療法――認知の癖を知ってうつ予防心の健康を保つために(14)(1/2 ページ)

ITエンジニアの周りにはストレスがいっぱい。そんな環境から心身を守るためのヒントを、IT業界出身のカウンセラーが分かりやすく伝えます。

» 2009年09月24日 00時00分 公開
[石川賀奈美ピースマインド]

 ある出来事があっても、その出来事の受け取り方は、人によって異なります。「出来事の受け取り方、つまり“認知”の違いが感情や気分を左右する」という考え方を今回は解説します。

“迷惑を掛けて申し訳ない”

 Aさんは、37歳のプロジェクトマネージャです。プロジェクトのめどが立ち始めた時期に「うつ」と診断されて、3カ月休職しました。休養と服薬で体調が戻り出したころ、復職準備としてお会いすることになりました。

 Aさんがまず口にしたのは「みんなに迷惑を掛けて申し訳ない……」という言葉でした。

 休職直前のころは、仕事がうまくいってない、自分はプロジェクトマネージャとして駄目だ……とばかり考えて、毎日がつらかったそうです。休職してからも、しばらくは「自分なんていない方がいいのだ」という考えがすぐに浮かんできてしまっていたようです。

 うつの症状が出始めたきっかけは、プロジェクトのつまずきでした。メンバーの1人が体調不良でプロジェクトから抜けることになり、スケジュールがかなり厳しくなってしまったのです。仕事の割り振りをやり直しましたが、増員は無理な状況でした。負担の増加にメンバーからは不満の声も出てきました。

 Aさんは、プロジェクトが頓挫してしまうのではないかと不安になり、毎晩眠れなくなってしまったそうです。

すべてが絶望的に思えた

 「なんだかすべてが絶望的になってしまって……。このままでは、良いことは何もないような気がしました」。不安と絶望に押しつぶされそうだったAさんの気持ちが、ひしひしと伝わってきました。

 Aさんは、まじめで責任感が強く、部下の面倒見もよいマネージャと評判でした。だからこそ、プロジェクトがうまくいかないかもしれないという不安が強くなってしまったのでしょう。しかし、このような困難をどう乗り越えればよいのでしょうか。

認知の癖を知ろう

 確かにマネージャにとって、メンバーが抜けてしまうこと、納期が守れないかもしれないことは大変な問題です。そのうえ、Aさんは帰宅が遅い日が続いていたため、疲労がたまっていました。

 しかし、こうした条件下でも、必ずうつ状態になるとは限りません。

外部条件に、Aさんがもともと持っていた、認知(物事の受け取り方)の癖が重なって、うつ症状が出てきたのではないかと考えられるのです。

  では、認知の癖にはどのようなものがあるのでしょうか。その前に、まずは下記のチェックテストで、自分の認知の癖の傾向を調べてみてください。

認知チェックテスト

 あなたの日常を振り返り、1から10までの項目について、下記の点数表を参照して点数をつけてください(テスト作成:ピースマインド)。

「まったく当てはまらない=0点」

「あまり当てはまらない=1点」

「多少当てはまる=2点」

「かなり当てはまる=3点」

次に、各項目の合計点を計算してください。

1.Yes/Noや、物事の勝ち負けをはっきりさせたい方だ  
2.「普通は」「一般的には」「世間は」などの言葉をよく使う 
3.相手の気持ちを想像して、疲れてしまうことがある 
4.レストランで注文を終えてから、それで良かったかどうかと考えることがある
5.人から褒められると、素直に受け取れない方だ
6.周りに良くないことがあると、自分が悪いような気持ちになってしまう 
7.初めて会った人でも、すぐに好き嫌いの印象がハッキリする方だ
8.良いことが起こると、その分後で嫌なことが起こると思う
9.昔のことを思い浮かべると、楽しいことより失敗したことを思い出す
10.「〜すべき」「〜でなければ」といういい方をよくする 
合計点  点
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