P2Vを円滑に進めるには、VHDを作成する前に、以下の点に注意して移行元マシンの環境を整えておく必要がある。
Disk2vhdで仮想化する場合、移行先の仮想マシンに移行元マシンのネットワーク・アダプタの設定は引き継がれず、デフォルトの設定(DHCPによる自動設定)で初期化されてしまう。もし移行元マシンで固定IPアドレスなど手動の設定をしている場合は、移行前にその設定をメモしておいて、移行後の仮想マシンへそれを反映する必要がある。それには、コントロール・パネルの[ネットワーク接続]を開き、「ローカル エリア接続」(デフォルトの名称)のネットワーク・アダプタのプロパティを開き、各設定項目の状態を確認する。
また、[ネットワーク接続]ウィンドウの[詳細設定]メニューにある[詳細設定]をクリックして表示される設定も引き継がれない。特に複数のネットワーク・アダプタを装備している物理マシンでは確認しておいた方がよい。
Disk2vhdはデフォルトで、移行元マシンで認識されている全ボリュームをVHDに変換しようとする。特定のボリュームだけ変換する設定は可能だが、その場合VHDが正しく生成されないことがあるようだ。つまり、より確実にVHDを作成するにはデフォルトのまま、全ボリュームを対象とした方がよい。そこで、起動に必要のないリムーバブル・ディスクやUSBメモリなどは、Disk2VHDを実行する前に取り外しておく。
詳細は後編の「Windows Virtual PCで移行先の仮想マシンを起動する」で詳しく説明するが、移行直後の仮想マシンはセーフ・モードで起動させるので、最初はネットワーク接続ができない。従ってドメイン・アカウントではログオンできず、ローカル・アカウントを利用する必要がある。あらかじめローカルAdministratorのようなローカルの管理者アカウントで実際にログオンできるか確認しておこう。
起動ディスク内のボリュームのファイルシステムが破損していると、VHDの作成に失敗する恐れがある。あらかじめchkdskコマンドを実行してファイルシステムを修復しておこう。そのためのコマンドラインは次のとおりだ。
chkdsk C: /f
複数のボリュームがある場合は、「C:」を「D:」「E:」というようにドライブ名を変えながら、C:以外のディスクにもchkdskコマンドを実行する。chkdskコマンドの詳細については、上記の関連記事にある「解説」を参照していただきたい。
chkdskが済んだら、クリーンアップとデフラグも実行して、起動ディスク内のファイルシステムを整理しておこう。エクスプローラで各ドライブのアイコンを右クリックしてプロパティを開き、[全般]タブの[ディスクのクリーンアップ]ボタンをクリックすると、ドライブのクリーンアップができる。[ツール]タブの[最適化する]ボタンをクリックするとデフラグを実行できる。
Disk2vhdの実行中に移行元マシンの状態が変わると、VHDの作成に失敗する恐れがある。例えば移行元マシンでファイル共有やWebサーバを提供している場合、外部からのアクセスによってVHD作成中に起動ディスク内のファイルが書き換えられるかもしれない。そこで、Disk2vhdを実行する直前に、こうしたサービスは停止しておく。そのためのコマンドラインは次のとおりだ。
net stop server ……ファイル共有を停止する
net stop iisadmin ……Webサーバを含むIISを停止する
同様の理由からアプリケーションについてもできる限り終了させる。スクリーン・セーバや、タイマーによる自動スリープなどの省電力機能も一時的に無効化しよう。
まずは次のページからDisk2vhdのプログラムをダウンロードする。
Disk2vhd.zipというファイルがダウンロードできるので、移行元マシンからアクセスできるネットワーク共有フォルダに解凍する。原稿執筆時点での最新バージョンはVer.1.63であった。
ここまで説明した準備を済ませたら、移行元マシンにて、Disk2vhd.zipを解凍・格納したネットワーク共有フォルダをエクスプローラで開き、実行ファイル「disk2vhd.exe」を起動する。初回の起動時のみライセンスを確認するダイアログが表示されるので、内容を読んだら[Agree]ボタンをクリックする。Disk2vhdの画面が表示されたら、次のように設定した後に[Create]ボタンをクリックしてVHD作成を開始する。ポイントは、[Prepare for use in Virtual PC]にチェックを入れてオンにすることだ。
[A]
VHDの作成が正常に完了すると、上記画面のプログレス・バーが消えて、代わりに「Disk export to VHD completed successfully」と表示されるので、[Close]ボタンをクリックしてDisk2vhdを終了させる。VHDファイルをローカルのハードディスクに保存した場合は、移行先のホスト・マシンからアクセスできるネットワーク共有フォルダにコピーしておく。その後、移行元マシンはシャットダウンして電源をオフにする。これを怠ると、移行した仮想マシンを起動したときに、ネットワーク上でコンピュータ名が重複・衝突してエラーが生じるので注意する。
次は移行先のホスト・マシンでWindows Virtual PCをセットアップし、仮想マシンを稼働する準備をする。それには、次のWebページからWindows Virtual PCのセットアップ・プログラムをダウンロードする。
ホスト・マシンが32bit版Windows 7ならWindows6.1-KB958559-x86-RefreshPkg.msuを、64bit版ならWindows6.1-KB958559-x64-RefreshPkg.msuをそれぞれダウンロードする。実行するとインストール・ウィザードが起動するので、デフォルトの設定のまま指示に従ってインストールを完了させる。これでスタート・メニューに「Windows Virtual PC」というメニューが追加されるはずだ。
ホスト・マシンのWindows 7にService Packが適用されていない場合は、KB977206のパッチも適用しておく。これはWindows Virtual PCを更新するためのものだ。
Windows Virtual PCをセットアップしたら、移行先の仮想マシンを作成する。それにはまず、ホスト・マシンのスタート・メニューから[Windows Virtual PC]−[Windows Virtual PC]をクリックして、仮想マシン格納用フォルダを開く。そこに移行先の仮想マシン専用のフォルダ(ここでは「UserPC01」とした)を作成し、移行元マシンから作成したVHDファイルをコピーする。その後、次のようにして仮想マシンを作成していく。
[B]
以上で仮想マシンの作成は完了である。
作成した仮想マシンの設定を変更したり確認したりするには、作成された仮想マシン設定ファイル(拡張子.vmcのファイル)を選択してから[設定]をクリックすると、設定ダイアログが表示される。ただし、トラブルを避けるために、この時点でディスクやネットワーク・アダプタを増やすなど、デバイス構成を変えるのは避けた方がよい(メモリ容量を変更する程度なら構わない)。後編の「ネットワーク・アダプタの設定を確認/修正する」までの作業を済ませて、ある程度環境を整備してからデバイス構成を変えること。
ここではネットワーク・アダプタの設定を確認しておく。というのも、物理マシン上のWindows XP環境を仮想マシンに移行すると、高い確率で再アクティベーションが求められる。その際、ネットワーク経由でインターネットに接続できると、オンラインで簡単に再アクティベーションが実行できる。それには、ネットワーク・アダプタの接続先としてホスト・マシンの物理ネットワーク・アダプタを選ぶのがよい(デフォルトで選択されているはずだが)。
ここまで前編として、Disk2vhdで移行元マシンからVHDを作成し、Windows Virtual PCで移行先の仮想マシンを作成するところまでの手順を説明した。次の後編では、VHD内のレジストリを修正してから移行先の仮想マシンを起動し、実用的な環境となるように整備するまでの手順を説明する。
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