社員に支給するiPhoneに無用なアプリケーションをインストールさせたくない…… アップルの無償ツール「iPhone構成ユーティリティ」を使ったアプリケーションのインストール制限方法を解説する。
会社でiPhone/iPod touch/iPadシリーズ(以下iPhone/iPod/iPadと略す)を社員に支給して活用してもらいたいとき、ゲームなど業務と関係のないアプリケーションを無制限にインストールさせたくない、というニーズはPCの場合と変わりないだろう。Windows PCの場合は、Windowsシステム管理者であればActive Directoryとグループ・ポリシーで制限する、といった方法がすぐ思い浮かぶだろう。では、iPhone/iPod/iPadの場合はどうすればいいのだろうか?
本稿では、連載第12回でも利用した無償のアップル製ソフトウェア・ツール「iPhone構成ユーティリティ」とWindows PCを組み合わせて、数台から十数台以下のiPhone/iPod/iPadを前提にアプリケーションのインストールを制限する方法を解説する。なおiOSはVer. 6を対象としている。また以下のスクリーンショットはiPod touchのものだが、iPhone/iPadシリーズでも操作手順は同様である。
iPhone構成ユーティリティとは、iPhone/iPod/iPadのさまざまな設定をWindows PCやMacから一括で適用できるようにするソフトウェア・ツールである。特に複数台のiPhone/iPod/iPadに対して一律に同じ設定を反映する際に大変役立つ。またサーバ・マシンなどの特殊な要件はなく、普通のWindows PCがあれば利用できる手軽さも備えている。
このツールを用いてアプリケーションのインストール制限(以下、単にインストール制限)を設定するための手順は、おおよそ次のとおりだ。
このうち、1.と2.は1回だけ実行する。3.は、設定したいiPhone/iPod/iPadの数だけ繰り返し実行する必要がある。
なお、iPhone構成ユーティリティとiOSだけの組み合わせでは、特定のアプリケーションのインストールを禁止することができない。つまり、全アプリケーションのインストールが禁止されてしまうので、設定を適用する前にあらかじめ、業務に必要なアプリケーションを残して、ほかは削除しておく必要がある(プレインストールのアプリケーションは削除できないので除く)。業務アプリケーションを複数台のiPhone/iPod/iPadに配布する方法については別稿で解説させていただき、本稿ではインストール制限に集中することにする。
iPhone構成ユーティリティをインストールするのに必要なソフトウェア/ハードウェア要件を以下に記すが、普通のWindowsクライアントPCで十分に事足りる。
項目 | 条件 |
---|---|
Windows OS | Windows XP SP3、Windows Vista SP1以降、Windows 7(32bit版/64bit版)のいずれか |
そのほかのソフトウェア | .NET Framework 3.5 SP1 |
ハードウェア | USBインターフェイス、iPhone/iPod/iPad接続用USBケーブル |
iPhone構成ユーティリティのソフトウェア/ハードウェア要件 厳密には、USBを使わなくても設定の配布や適用は可能だが、本稿ではUSBによる配布・適用方法を解説する。 |
.NET Framework 3.5 SP1がインストール済みかどうかは、TIPS「.NET Frameworkのバージョンを確認する方法」で確認できる。まだインストールされていない場合、Windows XP/Windows VistaならWindows Updateからインストールできる。Windows 7なら、コントロール・パネルから[プログラムと機能]−[Windows の機能の有効化または無効化]とクリックし、[Microsoft .NET Framework 3.5.1]にチェックを入れてオンにしてインストールする。
Windows PCの準備ができたら、次のアップルのWebページからiPhone構成ユーティリティのインストーラをダウンロードする。
「iPhoneConfigUtilitySetup.exe」というインストーラがダウンロードされるので、管理者権限のあるユーザー・アカウントでそれを起動し、ウィザードを進めてインストールする。途中で「使用許可契約に同意する」ラジオボタンを選択するほかは、特に設定を変更する必要はない。ユーザー・アクセス制御(UAC)のダイアログが表示されたら、その指示に従って[はい]ボタンをクリックして次に進める。
