ディスクを廃棄する際など、ディスクのデータを消去したければ、Windows OSの標準コマンド「diskpart」を使うとよい。USBメモリからWindowsを起動すれば、Windows PCのシステムドライブも丸ごと消去可能だ。
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対象:Windows 7/Windows 8.1/Windows 10/Windows Server 2008 R2/Windows Server 2012/Windows Server 2012 R2/Windows Server 2016/Windows Server 2019
リースしていたPCを返却する際や古くなったPCを廃棄する際、ディスクの中身を単純に削除しただけだと、ディスクのデータ復元ソフトウェアなどでデータが復元できるため、大事な顧客データなどが流出してしまう危険性がある。廃棄先がディスクの完全破壊(物理的な破壊)を約束している場合でも、廃棄前に念のため大事なデータは完全に消去しておいた方がよいだろう。
そこで、本Tech TIPSではディスク内のデータを消去する方法を紹介する。
ディスクのデータ消去法として、最も簡単なのはディスクフォーマットを行うことだろう。ただ、注意が必要なのは、「クイックフォーマット」ではディスクの一部だけを消去するだけであることだ。データ復元ソフトウェアで簡単に元のデータが復元できてしまう。また、フォーマットは、現在のボリュームだけしか消さないため、やはり気を付けないと別のボリュームのデータが残ったままになってしまう。廃棄ディスクのデータ消去には向かないと思った方がよい。
Tech TIPS「ディスクの内容を完全に消去する」では、Windows OSにマウントされているドライブに対して「cipher /w」コマンドを実行し、ディスクの空き領域部分の内容を消去する(バイトデータとして0x00を書き込む)方法を紹介した。
この方法は、例えばディスクを破棄する前に、重要な情報などを全て消去しておくといった際に便利だ。だがWindows OS上から作業を行うことから、未使用部分しかゼロ消去できない、NTFSボリュームにしか適用できないなど、幾つかの制限がある。
ディスクの内容を削除するコマンドとして、もう1つ、「diskpart.exe」というコマンドを使う方法もある。これはOSのパーティションを作成/管理するためのツールである(詳細はTech TIPS「Windowsのdiskpartコマンドでディスクのパーティションを操作する」参照のこと)。
GUI版の[ディスクの管理]ツールとは異なり、diskpartには「clean」というサブコマンドがある。これを使うと、ディスク先頭にある管理情報(ブートコード、パーティション情報、ディスク署名など)を削除することができるし、Windows OS以外で使っていたディスクでも初期化できる。また、ディスク全体を完全に消去することも可能である。
diskpartはWindows OSに標準装備のコマンドなので、Windows環境なら無料で利用できる。また、ディスク消去専用機のようにハードディスク/SSDをPCから取り出す手間も不要だ。さらに、Windows OSがインストールされたシステムドライブも、後述のコラムで説明している方法なら消去可能だ。Windows PCを1台ずつデータ消去するなら、手軽で便利な手段といえるだろう。
なお、万全を期すのであれば、こうしたデータ消去を行った後に、ドリルで穴を複数開けるなどして物理的に破壊すればよい。
PCで使われるディスクの先頭には、ディスクのサイズやタイプ(MBRタイプやGPTタイプなど)、パーティション情報、ブートコードなどのデータが記録されている。これらの情報をゼロデータで上書き消去することにより、以前の「使用の痕跡」やディスクの署名情報などを素早く消去できる。書籍で言えば、目次や索引などを削除することに相当する。消去後のディスクを自分で再利用するつもりなら、これだけでも十分だろう。
ディスクを破棄する場合は、ディスク全体にゼロデータなどを上書きして、以前のデータを全て削除するような消去が望ましい。diskpartコマンドではこのタイプの消去も行える。
なおTech TIPS「廃棄するハードディスクのデータを完全に消去する」では、消去専用のツールを使ったディスクの消去方法を紹介している。電子情報技術産業協会が提唱するディスク破棄時の留意事項などに従った消去作業を行いたければ、このようなツールを使うのが望ましい(電子情報技術産業協会のPDF「パソコンの廃棄・譲渡時におけるハードディスク上のデータ消去に関する留意事項」参照のこと)。diskpartのcleanコマンドでは、ゼロデータ書き込みを1回行うだけであるが、専用ツールではデータや書き込み方法を変えて何度か行い、より「完全に」消去できる。
diskpart.exeコマンドは、ディスクを管理するためのCUIツールである。管理者権限のあるアカウントでサインインしてコマンドプロンプトを開き、diskpartコマンドを実行する。UACが有効なWindows OSの場合は、管理者としてコマンドプロンプトを起動し、その中でdiskpartコマンドを実行する。
なお、このコマンドでディスクの内容を消去する場合、OSが起動したドライブを消去対象にはできないので、ターゲットとなるドライブを2台目以降のディスクとしてシステムに接続してから作業を行うこと(ドライブ文字を割り当てる必要はなく、システムに接続されていればよい)。内蔵ディスクだけでなく、USB接続のドライブや、リムーバブルストレージ(メモリ)デバイスに対しても消去作業は可能である。
通常のWindows OSを使っている場合は、C:を含むドライブ(システムの1台目のディスク)を消去することはできない。だがWindows OSのインストーラを使えば、任意のディスクの内容を消去できる。
まずTIPS「『メディア作成ツール』をダウンロードしてWindows 10インストール用のUSBメモリを作る」などの方法を使って、Windows OSインストール用のUSBメモリを作成する。OSのバージョンは何でもよいし、評価版でもよい。
そのUSBメモリ(もしくはインストール用DVD)でシステムを起動してセットアップ画面を表示させる。そして[Shift]+[F10]キーを押すとコマンドプロンプトの画面が開くはずである。そこで「diskpart」と入力してdiskpartコマンドを起動する。その後の操作は、以下で述べる手順と同じだ。
ディスクを素早く初期化するには、「clean」というコマンドをオプションなしで実行する。これを実行すると、ディスクの先頭と末尾の1MB分だけをゼロデータで消去する。Windows OS以外で利用していたディスクを使う場合や、一般的なパーティション情報などを持っていないディスクを素早く初期化したい場合などにも便利である。
作業の手順としては、「list disk 〜」で対象ディスクの番号を確認後、「select disk 〜」で対象ディスクを選択、「clean」でディスクの先頭にある情報を消去、となる。コマンド実行前の確認などは行われないので、ディスクを間違えないように十分注意して作業していただきたい。
ディスク内の全データを消去するには、単にcleanではなく、「clean all」というコマンドを利用する。実行すると、ディスクの全セクタに対してゼロデータが書き込まれる。ディスクやPCを破棄したり、他人に譲渡したりするような場合は、この方法で削除しておくとよい。1回しかデータを書き込まないので、「セキュリティ的に見て、完全な消去」というわけにはいかないが、ファイルやディスクの復活ツールなどで内容を復元されることはまずない。
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