Windows 8チャレンジ部門では、以下の4作品が最終審査へと進んだ。各作品への想いや面白さを聴衆にアピールすべく、さまざまな趣向を凝らしたプレゼンテーションが行われた。
作品タイトル | チーム名 | 学校名 |
---|---|---|
New War's | 青リンゴ | 木更津工業高等専門学校 |
なじみん | k.shima07 | 文教大学 |
MarkdownEditor | Cheer Group for OSS | 長野工業高等専門学校 |
星空投影機 | BOTEKO | 鳥羽商船高等専門学校 |
チーム青リンゴによる「New War's」は、Windows 8のタッチ操作で戦う2人対戦のゲームである。「重力場」が設定されたフィールドで、互いの陣地から「玉」を打ち出し、相手の攻撃拠点をすべて撃破した方が勝利するというルールだ。
自陣から打ち出した玉は、フィールド上の重力場に引き寄せられてしまうため、敵陣を真っすぐに狙っても思い通りに攻撃はできない。重力場の数や配置によってステージを増していくことができるため、今後のバリエーションにも期待ができる。
k.shima07氏による「なじみん」は「みんなで作るキャラとの対話アプリ」と銘打たれた、一風変わったマスコットアプリだ。キーボードから質問を入力すると、画面上に表示されている「なじみん」が答えてくれるというシンプルなものだが、「みんなで作る」という点がポイントになっている。
環境がオフラインの際には、ローカルにある返答しか返ってこないのだが、オンラインの場合は、返答がネット上の会話データベースから選択される。もし、自分の入力した問いに対する納得いく返答が存在しなければ、ユーザーが自ら返答を作り、データベースに登録することもできる。多くのユーザーが「会話」のパターンを登録していくことで、「なじみん」の会話のバリエーションが増えていくという仕組みだ。
また、話し掛ける時間や、ユーザーがこれまでに話しかけた回数に応じて、同じ質問に対しても違うリアクションをするアルゴリズムなどもあるという。
ゲームやエンターテインメント分野のアプリが多い中、Cheer Group for OSS(谷口慈行氏)の手による「MarkdownEditor」は、ソフトウェア開発者をターゲットとした実用ツールという点で異彩を放っていた。
同ツールの開発動機として、谷口氏は「OSSを中心としたソフトウェア開発の分野で、その発展をドライブするのは活発なコミュニティ活動。コミュニティ活動においては、ソースコードを中心としたコミュニケーションが円滑に行われることが重要。OSSの世界では、そのサポートのためのツールとしてMarkdown記法が多く使われているが、WindowsのWordやPowerPointなどでは、それを素早くハンドリングできない。そのため、Windowsストアアプリとしてそうしたツールを作ってみたいと考えた」という。
MarkdownEditorでは、ソースコードを含むテキストを編集し、部分的なハイライト表示や、プレゼンテーションを行う機能などを備える。現在、GitHubを対象としたパブリッシュが可能になっているが、今後はブログサービスなどとも連携できるようにしていきたいという。
鳥羽商船高等専門学校のチーム「BOTEKO」による「星空投影機」は、Windowsタブレットとハンドメイドの「投影機」を組み合わせて、部屋などの天井に「星空」を映し出せるエンターテインメントアプリだ。
投影機は、ダンボールとディスカウントショップなどで売られている「虫眼鏡」を組み合わせて、好みの外観のものを「手作り」する。Windowsタブレット側で動くアプリは、自動的に回転する「星空」を表示する機能と、好きな音楽を流すことができるプレイヤーの機能を兼ね備えている。真っ暗な部屋の中で、投影機の中にタブレットを置くと、天井に映る動く星空と、音楽を同時に楽しめるという仕掛けだ。
「投影機を作る」という作業からをユーザー体験の一部ととらえることもできる点でユニークな作品だ。
全チームのプレゼンテーションが終わった後、審査員による最終審査、来場者による投票を経て、各部門の最優秀賞が発表された。
競技部門の最優秀賞は、Project Nの「Knowall Library 5.0」。Windows 8チャレンジ部門の最優秀賞は青リンゴの「New War's」に決定した。Project Nには、世界大会への出場権と副賞30万円が、青リンゴには「Microsoft Surface」が、それぞれ進呈された。
審査員による講評では、最終審査に残った各作品のレベルとプレゼンテーションの質の高さを評価するとともに、これを切っ掛けにして今後も作品を作っていってほしいとの要望が多く述べられた。
「作品を1度形にしたことで、改善点も多く見えてきたと思う。これで終わらせてしまわずに、このコンテストで得たことを生かし、今後も作品を作り続けていってほしい」(池尻氏)
「自分が作りたいものを作るのは楽しく、さらに、それを使った人が笑顔になってくれることが技術者にとって最大の喜び。今回のコンテストをきっかけに、その先へと進んでいってほしい」(稲見氏)
「プレゼンテーションも作品もレベルが高いと感じた。ここから、その実力をさらに伸ばしていって、(Project Nには)世界大会でもぜひ優勝してほしい」(新氏)
「楽しく審査をさせてもらった。ただ、これだけ多くの参加者がいる中で、まだ女性の比率が少ないようにも感じた。男性の開発者は、ぜひ女性にも声を掛けて、一緒に開発を行ってほしい。さまざまな視点が入ったプロダクトが登場すれば、さらに面白くなってくると思う」(矢野氏)
総括として加治佐氏は「競技部門で最優秀賞をとったProject Nは、技術的にも、動機、熱意、蓄積の面でも、他から大きく抜きんでているというのが審査員共通の評価だった」と述べ、世界大会におけるProject Nの活躍に対して期待を述べた。
Project Nでは、今後日本マイクロソフトのサポートを受けつつ、7月にロシアで開催される世界大会出場に向け、「Knowall Library」とプレゼンテーションの洗練を進めていく。
世界大会では、Project Nに加え、世界大会に直接エントリーした日本チームからも複数の本戦参加者が出る可能性がある。彼らの健闘に期待したい。
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