仮想化や展開、稼働監視、データ保護、マルウェア対策など幅広く管理するマイクロソフト製ツールSystem Center 2012の概要を解説する。
2012年4月、マイクロソフトはシステム管理ソフトウェアの新版「System Center 2012」をリリースした。本連載では、System Centerを使ったことがない、あるいはSystem Center 2008以前しか触れたことがないシステム管理者やソフトウェア導入担当者を対象に、System Center 2012の概要を解説する。第1回の今回は、System Center 2012にどのような機能が含まれていて、何をしたいときにどのような機能を利用すればよいのか、具体的な例に挙げながら解説する。また製品の狙いや思想的な背景、以前のバージョンとの違いについても触れる。第2回以降は、System Center 2012の中核機能といえる仮想化管理の「Virtual Machine Manager(VMM)」に焦点を当てて解説する。
「System Center」とは、マイクロソフトが提供する運用管理製品のブランド名である。従来のSystem Center 2008以前は、PCの管理やシステムの稼働監視ツールなどを、それぞれ個別の製品として提供してきた。しかし、仮想化がITの基盤として一般的に使われ始め、その仮想化だけでシステム全体の管理がよくなるわけでもないといわれ始めた今、企業ITの運用は複数の管理機能を適材適所で組み合わせながら利用していく必要があるという結論に達している。実際、企業内にはいろいろなベンダーのさまざまな管理ツールが動いていることだろう。
そのような事情を受け、System Center 2012という最新のバージョンではバラバラな販売形態を改め、1つの製品(DatacenterとStandardという2つのエディション)として提供することになった。この2つのエディションも、利用する仮想マシンの台数によってどちらかを選択する必要があるが、含まれる機能に差はない。これまでのように、機能ごとに対応製品を追加購入する必要はなく、1つの契約に含まれる複数の機能の中で、何から利用するか、どのような組み合わせで利用するかを検討すればよい。
まずは全体像から見ておこう。System Center 2012には、以下の図のような要素技術が含まれている。仮想化の管理はもちろんのこと、ITシステムを構築・運用・管理していく上で必要な要素が一通り取りそろっていることが分かるだろう。
例えば、仮想化の管理ツールは、System Center 2012という製品の中の「Virtual Machine Manager」というコンポーネントという扱いになる。
運用管理の現場では、要件に応じていろいろなツールが使われており、慣れているツールを変えたくないという声と同時に、何とかして種類を減らしたいという声もよく聞く。その声に応えるべく、System Center 2012はコンポーネント間で同じようなユーザー・インターフェイスを採用して総合管理ツールらしさを提供しつつ、古くなった既存の管理環境を統合・移行していく先としてふさわしいといわれるように、それぞれのコンポーネントで大幅な機能拡張も進めている。
さて、ここからは、これらの管理コンポーネントを使いこなすためのさらなるヒントをお伝えしよう。それは、マイクロソフトが想定するシナリオであり、本製品が持つコンセプトである。System Center 2012を活用するには、
という2つのシナリオをご理解いただくとよいだろう。以下では、それぞれのシナリオごとに説明する。
まずは、PCやデバイスを管理するというシナリオで活用される各コンポーネントと、それによって実現されることを紹介する。
System Center 2012は、企業で利用されるPCに対して、OSの展開やアプリケーション配布、インベントリの収集など、PCのライフサイクル全体を管理面からサポートする。それを担当するのが「Configuration Manager(CM)」というコンポーネントだ。また、企業のPCに必ずインストールされているセキュリティ系ツールもカバーすべく、これまで「Forefront」というブランド名で別個に提供されていたマルウェア対策ソフトウェアを、新たなコンポーネントの1つとして取り込んだ。このようにSystem Center 2012は、PCの管理からマルウェア対策までを1つのシナリオの中で完結できるようにしている。
さらに、System Center 2012は、エンドユーザー側から見た管理という側面を持ち始めている。例えば、社内で利用するアプリケーションをPCに一律に配信するというこれまでの形態に加えて、エンドユーザー自身が利用したいアプリケーションを選択できるようにするセルフサービス・ポータルも用意される。また、エンドユーザーと利用中のデバイス(PCや携帯端末など)をひも付けしておくことで、デバイスの紛失といったエンドユーザーからの緊急コールに対して、適切なデバイスを即座に認識し、リモート・ワイプ(デバイスを完全にリセットして、その中の情報をリモートから削除してしまう機能)を実行することも可能だ。
iPhone、iPad、Android端末などのマルチ・デバイス管理については、マイクロソフトのメール・サーバ製品「Exchange Server」が持つデバイス管理機能との連携によって実現される。これによって、一度でもメール・ボックスにアクセスしたデバイスについては、簡易的なインベントリ収集やパスワード・ポリシー制御、リモート・ワイプ機能などを提供できる。また管理者は図らずとも、社員が使っているデバイスの種類などをレポートで把握できるようになる。
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