実際の転職事例をご紹介しましょう。大手ソーシャル企業のE社に転職することになった2人のITエンジニアの例です。
大手ソーシャルプラットフォーマーのE社は、自社の展開するプラットフォームを軸に、事業を大きく成長させている企業です。Webエンジニアを含めて幅広く人を求めていました。特にE社が重視していたのが、技術力やポテンシャルに加え、「自社の考え方に共感する人であるか」でした。その「考え方」の1つに、「品質や開発手法、ナレッジ化を意識してものづくりができること」がありました。
所属 | ソーシャルゲーム開発ベンチャー |
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専門分野 | ソーシャルゲーム開発におけるプログラマ サーバサイドからフロントまで幅広く担当 |
得意領域 | PHP/Linux |
F氏は、急成長するソーシャルゲームベンチャーでゲーム開発を担当していました。しかし、とにかく回転を上げて作っては出していくことを繰り返す自社の手法に、少しずつ疑問を抱くようになっていました。
もともとゲーム開発自体を目的としていたわけではなく、成長する分野でスキルアップを図りたいとの考えで同社に参画したF氏には、「品質をあまり意識せず、数重視で勝負しているような自社のやり方を改善できないか」という思いがあったのです。
ただ、現実には作ればどんどん売れ、業績は好調に推移していく状況です。流れに逆らって現状を変えることはなかなか難しく、意図していたようなスキルアップもしづらいと感じていました。
そんなF氏が新たなステージに踏み出したのは、大手ソーシャルプラットフォーマーであるE社が、品質をより意識した開発を進めていると知ったときでした。
F氏は、激化する競争の中でも順調に拡大を続けている企業が、一体どのような考え方でプロダクトを生み出しているのかに興味を持っていました。そこで、業界をリードし拡大を続けているE社の担当者と会い、その考え方を聞いてみることにしたのです。
面談の中で、F氏はE社の品質に対する考え方や開発手法に対する知見、ナレッジをいかに共有して会社としてレベルアップを図っていくかという考え方に深く共感しました。同時にE社の担当者も、F氏の品質に対する高い意識、現状を改善したいとの意気込みに感銘を受けたのです。
F氏は、「品質を意識したものづくりをする」という考え方を全社で共有し、スピード感を持って事業展開しているE社にぜひ加わりたいと考え、E社も、F氏のような考え方を持っている方にぜひ自社に来てほしいと考えました。結果、双方が納得の上で採用、転職に至りました。
次に、同じくE社に転職することになった、G氏の事例を紹介します。
所属 | 製造業系システムインテグレータ(SIer) |
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専門分野 | メーカー向け基幹業務システムの開発(Java) 自発的な品質向上のための業務改善(バグ削減、開発コスト削減の実績あり) プライベートでのWebアプリ開発、勉強会参加などの活動を行う |
得意領域 | 品質を意識した開発 新しい技術や品質管理手法の提案、実践 |
伝統のあるSIerに在籍していたG氏は、基幹業務システムの開発に携わりつつ、品質向上の重要性を意識し、自発的に業務改善をしたり品質管理の手法を提案したりしていました。
G氏は、現職含めてソフトウェア開発全体でQAが低く扱われていると感じており、「プログラマはビジネス価値まで理解する必要があるといわれるが、それと同じようにQAも理解する必要がある」との思いを持っていました。今後は、よりQAが重視されるようなサービス開発を行い、啓発とビジネス価値への貢献をしたいと考えていました。
そんなG氏が興味を持ったのが、前出のソーシャルプラットフォーマーE社でした。同社はこれまで低く見られがちだったQAを重視して専門チームを立ち上げ、高い技術力を集結させていました。プロダクトのテストはもちろん、ソースコードから検証を行っており、グローバル大手のWebサービス企業のコアエンジニアも同社のチームに参画していました。
今後もより品質を意識したプロダクト作りを進めるため、QAチームの強化と全社への意識付けを強化していたE社は、G氏の考え方とスキルを高く評価し、QAチームに迎えることを決めたのです。
最近のソーシャルゲームは、ユーザーの目が肥えてきたこともあり、より高いクオリティが求められていると思います。ネイティブ技術で表現するか、Webアプリとして提供するか、そこで求められる技術は何か、などの要素が当然議論の中心にはなってきます。HTML5/JavaScript/CSS3といった技術で高い表現力を実現したアプリもあれば、例えばパズドラのようにフルネイティブで作られたアプリもあるなど、企業内でも専門部隊に分かれて開発を進めているようです。
一方で、その品質をいかに高め、維持するかという点も重要視されてきています。アジャイル開発やテスト駆動開発といった手法や自動化、ナレッジ化して共有することで、各社は一定レベル以上のプロダクトを生み出せる体勢を組もうとしています。
この流れを受けて、採用の現場では、たとえポジションがQAエンジニアではなくWebエンジニアやスマートフォンアプリエンジニアであったとしても、前述のような開発手法やテストの重要性を理解していることが求められています。それらを実務で取り入れているITエンジニアは、企業に「この人が欲しい」と思われるのではないでしょうか。
単に「ひたすら作ります」というITエンジニアは求められなくなっています。最近の傾向である海外開発拠点の立ち上げなどを見ても、国内のITエンジニアには、ただ作るだけではない付加価値が求められていると感じます。
品質を意識したレベルの高いものづくりに携わりたいと考えている方は、ソーシャル業界で、面白い業務に携われるのではないかと思います。
ソーシャル業界でのITエンジニアの高い需要は、まだまだ継続するでしょう。ただし、ここで述べてきたように、求められるものは変化しています。今後ソーシャル業界に入ってみたい方は、意識してみてはいかがでしょうか。
テクノブレーン
福村志郎
IT業界および製造業界のエンジニアを主とした人材サーチ会社にて、候補者のリサーチとキャリアコンサルティングに従事。関西地方の製造業向けサーチ、スカウトを担当した後、現在は関東地方、九州地方のWebサービス会社やITコンサルティング会社向けのスカウト、キャリアコンサルティング活動を行っている。
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