現場の技術者が考える「1〜2年後の自分の姿」特集:岐路に立つIT技術者たち(4)(2/2 ページ)

» 2010年05月13日 00時00分 公開
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同期が主任に昇格。自分は……?

 ここまで、比較的ポジティブな考えのコラムを紹介してきた。だが、誰もが前向きにキャリアビジョンを描けるわけではないだろう。コラムニストの中にも、キャリアについて深く悩んでいる人がいる。

 『オブリガート 〜感謝されるテストエンジニアになる〜』を執筆するテストエンジニアの第3バイオリン氏は、同期が主任に昇格したことを期に、自身のキャリアについて悩み始めた。

 素直に祝福したいという気持ちはある。だが同時に、「あーあ、先を越されちゃったよ……」という思いを抑えることはできなかったという。同期の昇進を目の当たりにし、第3バイオリン氏は主任昇格試験を受けようと考える。

 第3バイオリン氏の会社の主任昇格試験では、役員を相手にプレゼンテーションを行うそうだ。自身の業務実績の発表や、業務改善のためのアイデア提案などがその内容となる。だが、第3バイオリン氏は「プレゼンのネタがない」と悩んでしまう。

 そんな折、上司は第3バイオリン氏に告げる。

 「あなたは、業務上どうしても主任にならなくちゃいけない状況ではない。それに、主任になるためにはまだ足りないものがある。たとえプレゼンのネタを見つけたとしても、『プレゼンのためのプレゼン』に終わってしまう恐れがある。もしそれで合格しても、肩書きだけの主任になってしまう」


 母親からは「今すぐ主任になる必要がないんだったら、あせって試験を受けることはない」と諭される。あせらず、少しずつ「理想の主任像」を探せばいいのではないか、と第3バイオリン氏は考え直す。

 悩んだ末に第3バイオリン氏が出した答えは、「今後1〜2年は『理想の主任像』のイメージを固め、主任になるための準備をする」というものだった。

悩んだ末に至った「やりたいことをやろう」という決意

 『恋愛感情で仕事はできるか?』を執筆する森姫氏の悩みは、さらに深い。この1年、テストエンジニアとして働きながらも、プログラマになって開発に携わりたいと考えていた森姫氏に対し、上司は「いまは仕事がない」と告げる。ならせめてテストエンジニアとしてリーダーを目指そうと考えるも、リーダーはプロパーの社員しかなれないことが発覚。出向してきている森姫氏のリーダーへの道は絶たれてしまった。

 現状を打開するために転職活動を始めたが、プログラマとしての知識と経験が足りず、うまくいかない。「もういいじゃん、1年後も現状維持にしようよ」というささやきが聞こえてきた、と森姫氏は語る。

 そんなとき、ふと開いた雑誌に載っていた「ペガサス昇天盛り」という馬鹿馬鹿しい髪型を見て、「なんだ、やりたいようにやればいいんじゃないか」と森姫氏は考え直す。今後1〜2年はキャリアのことを考えず、やりたいことをとことんやろう、というのが森姫氏の結論だ。これもまた、1つのキャリアビジョンといえるだろう。


後悔しないため、やり残したことをリストアップ

 最後に、現在「無職」の人のキャリアビジョンについて見てみよう。

 『ドロップアウトからのキャリア七転び八起き』を執筆する46氏は現在、無職だ。外資系企業でITマネージャとして働いていた46氏は、キャリアコンサルタントや中小企業診断士としての活動、書籍の出版など、業務外でもさまざまな活動をしていた。その結果、収入は上がったが、時間が足りなくなってしまった。「家族との時間や、まともな食事をする時間などがどんどん削られていった」と語る46氏は、「どれかを捨てて、バランスを取らなければ」と考えた。その結果、捨てたのは「会社の仕事」だった。


 かつて勤めていた会社が倒産し、放り出されてしまった経験を持つ46氏は、「会社に依存しない、しがみつかない生き方」を念頭に置いて生活してきた。生活のバランスを取るために最初に捨てたのが「会社」だったのは、そういう背景があってのことである。

 現在、46氏は「後悔しないこと」をコンセプトに生活しているという。まずは、忙しさのあまり放置していた「やり残していたこと」をリストアップし、1つ1つ実践して、やり残しを減らしていく。それが今後1〜2年の46氏のキャリアビジョンだ。



 以上、6人のコラムニストの「1〜2年後のキャリアビジョン」を紹介した。いかがだっただろうか。

 キャリアビジョンは自ら作るものだ。自分の状況と、自分を取り巻く周囲の環境を知ること。その上で、自分が何をしたいのか、何を大事にしたいのかを知ること。そして、具体的なイメージを描き、そこに近付くための行動計画を立てること。ビジョンそのものは、大げさなものでなくても構わない。まずは知り、そして考えることから始まるのだ。


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