今注目の「O2O」について、現状や概要を紹介し、O2Oを利用したAndroidアプリを作る際に必要な技術要素を1つ1つ解説していきます。今回は、O2Oの技術要素の1つとして「屋内測位」の概要や、Wi-Fiを利用したものを5つ紹介し、Walkbaseというサービスを例に使い方も解説します
本連載第1回目の「スマホ技術者も知らないと損する「O2O」の基礎知識」では、O2Oについて4つのパターンで整理しつつ、「集客」+「コンバージョン」に着目し、具体的な事例を示しながらマーケティングやビジネス面での応用についてまとめました。
また、O2Oを実現する際に持っておくべき個人情報の取り扱いに関する観点と合わせて、特にAndroid端末をクライアントとして見た場合の要素技術にはどのようなものがあるのか、屋外/屋内測位、近接通信(NFC)、Push Nortificationの3つを取り上げて概観しました。
連載第2回目の今回は、前回紹介した要素技術の中から、「屋内測位技術」について取り上げます。店舗内などでのサービスを考えた場合、ユーザーの屋内での位置を特定できる技術が利用できれば、サービス内容をより充実したものにすることが可能です。
また、「Googleマップ」「Yahoo! ロコ」などの大手サービスでも主要施設や地下街などで屋内測位による位置確認や情報提供が行われ始めており、屋外とのシームレスな情報提供を含め注目されつつあります。
まずは試しに使ってみるということで、今回は手軽に利用できそうな屋内測位の技術で作ってみた簡単なデモ実装についてお話しますが、具体的な実装の話に入る前に、前回の復習をもう少ししておこうと思います。
連載第1回目では屋内測位技術について、さまざまな技術の応用が進みつつあり、群雄割拠で「コレダ!」という決定版は「まだない」と説明しました。そして、それら群雄割拠の技術の中で代表的なものとして、Wi-Fiを利用した方式、GPS波と互換性のある「IMES(Indoor MEssaging System)」、超音波を利用した方式、可視光通信、端末搭載のジャイロセンサやコンパスを利用した自律航法型の方式などを挙げました。
Wi-Fiを利用した方式は比較的以前から用いられていて、すでに実際に利用できるプロダクトやサービスが、いくつかあります。
IMESは日本発の技術でもあり、屋外測位では一般的に広く利用されているGPSと互換性があることから期待される技術ですが、送波装置の設置や端末側の対応はまだこれからで、今後が期待されるところです。
超音波や可視光通信については、実利用される店舗などの環境で自然に利用できる点で応用の幅がありそうですが、今のところ一般的な技術とまではなっていません。
自律航法型は端末に閉じた技術で追加の設備がいらない点はよいのですが、誤差を補正する専門的なテクニックが必要となってきます。
それぞれ一長一短ある技術の概要、メリット・デメリットについては前回の表2にまとまっているので、そちらを参照してください。
前回挙げた屋内測位の代表的な技術例をざっと見渡したところで、今回は手近に利用できることを前提とするため、Wi-Fiを利用した屋内測位技術に着目したいと思います。
Wi-Fiを利用した測位技術は、Wi-Fiアクセスポイントからのビーコン情報や電界強度、三点測量などを利用したいくつかの手法を応用して実現されています。位置同定を行う仕組みや、より細かな技術内容については、今回は割愛します。一歩踏み込んで中身まで興味のある方は、一般に公開されている技術論文などを当たってみると面白いかもしれません。
細かい中身の手法は置いておくとして、実際にWi-Fiを利用した測位技術やWi-Fiによる測位技術を利用して提供されている実サービスを少しだけ挙げておきます。ここで挙げている例はごく一部で、国内外に他にもいくつか技術・サービス例はあります。
また、今回は取り上げない技術で、工場内などの閉域で利用される「電子タグ」の応用からWi-Fiを利用した「RTLS(Real Time Location System)」を実現しているものなどもあります。詳細な説明は割愛しますが、技術やサービスそれぞれで位置同定の精度や適用可能なシーンの違いがあるので、気になる方は個別に調べてみるのもよいでしょう。
日本発の技術・サービスで、Wi-Fi測位といえば、まずクウジットの「PlaceEngine」を思い浮かべる方も多いかと思います。Wi-Fiのアクセスポイントから電界強度などの情報を取得して位置同定を行っています。
また、ユーザーが取得した情報をPlaceEngineのデータベースに蓄積することで、測位精度が向上するようになっています。Wi-Fiを利用した測位を実際に利用できるものとして展開したサービスの先駆けといえるでしょう。
PlaceEngineのサービス自体は屋外でも利用できるものですが、「PlaceEngine屋内測位ソリューション」として、屋内に特化したソリューション展開もされているようです。実際に東京国立博物館のガイドサービスである「トーハクなび」などで利用されています。
日本発で老舗的な位置付けなのがPlaceEngineであるなら、海外発で早くから利用されているものといえば、Skyhook Wirelessの「Wi-Fi Positioning System」が挙げられます。こちらもご存じの方が多いのではないでしょうか? Skyhook Wirelessは一時期iPhoneやiPod touchのロケーションエンジンとして利用されていたこともありました。
「ウォードライビング」(この手法自体は、しばしばプライバシー関連で問題視されますが)とSkyhook Wirelessサイトで行える任意の情報登録でWi-Fiアクセスポイントの情報を収集し、独自のアルゴリズムで位置同定を行っています。配布されているSDKを利用することでSkyhookの提供するWi-Fi Positioning Systemを自アプリやサービスに組み込めます。
こちらのサービスも、もともと屋内のみに限定したものではありませんが、屋内に設置されたWi-Fiアクセスポイントの登録がある施設や建物内で利用することは当然可能です。
新しいところでは、米国のスタートアップであるWiFiSLAMが提供するIndoor Locationのサービスがあります。少し前まで完全ステルスなスタートアップだったのですが、最近サービスを公開しました。店舗内など、屋内に設置された既存のWi-Fiアクセスポイントから発信される電波を利用した位置同定が可能です。SDKが用意されていて、アプリやサービスに組み込んで利用できます。
フロアの平面図やマップを画像として取り込んで、その画像上で簡単に位置登録とキャリブレーションができるようになっていたり、解析基盤が用意されていて、組み込んだアプリやサービスを利用したユーザーが歩いた経路やヒートマップ表示などを見ることも可能です。
もう1つ米国のスタートアップの例を挙げておきます。Nearbuy Systemsは小売店舗向けに特化して店舗内のロケーションを利用したサービスを展開するスタートアップです。
技術的にはWi-Fiだけではなく、店舗内に設置されたカメラ映像の解析データを組み合わせて利用することで精度を向上させています。店舗内に設置された棚のどの位置にいるかというレベルで位置同定し、例えば、そのユーザーの目の前にある商品のクーポンをユーザーの持っているスマートフォンに届けるといったことも可能にしています。
また、WiFiSLAMと同様に解析基盤を持っていて、店舗内でのユーザー行動の解析結果を店舗経営に生かすためのサービスも用意されています。
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