インストールを完了したら、[スタート]メニューから[iPhone 構成ユーティリティ]−[iPhone 構成ユーティリティ]をクリックしてiPhone構成ユーティリティを起動する。まずはウィンドウ左側のメニューから[構成プロファイル]を選び、ツール・バーの[新規]ボタンをクリックする。これで新しい設定(構成プロファイルと呼ばれる)のひな型が作成されたので、そこに必要事項を入力していく。
真ん中のペインに16個のメニューが並んでいるが、設定すべきは[一般]と[制限]だけである。[一般]では最低限、次の3つの項目を指定する。
次に真ん中のペインから[制限]を選び、右ペインの[構成]ボタンをクリックすると、たくさんの設定項目が右ペインに現れる。このうち、アプリケーションの利用制限に関わるのは次の5つである。いずれもデフォルトでオンすなわち許可されているので、必要なものをオフにして禁止にする。
上記画面の右ペインの一番下にある「許可されるコンテンツレーティング」の[App]という設定項目で[App を許可しない]を選ぶと、プレインストール以外の全アプリケーションがホーム画面に表示されなくなり、起動できなくなる。またApp Storeからのインストールも禁止される。もしSafariでWebアプリケーションを利用できれば十分という場合は、この設定でもよいだろう。
ここまでの作業が済んだら、iPhone構成ユーティリティを起動したまま、iPhone/iPod/iPadとWindows PCをUSBケーブルで接続する。すると数秒でiPhone構成ユーティリティが自動的にiPhone/iPod/iPadを検知して、左側メニューの「デバイス」以下にリストアップされる(この時点で設定はまだ転送・適用されていない)。なお、iPhone/iPod/iPadをパスコードでロックしている場合は、初回接続時のみ、手動でロックを解除する必要がある。
次に、左側メニューから対象のiPhone/iPod/iPadを選択してから、右ペインの[構成プロファイル]タブを選び、一覧の中からインストール制限設定を見つけて[インストール]ボタンをクリックする。あとはiPhone/iPod/iPad側を操作する。
[A]
以上でiPhone構成ユーティリティによる設定作業は完了なので、USBケーブルの接続を外してよい。
実はiOSでは、アプリケーションの削除も禁止できる。しかし、なぜかiPhone構成ユーティリティではその項目がなく、構成プロファイルでは設定できない。エンドユーザーがうっかりアプリケーションを削除するのを防ぎたいなら、iPhone/iPod/iPad側で直接この設定を加える必要がある。
それにはホーム画面から[設定]−[一般]−[機能制限]とタップしてから、[機能制限を解除]ボタンをタップする。すると機能制限専用のパスコード入力が求められるので、確認も含めてパスコードを2回入力する。これで機能制限の設定を変更できるようになるので、[Appの削除]をスライドしてオフにする。
以上で設定作業は完了だ。
実際にインストール制限が働いているか、確認してみよう。まずiPhone/iPod/iPadのホーム画面からApp Storeのアイコンが消えているはずだ。また、Windows PC上のiTunesと同期を取っている場合、iPhone/iPod/iPadを接続すると表示される[App]タブにおいて、「App を同期」枠がまったく操作できなくなっているはずだ。つまり、iTunes経由でアプリケーションをインストールすることもできない。
iPhone/iPod/iPadのホーム画面でアプリケーションのアイコンを長押しすると、通常は追加アプリケーションのアイコン右上に「×」マークが現れて、タップすると削除できる。しかし、上記の設定後は、長押ししても「×」マークが現れないはずだ。
またアプリケーション内から何かを購入しようとすると、制限されていて購入できないというエラー・メッセージが表示されるはずだ。
数十台あるいは数百台のiPhone/iPod touch/iPadシリーズを社内に展開する場合、本稿で説明した方法だと実際には手間がかかり過ぎる。こうした大量展開では、MDM(Mobile Device Management)と呼ばれる管理ツール/サービスや、より高機能なアップル製ツール「Apple Configurator」(Windows非対応。MacとOS Xが必要)などを活用する必要があるだろう。これらについては別稿で紹介・解説したい。
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