現場の技術者が考える「1〜2年後の自分の姿」特集:岐路に立つIT技術者たち(4)(1/2 ページ)

現場で働く等身大のITエンジニアたちは、自分のキャリアについてどのように考えているのだろうか。エンジニアライフのコラムニストたちが考えた「1〜2年後のキャリアビジョン」を紹介する。

» 2010年05月13日 00時00分 公開

 特集第1回において、ITエンジニアを取り巻く環境の変化について解説した。環境の変化に応じて、ITエンジニアは自身のキャリアビジョンを改めて見直すべきときがきている。

 「キャリアビジョン」といっても、大きな環境の変化にさらされている現在、中長期的なビジョンを考えるのは難しい。だが、漫然と仕事をこなす日々を続けていても、環境の変化に飲まれてしまうだけである。せめて1年後、あるいは2年後の「自分の姿」を考えてみたい。10年後のキャリアビジョンを描くのは難しくても、1〜2年後の自分の姿であれば、想像できるかもしれない。

 @IT自分戦略研究所 編集部は、エンジニアライフのコラムニストに「1〜2年後の自分の姿」というテーマでコラムを執筆してもらった。現場で働く等身大のITエンジニアたちは、どんなキャリアビジョンを描いたのか。順番に紹介していこう。

相反する2つの夢

 『地方からの戯言』を執筆する、北海道で働くITエンジニア Ahf氏は、自分の進むべき道として2種類のビジョンを提示している。

 1つは「ITアーキテクト」という姿だ。Ahf氏はプログラミングからユーザーサポートまで、幅広い業務を行っている。幅広すぎるがゆえに、自分のことを「ITエンジニアらしくない働き方をしている」とまでいっている。確かに、エンジニアらしいエンジニアといえば、1つの道を追求する職人的なイメージがある。そういう意味でいえば、Ahf氏は「ITエンジニアらしくない」のかもしれない。

 だからこそ、Ahf氏はITアーキテクトという姿に興味を引かれているという。ITアーキテクトは、技術的な幅広い知見と、システムやプロジェクト全体を見渡す視点が求められるからだ。

 アクセンチュアの小野沢博文氏によれば、ITアーキテクトとは「顧客の要求を実現するためのアーキテクチャの構築責任者」であり、「ソリューションを提案する」「システム構造を決定する」「システム構造と実現方式を詳細化する」「実現方式を説明し合意を得る」「システム全体の整合性を確保する」「アーキテクト・チームをマネージする」などの役割を担う人物のことである(参考:ITアーキテクトの役割とスキルを考える!)。高い技術力を持ちながら、同時にシステム全体を見渡し、コントロールできる「指揮者」のような存在、それがITアーキテクトなのである。


 なお、一方でAhf氏は「1人で数人または数十人分の働きができるような『一騎当千』のエンジニアにもあこがれる」とも語っている。これはITアーキテクトとは正反対の姿である。Ahf氏自身、それを自覚しており、「幼稚で、夢のようなもの」といっている。だが、ビジョンはいくつあっても構わないのではないだろうか。果たしてAhf氏がどちらの道を進んでいくのか、楽しみである。

日本と海外の「いいとこ取り」で働きたい

 『海外でも通用するエンジニアになる』を執筆する鹿島和郎氏は、海外のIT企業で働いた経験を持つITエンジニアだ。鹿島氏は、「日本で働く」ことのメリットと「海外で働く」ことのメリットをそれぞれ提示し、双方の「いいとこ取り」ができるようなビジョンを描いている。

 まず、日本で働く場合について。鹿島氏にとって日本は「故郷」であり、家族や友人のサポートが期待できる。また、日本はほかの国に比べて非常に質の高いサービスが受けられる。この2点は、日本で働く場合の明確なメリットといえるだろう。

 一方、海外で働く場合はどうか。具体的にどの国なのかにもよるが、鹿島氏は「英語が話せるようになる」「日本国内だけでなく、もっと広いマーケットを対象に仕事ができる」などに加え、「好待遇」という点をメリットとして挙げている。詳細については今後解説するそうだが、鹿島氏は日本の労働環境について「有給を消化できないとかサービス残業とか、そういうのってやっぱりおかしいと思います」と語っている。

 日本で働く場合と海外で働く場合、どちらにもメリットがある。では、どのように「いいとこ取り」をするか。鹿島氏は「オフショア開発」に携わることで「いいとこ取り」ができるようになるのではないかと考え、詳細に計画を立てている。


 ここまで鹿島氏の考えを見ていると、少し都合のいい考えのように感じるかもしれない。だが、鹿島氏はこうした行動計画の先に、ある夢を描いている。それは「日本人ITエンジニアってすごいんだぜ」ということを証明する役に立ちたい、という夢だ。日本企業や日本人ITエンジニアがどんどん海外に進出していくことで、「日本人ITエンジニアってすごい」という評価が広まってほしい。その後押しができるような人間になる、というのが、鹿島氏の究極の「キャリアビジョン」のようだ。

勉強し続けて、どこでも通用する力を得たい

 「そこまで明確なビジョンは描けない」という人も、中にはいるかもしれない。だが、無理して壮大なビジョンを立てようとする必要はない。今後1〜2年は、いまやっていることを地道に続けたい、というのも1つのキャリアビジョンだ。

 『ITエンジニアの憂鬱』を執筆するケーワイケー氏は、「1〜2年後も変わらずに続けたいこと」を挙げている。開発現場でいろいろな開発案件に携わり、経験を積む。自宅では子供たちと遊び、家族サービスの合間に勉強をする。こうした「現在やっていること」を、1〜2年後もしっかりと続けていきたい、というのがケーワイケー氏の考えだ。

 継続するということは非常に難しい。勉強に関しては、なおさらだ。歳を重ね、経験を積むと、自分の持つ知識や経験の範囲で物事を決めてしまいがちである。新たな知識を獲得するのを面倒に思うためだろうか。事実、ケーワイケー氏も「入社して1、2年目のころに比べると勉強量は減っている」と認め、「もう一度初心に返り、もっともっと学んでいきたい」と自戒する。

 もっと知識を獲得して、1〜2年後、もしいまの会社を離れることになったとしても、どこに行っても通用するような力を身に付けたい。それがケーワイケー氏のキャリアビジョンのようだ。


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