今回の東北地方太平洋沖地震で被災された方に、心よりお見舞いを申し上げます。エンジニアの皆さんにおいては、復旧作業やサービスの安定稼働に向けて、尽力されている方が多くいらっしゃることと思います。
このような非常事態において、私たちのメンタル面にはさまざまな変化が生じます。本記事では、臨床心理士による専門的アドバイスを基に、自然災害によって起こるメンタル面の変化と、その対処方法をまとめました。参考にしていただければ幸いです。
私たち人間の力をはるかに超えた災害――被災に合った直後はもちろんのこと、被災してからしばらく経った後、また被災者たちへの支援や応援を行う人たちにも、さまざまな負担が生じます。
1995年の阪神・淡路大震災のとき、広く世に知られたのが、心的外傷後障害(PTSD:Post Traumatic Stress Disorder)です。生命の危機に遭遇した後には、下記のような反応が起こります。
これらの症状は、重大な危機に直面した人に起こる当然の反応です。「気力の問題だ」「自分が弱いせいだ」などと、精神論で無理やり抑え込むことは避けてください。このような症状が見られたら、1人で抱え込まずに専門家によるサポートを受けることが大切です。
災害は、私たちの大切なもの、そしてときにかけがえのない人さえも奪っていきます。言葉にしがたい喪失の体験です。
喪失には、「衝撃」→「否認」→「怒り」→「抑うつ」→「受容」というプロセスがあるとされています。知識として、このプロセスを知っておくことは1つの対処になるでしょう。しかし、実際の災害においては、「衝撃」が重なる場合や自責の感情が強くなる場合もあるため、「必ず上記の順序に従って変化する」というわけでは決してないことも、ポイントとして押さえておいてください。
災害は、周囲の環境に大きな変化を引き起こします。水道や電気などのライフラインは無論こと、いつもあるはずの場所にあるべきものがなくなる――これが震災です。日常生活の停滞や混乱が大きな心的負担となって、物事にこだわったり(不要と思われるものを手放さない、着替えを拒むなど)、実際に起こりえないことを心配したりする場合があります。
2次災害とは、復旧作業チームや危機対応チームのスタッフといった援助者の動揺や、心身の疲弊のことです。日常とは異なる役割を担い、緊迫した状態で業務を遂行するため、本人が自覚する以上のストレスを受けていることが少なくありません。これらの2次災害を避けるためには、下記のことに留意してください。
どうしようもなく不安になったり、感情をうまくコントロールできなかったり……「自分は一体どうしてしまったのだろう?」と、驚かれることがあるかもしれません。しかし、大きな災害を経験した後に感情が揺さぶられたり、テレビなどで災害の映像を見て不安やショックを覚えるのは、ごく自然で正常なことです。
さまざまなストレス反応が現れるのは、災害が発生した直後ばかりではありません。数時間後、あるいは数日後〜数カ月後に症状が現れる場合もあります。
家族や仲間など信頼する人からのサポートがあれば、ストレス反応はより早く消失します。しかし、心の痛みが強すぎて、カウンセラーなどの専門家の援助が必要となってくる場合もあるでしょう。
専門家の援助が必要ということは、決して「その人が弱い」ということではありません。それは、「人間が1人で解決するにはあまりにも厳しい出来事だった」ということを意味しているだけなのです。
以下、「心の変化」「体の変化」への対処法をまとめました。できることから実践し、周囲の人々にもアドバイスしてあげてください。
ライフラインなどの環境が整ったら、次は自分自身をいたわる時期です。できるだけ、自分に優しくしてあげてください。
精神的にショックな出来事を体験したときは、行動にさまざまな変化が起こります。以下は、「ストレス反応が長引かないようにするポイント」です。
長期化する災害の余波に備え、くれぐれも無理や無茶はしないように心掛けてください。しっかり休みを取り、しっかりやるべきことをする。それが、この困難を乗り越える基礎体力となるのです。
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