「iPhoneアプリの次はAndroidだ!」と盛り上がっている開発者も多いと思う。今回は、大手プロバイダのNECビッグローブが始めたAndroidアプリ販売サイト「andronavi」を通して、Androidビジネスの可能性に迫ってみた。
「目指しているのは、App Storeのように個人や弱小の開発者でもアプリを販売できるオープンな仕組みを作ること」
筆者が一番聞きたかった言葉がいきなり出てきた。ご存じのようにこのコラムでは、従来よりインディの開発者を応援してきた。だから、ビッグローブがAndroid向けのアプリマーケット「andronavi」を開始するというニュースに接したとき、真っ先に気になったのは、個人や弱小の開発者でもアプリを登録することができるのか、という部分だった。
NECビッグローブパーソナル事業部マネージャーの徳間康晋氏は、そのような筆者の思いをあたかも察したかのように、こちらが期待していた回答をくれたのだ。
ただ、ただちにそれを実現するのは難しいことも付け加えた。というのは、「システム対応、受入体制などを整備しながら進めていく必要があり、少し時間が必要」だからという。
つまり、NECビッグローブのようなITの先端を走る企業であっても、社内の各種制度自体は旧態依然としており、App Storeのように個人がWebから開発者登録を行い、1対1の取引関係を築けるような制度や環境が整っていないということなのだろう。なんだかなあ、とは思う。だが、それはNECビッグローブだけが悪いというわけではなく、米国主導で疾走するITの変革についていけない日本社会全体の構造的な問題だということは、インディである筆者自身、日ごろから痛切に感じていることである。
そのため、andronavi開始直後は「いくつかの開発企業や開発者の方々と、納得の得られるアプリ登録の方法を相談しながら、ルール自体を作っていくつもりで進めたい」(徳間氏)そうだ。どうやらandronavi開始直後は、App Store並みのオープン度までは期待できなさそうで、インディが参加できるような仕組みが実現するまでには段階的なプロセスを踏んでいくことになるようだ。
とはいえ、いつごろからそれが可能になるのか、ザックリとした見通しを知りたい。
徳間氏は、「10月には次の段階に移行する予定」と教えてくれた。ただ、「次の段階」が、即、App Storeのような個人でも参加できる「オープン度」を確保することを意味するのかどうかについては言葉を濁していた。とはいえ、Android向けのアプリマーケットの運営を執行する責任者が「App Store的なオープン」を明言したわけだから、それは大いに期待して待ちたい。
andronaviのオープン度とともに気になるのが、そこでの販売支援体制だ。というのは、現在のApp Storeの状況を見れば、「胴元」が何らかの販売支援を行うことの重要性を感じずにはいられないからだ。
App Storeは、確かに個人開発者にも大きく門戸を開いている。だが、それはアプリの登録・販売・課金という部分までだ。ある意味最も大切な販売支援に関しては、Appleのサポートは皆無に等しい。だから、約14万タイトルが登録されている現状では、優れたアプリであっても埋もれて目立たないという不幸が多々起きている。
どんなに優れたアプリを作っても、それを欲している、あるいは欲するであろう人の知り得る状況や仕組みがなければ、優れたアプリも埋もれたままだ。そのままでは開発者のモチベーションが下がり、引いてはマーケット全体の地盤沈下をもたらすのではないかと心配になる。
現在、そうしたプロモーションの役割は、アプリのレビューサイトなどが担っているかもしれない。だが、少なくとも巨大市場である米国では、アプリのレビューサイトが大きな影響力を持っているように思えない。
だったら、その仕組みをマーケットの胴元であるApple自身が作ってくれるのが最良の道だと思うのだ。彼らはユーザーの個人情報を持っているだけに、確度の高い支援策を打ち出せるはずだ。
誤解してほしくないのは、Appleに対し、開発者に購入者の個人情報を公開しろといっているのではない。そんなことが無理なのは百も承知だ。それを基にした販売支援のプラットフォームがあってしかるべきではないかという話だ。
今回のビッグローブ版のAndroidマーケットも同様で、胴元として何らかの支援策を打ち出すことを大いに期待する。本家のAndroid Marketが、一種の「アプリ垂れ流し状態」であるだけに、インディにも場を提供するAndroidアプリの胴元はこうあるべき! という存在感を示してほしいものだ。
それに関して徳間氏は「現在のandronaviでは選者によるリコメンドを行っているが、それでは数に限りがある。ユーザーレビューを有効に活用できる仕組みを作りたい」と明かす。具体的な機能などは教えてくれなかったが、「ユーザーの好みに合致したお勧めがプッシュで送られてくるようなイメージであり、レビューといったソーシャル系の良さを十二分に取り入れたマーケット専用アプリを考えている」(徳間氏)そうだ。
よく分からないが、iTunes、Amazonのサイト、メルマガが合体したようなイメージだろうか。そういえば、iTunes Storeでの音楽販売では「アーティスト・アラート」という仕組みが用意されている。以前に購入したアーティストが新譜を出すとメールで知らせてくれるものだ。App Storeのアプリの場合も、購入後の代金受領メールにほかのお勧めアプリがリコメンドされてはいるが、アーティスト・アラートに比べるとどこか控えめ。音楽のように「アラート」として積極的に知らせてくれる仕組みがあるだけでも状況は変わると思うのだが……。
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