複数のディスクを組み合わせて大容量化と耐障害性を確保するRAID-5。その作成方法や障害時の対応を解説。
仮想化ソフトウェアを利用すれば、実機ではなかなかできないようなことでも簡単に行える。前回は、ストライプやミラー・ボリューム、および障害の発生したミラー・ボリュームの復旧方法などについて見てきた。今回はディスク管理編の最後として、RAID-5ボリュームについて見ていく。
RAID-5ボリュームを作成する前に、まずRAID-5ボリュームについて復習しておこう。連載第12回の「パーティションやボリューム、ディスクのタイプについて」や、基礎解説「RAID基礎辞典」などでも触れているが、Windows OSの「RAID-5ボリューム」とは、3台以上のディスクを組み合わせて、耐障害性の向上や大容量化などを実現する技術である。例えば64Gbytesのディスクを3台使ってRAID-5ボリュームを作成すると、ボリュームの総容量は2台分の128Gbytesにしかならないが、ミラー・ボリュームのように耐障害性を持ち、ディスクが1台故障しても継続してアクセスできるようになる。ただし、さらにもう1台故障するとボリューム全体が使えなくなるので、その前にディスクを修理/交換する必要がある。仮想環境におけるRAID-5ボリュームの諸特性を次に示しておく。
RAID方式 | RAID 1 | RAID 5 |
---|---|---|
Windows OSでの呼び方 | ミラー・ボリューム | RAID-5ボリューム |
冗長機能(耐障害性) | ○ | ○ |
高速化 | −(※) | −(※) |
全体の構成ディスク数 | 2台のみ | 3〜64台 |
ユーザー・データ・サイズ | 1台分 | n-1台分(nはディスクの全台数) |
冗長データ(パリティ)サイズ | 1台分 | 1台分 |
有効なデータ領域率 | 50% | ((n-1)÷n)×100% |
必要なディスク・タイプ | ダイナミック・ディスク | ダイナミック・ディスク |
ディスクごとのパーティション・サイズ | 1Mbytes〜2Tbytes(これは仮想ディスクの制限) | 1Mbytes〜2Tbytes(これは仮想ディスクの制限) |
実現可能なボリューム・サイズ | 1Mbytes〜2Tbytes(元のパーティション・サイズと同じ) | 最大62Tbytes |
ファイル・システム | NTFS | NTFS |
利用可能なOS | Server系Windows OSおよびWindows 7のProfessional/Enterprise/Ultimateエディション | Server系Windows OSのみ |
仮想環境Windows OSにおける耐障害性ボリューム機能 Windows OSで利用可能なミラー・ボリュームとRAID-5ボリュームの仕様。ただし仮想環境では仮想ディスク(.VHDファイル)の最大サイズが2Tbytesに制限されているので、最終的なボリューム・サイズは実ディスクの場合よりも少なくなる。 ※ハードウェアRAIDではアクセス速度の高速化が実現できる可能性があるが、仮想環境の場合は必ずしもそうとは限らないので(特に差分ディスクやスナップショットなどを使っている場合)、高速化はあまり期待できない。 |
なお、RAID-5はServer系のWindows OSでのみ利用可能なので、以下のテストはすべてWindows Server 2008 R2 Standardエディションで実行している。
RAID-5ボリュームの作成は、ストライプ・ボリュームの作成と同じである。どれか1つディスクを選んで右クリックし、ポップアップ・メニューからRAID-5ボリュームの作成ウィザードを起動する。
ウィザードの最初の画面では必要なディスクを追加する。3台以上、32台以下のディスクが選択できるが、それぞれのディスクからはすべて同じサイズだけ確保される。最低でも3台の仮想ディスクが必要なので、仮想IDEインターフェイスしか利用できない(SCSIインターフェイスがサポートされていない)Virtual PCやWindows Virtual PCでは、テストするのはあまり簡単ではない。IDEインターフェイスでは最大で4台しかディスクが接続できないが、1台は起動用ディスク、1台はCD/DVD-ROMドライブで使用されているので、あと2台しか仮想ディスクが追加できないからだ(「仮想ディスクは最大で何台接続できる?」参照)。RAID-5のテストをするなら、SCSIインターフェイスがサポートされているVirtual Server 2005やHyper-Vを利用するのがよい。
ここでは32Gbytesのディスクを3台使ってRAID-5ボリュームを作成してみた。ウィザードの実行後、しばらく「構築」作業が行われ、その後、実際に利用可能になる。構築中は状態が「再同期中」と表示される。構築とは、ディスクの冗長データ(パリティ・データ)部分を初期化するために、全ディスク領域に渡ってゼロ・データを書き込む作業のことである。ゼロ・データしか書き込まないので、サイズ可変長の仮想ディスクの場合は実際に仮想ディスク・ファイルのサイズが大きくなることはないが、時間はかかる(全部サイズ可変長の仮想ディスクを使った手元の例では、1〜2分ほどであった)。1台分は冗長データ(パリティ・データ)に利用されているので、ユーザーが利用できるボリューム・サイズは2台分、計64Gbytesになる。
ボリュームの状態は次のようになっている。
上の例では、最小構成台数である3台のディスクでRAID-5ボリュームを作成したが、最大は何台まで利用可能だろうか。先の表にも記述しているし、連載第11回の「ボリュームの最大サイズはいくつまで?」でも述べているが、実際には32台までのディスクをひとまとめにしてRAID-5ボリュームを構築できる。以下は、32台のディスクを使ってRAID-5ボリュームを作成しようとしているところである
画面の右側のディスクの台数が3〜32台のときだけ、下側の[次へ]というボタンが有効になり、それ以外の場合はクリックできなくなっている。例えば32台のディスクでRAID-5ボリュームを作成すると次のようになる。
ディスク32台でストライプ・ボリュームを作成した場合と若干異なり、ディスク1台分だけボリュームのサイズが小さくなっている。パリティ容量(ディスク数)を変更したり、障害時の自動切り替え用に用意しておくといったことはできない。
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