ユーザーの「ニーズを把握する」ための「デザイン調査」。いったい、誰に何をどのように聞けばよいのでしょうか。
この連載では、「優れたUX」はどのように実現すれば良いのか、ソフトウェア開発現場のシーンを切り出し、4コマ漫画形式(漫画作成ソフト「コミPO!(コミポ)」を使用)で紹介しています。
初回の「もし新人女子営業が『UXデザイン入門』を読んだら」で、新人女子営業の服好舞さんが『UXデザイン』を実践してコンペに勝ちました。2回目(『UXデザイン』にプロセスって必要ですか?)では、UXデザインを実践する5つのステップ「1. デザイン調査」「2. ユーザーモデリング」「3. ストーリーボード」「4. スケッチ、プロトタイプ」「5. ユーザビリティテスト」を通してUXデザインの全体像を把握しました。
今回は、『UXデザイン』を実施する5つのステップの最初となる「1. デザイン調査」についてお話しします。まずは、利用者のニーズを把握しましょう。
「ニーズを把握する」といっても、誰に何をどのように聞けばよいのでしょうか。舞さんはまず、身近な友人にインタビューすることから始めました。ここで、「どんなお天気アプリがほしい?」とスマホアプリを前提とした質問をしていたらどうでしょう。
舞さんは友達に、スマホアプリを前提として「どんなお天気アプリがほしい?」聞いたのではなく、「お天気で気になること教えて?」と聞きました。スマホアプリを前提としてしまうと、既存のお天気アプリが頭に浮かび、「週間天気予報が見たい」とか「翌日の降水確率を知りたい」のような、気象情報をどのように見るかのバリエーションは出てきそうです。しかし、舞さんは「お天気で気になること教えて?」と、お天気と生活とのかかわりを広くとらえた質問をすることで、気象情報から派生する行動(この例では翌日の服装の選択)を抽出することができました。
もともと、「翌日の服装の選択」は日常生活で行っているので、「服のコーディネート支援」に関するニーズもあると考えられますが、それにプラスして、「お天気に合わせた服装の選択」が、舞さんが企画するスマホアプリのコンセプトとして浮かび上がってきたのです。早速友人にコンセプトを説明すると、「それいいかも!」とコンセプトを一言で説明しただけで共感が得られ、潜在的なニーズがあったことが分かります。
このような短期間でとんとん拍子に進むことはまれかもしれませんが、オフィスであれこれ悩むより、まず周りの人に聞いてみることで、コンセプトのヒントになる情報が得られるのではないでしょうか。いずれにしても、利用者のニーズを把握することはとても重要なので、企画・開発の初期段階で行っておくべきです。
今回は、「1. デザイン調査」についてお話ししました。次回は「2. ユーザーモデリング」についてです。お楽しみに。
著者プロフィール
金山豊浩(かなやま とよひろ)
ミツエーリンクス UXエバンジェリスト [2011年〜]
UXを啓蒙するため、執筆・講演・研究などの活動に従事。
最近特にUXデザインワークショップ開催の実施に注力している。
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