米VMwareのCEOとして初来日したパット・ゲルシンガー氏。同社CEOに就任して2カ月、ゲルシンガー氏はVMwareをどのような方向性に導こうとしているのだろうか。
2012年11月6日から「vForum2012」が東京で開催されるのに併せ、5日、米VMwareのCEOであるパット・ゲルシンガー(Pat Gelsinger)氏が来日、日本のプレス向けに会見を行った。同氏がVMwareのCEOとして日本のプレス向けにメッセージを示すのは今回が初である。
ゲルシンガー氏はもともとIntelでXeonやItaniumプロセッサなどの開発を指揮していた人物だ。80486、80386、80286プロセッサのデザインを担当した技術者でもある。その後、米EMCでCOO兼社長としても活躍している。VMwareに参画したのは2012年9月のことである。就任から2カ月、VMwareのいまとこれからをどのようにとらえているのだろうか。本稿では、記者会見の中でも特に今後の展開についての話題を中心に紹介する。
ゲルシンガー氏は、現在のVMwareの競合はどこか、との問いに、「マイクロソフト」「シトリックス」の名前を挙げた。マイクロソフトといえば、Windows Server 2012においてHyper-V 3.0の強力な機能強化が行われたばかりである。シトリックスも同様にXenの機能強化を進めている。
ゲルシンガー氏の見解では、サーバ仮想化製品を提供するベンダを現在の競合として認識している。これは仮想化技術を見てきた方々からすると至極当然のことだろう。しかし「5年後」の相手はどうなっているか、との問いに対しては、異なる答えが返ってきた。
「5年後のVMwareはアマゾンやオラクル、それからOpenStackも競合になり得る」(ゲルシンガー氏)
仮想化というよりは、プライベートクラウド向けのインフラやサービスを提供する企業の名前が連なる。
アマゾンについては、別の場でこうも言及している。
「VMwareはAmazonに次ぐポジションを得ている。それも、3位以下を大幅に引き離して2強の状況であると理解している。Amazonについていうと、彼らが強いのはパブリッククラウドの領域。われわれが目指しているのは、日本におけるソフトバンクや日立製作所との関係を見ても分かるように、あくまでもエンタープライズシステムの仮想化におけるエコシステムの構築だ。パブリッククラウド市場はもちろん大きく成長しているが、将来的にはプライベートクラウドやハイブリッドクラウドの市場がそれらをしのぐ規模に成長する」(ゲルシンガー氏)
vCDCがどのようなものかについては過去にソフトバンクを認定プロバイダとした際に紹介しているので記事を参照してほしい。大まかにいうと、VMware側が要求する高い信頼性・安全性を持ったクラウドサービスのみが認定されるものだ。
VMwareが5年後の競合と戦うために何が必要とされているのだろうか。
「VMwareという企業は非常に大きくなっている。しかし、これから数年後にアマゾンやマイクロソフト、オラクルといった企業との競争に勝ち抜くためには、企業の成熟が重要となる。これこそが、私に課された最も重要なミッションであると考えている」(ゲルシンガー氏)
ここでいう、企業の成熟とは、パートナーへの対応やサポートなどといった、自社の業務プロセスやオペレーションの質を指すようだ。
会見では「VMwareという企業は比較的若い。この数年でワールドワイドで急成長した企業だと認識している。ここからはきちんと成熟した企業として運営されるべき時期であると考えている。これこそが私に課された大きな宿題」(ゲルシンガー氏)と語り、エンタープライズ領域での成長を視野に、同社内部のプロセス、オペレーションもそれに見合う体制を整えていくとの考えを示した。
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