ここまで紹介した内容は、数年前から語られている一般論として記載しており、現在では、それぞれの方式の弱点や課題を克服するためのアプローチが実装された製品も登場し始めている。ここからは、それぞれの製品を整理し特徴を見ていこう。
バックアップエージェント型でありながら、バックアップ対象となるアプリケーションサーバへの負荷も低く、ネットワーク帯域負荷も低い製品としてファルコンストアの「RecoverTrac2.5」がある。
この製品は、バックアップエージェント型であるため、物理サーバや仮想サーバを含む豊富なアプリケーションに対応する利点を持ちながら、バックアップ対象サーバのドライバ層にエージェントをインストールすることで、プロセス負荷を低減している。
また、「永続型インクリメンタルバックアップ」として常にブロック差分のみをバックアップすることで、アプリケーションサーバのネットワーク負荷を低減するアプローチが実装されている。また特徴的な機能としてP2Vリストアが実装されており、物理環境のバックアップイメージを使って、仮想環境上にリストアが可能だ。RPO(リカバリ時点)やRTO(リカバリ時間)が長めに取れるコストパフォーマンス重視の災害対策システムなどに応用できる。
ストレージ機能連携型バックアップ製品の例としては、EMCの「AppSync1.0」が挙げられる。仮想基盤の共有ストレージとして、多くの実績を持つユニファイドストレージ製品「VNX」と連携し、仮想基盤管理者の視点で簡単にバックアップ/リストアのオペレーションが実行できる。VMware vCenterへのプラグインとして導入できることから、仮想管理者が慣れ親しんだvSphere Clientから直感的な操作で仮想マシンのシステムリカバリが可能な点が特徴だ。仮想基盤の管理者が不慣れなストレージコンソールにアクセスする必要はまったくない(図5)。
内部的には、ストレージ側が持つ機能と連携しているため、最高レベルのRTO/RPOを得られる点が大きなメリットになる。AppSyncではVNXとRecoverPoint CDP(continuous data protection)との連携を図ることもできる。
CDPはジャーナル技術を使い、全てのストレージ書き込みログを順序立てて保持することで、どの時点のデータにも戻ることが可能な技術だ。不測の事態が発生した際に直前データへ復旧するには最適だ。
仮想機能連携型の製品としては、シマンテックの「NetBackup7.5」が挙げられる。VADPでエージェントレスを実現しながら、アプリケーションの整合性のある静止点が認識でき、DBインスタンス単位などの粒度でのリストアが可能だ。現在、VMware vSphere上のMicrosoft Exchange Server、SharePoint Server、SQL Serverをサポートしている。電子メール、ファイル、データベースに至るまで、きめ細かいデータアイテムをリストアできる「アプリケーション・グラニュラー・リカバリ・テクノロジー(Granular Recovery Technology:GRT)」を実装している。これにより、1回のバックアップから、アプリケーションGRTによるワンアイテムのリカバリも、仮想マシンイメージ全体のリカバリも選択できるようになった。従来のVADPは、アプリケーションに対する整合性が無視できるバックアップに使われていたが、アプリケーション整合性を確保できる製品が出てきたかたちだ。
バックアップエージェント型と仮想機能連携型を組み合わせた製品には、例えば、EMCのAvamar for VMwareがある。Avamarはバックアップ専用のハードウェアアプライアンスと、バックアップ用のソフトウェアを組み合わせた製品だ。仮想マシンのイメージバックアップ用にはVADP連携が利用できる一方、データファイルのバックアップには仮想マシンで動作するエージェントを活用する。どちらの場合もバックアップ対象データの重複排除が可能だ。VADP連携の場合は、上述のCBTにより変更ブロックを特定し、重複排除で最小限のブロックデータのみをバックアップ装置に転送できる。
以上、前編では、仮想化環境でのバックアップにおいて「バックアップ対象のデータは何か?」「それぞれに適した手法は何か?」また、それを踏まえた最新技術について解説した。後編では、実際の運用の場面をイメージして、ベストプラクティスを探っていきたい。
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