EMCジャパンの代表取締役社長、山野修氏は1月31日、同社の2013年における事業方針を説明。モバイルやソーシャルの伸びを意識した事業展開を進めていくという。一方で、同社にとって2013年は、新コンセプトの製品が続々登場する年になる。
EMCジャパンの代表取締役社長、山野修氏は1月31日、同社の2013年における事業方針を説明。調査会社によると、今後のICT市場の伸びはクラウド、ビッグデータ、モバイル、ソーシャルメディアから成る「第3のプラットフォーム」に集中するとみられることから、同社がこれまで注力してきたクラウドおよびビッグデータに加え、特にモバイル市場の伸びを念頭に置いた事業活動を進めていくと話した。
モバイル関連での具体的な活動例としては、例えばデスクトップ仮想化の支援があるという。モバイル対応を目的として、デスクトップ仮想化を導入する企業が増えているが、ストレージI/Oが問題になることが多い。これを解消する手助けをしていくことは重要だとする。ほかに、モバイル関連の製品やサービスも検討しているという。憶測の域を出ないが、セキュリティ関連でモバイル対応を強化することも十分あり得る。
だが、もちろん同社の主な注力分野は、従来どおりクラウド、ビッグデータ、そしてトラスト(セキュリティ/データ保全)だ。この分野で、EMCは新ジャンルの製品を2013年中に発表する。
1つは、近い将来に発表されるとみられるフラッシュ関連製品。これには2つある。提供開始済みのPCIeフラッシュ「VFCache」をコンピュータに複数搭載したもの(開発コード「Project Thunder」)、そして100%フラッシュのストレージ製品(開発コード「Project X」)だ。
EMCは、上記の双方とも、自社の既存製品との連携を差別化ポイントとしていく可能性が高い。例えば、提供開始済みのVFCacheは、同社のデータ自動階層化管理機能「EMC FAST」に対応している。すなわち、データはアクセス頻度などのポリシーに基づき、VFCacheとVNXの間で自動的に再配置されるようになっている。「Project Thunder」「Project X」も、同様にFAST対応する可能性が高い。
もう1つはSoftware Defined Data Center推進に関するもの。具体的には既存製品を仮想アプライアンス化し、ソフトウェアとして提供するという取り組みだ。EMCは2012年の米国におけるEMC Worldで、これを構想として発表している。
こちらについても、ハードウェア製品の売り上げを自らつぶすつもりではないだろう。例えばEMCの既存ストレージハードウェア製品を使っている顧客が、クラウドサービス(IaaS)上で同一ストレージ製品の仮想アプライアンス版を稼働し、相互間で、複製や自動階層化管理の機能を活用することが考えられる。そうすれば、クラウドサービスを災害対策のためのバックアップサイトとして使うといったシナリオも、容易に描けるようになるからだ。
その他の動きとしては、質問に対する答えのなかで、中堅企業への働きかけを強めていくと山野氏は話した。大企業に続き、中堅企業が今後のクラウド活用をはじめとするIT戦略について悩んでいるケースが増えてきており、コンサルティング的な活動を強化していきたいという。また、中堅企業への対応についてはパートナーとの連携を深めていきたいとしている。
EMCはまた、スケールアウトNAS「Isilon」の新製品を同日に発表した。新製品はIsilonのOSである「OneFS」の新バージョン7.0を搭載。企業の社内ストレージとしての利用で役立つ機能を強化した。
IsilonのOneFSは、これまでもエンタープライズIT向けの機能を搭載していたが、下の図のようにこれをさらに強化。改ざん防止機能(WORM)で、米証券取引委員会のSEC Rule 17a-4に準拠したことがこれを象徴している。
これにより、マルチメディアなど特定用途のデータだけでなく、これまで一般的なNAS製品の守備範囲となってきた社内非定型データも統合できるファイルストレージという位置付けになった。すなわち、EMCのNASでいえばVNXの上位機種として、より大きな容量や拡張性が求められる場合に適しているという。
機能強化もさることながら、今後は販売体制も大きく変わることになる。中堅企業を対象とした販売組織がVNXとIsilonの双方を扱う。生産向上、品質管理、プロフェッショナルサービス、サポートと、ほぼ全面的に、アイシロン事業はEMCのほかの製品と統合される。EMCのパートナープログラムであるVelocity Solution Provider Programでも、今回からIsilon製品が対象とて加わった。
しかし、何といってもインパクトが大きそうなのは価格の引き下げ。EMCジャパンは従来との違いを具体的には明らかにしていないが、これまで一般的なNASと比べて、価格が高すぎるため、検討すらしてもらえなかったような企業でも、十分検討してもらえるくらいにはなったという。
搭載ディスクドライブの容量については、各4TBまで対応できるようになった。これにより、ストレージシステム当たり最大20.7PBを単一ファイルシステムで構成可能になっている。同社では従来製品と比較して容量当たりのラック搭載密度は30%程度向上するとしている。
製品名 | 参考価格 | ディスク容量 |
---|---|---|
Isilon X400 | 1445万7200円 | 144TB(4TB×36) |
Isilon NL400 | 1136万2200円 | 144TB(4TB×36) |
Isironの製品ラインアップと参考価格(1ノード、税別) |
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.