ユーザー体験を絵コンテのように表現しよう。ペルソナの言葉と表情を使って、理想的なユーザー体験に関する一連のストーリーを作成しよう。
この連載では、「優れたUX」はどのように実現すれば良いのか、ソフトウェア開発現場のシーンを切り出し、4コマ漫画形式(漫画作成ソフト「コミPO!(コミポ)」を使用)で紹介しています。
初回の「もし新人女子営業が『UXデザイン入門』を読んだら」 で、新人女子営業の服好舞さんが『UXデザイン』を実践してソフトウェア開発の社内コンペに勝つまでをご紹介しました。2回目「『UXデザイン』にプロセスって必要ですか?」では、UXデザインを実践する5つのステップ「1. デザイン調査」「2. ユーザーモデリング」「3. ストーリーボード」「4. スケッチ、プロトタイプ」「5. ユーザビリティテスト」を通してUXデザインの全体像を把握しました。
3回目「ユーザーニーズって、誰に何をどうやって聞けばいいの?」は、『UXデザイン』を実施する5つのステップの最初となる「1. デザイン調査」で、利用者のニーズを把握するための質問について考え、4回目「想定するユーザーを「ペルソナ」としてモデリングする」では、調査結果から利用対象者を「ペルソナ」としてモデル化して共有する「2. ユーザーモデリング」について説明しました。
5回目となる今回は、理想的なユーザー体験を絵コンテのように表現する「3. ストーリーボード」についてお話しします。4回目までは現状(As Is)の把握でしたが、ここからはあるべき姿(To Be)を描いていくことになります。
ユーザーモデリングを用いて作成されたペルソナと行動シナリオに沿って、ペルソナの理想的な体験に関する一連のストーリーを絵コンテのように表現したのが「ストーリーボード」です。登場人物や場面などを絵で表す場合もありますが、書籍『UXデザイン入門』(日経BP社 2012年)のストーリーボードで用いているのはペルソナの言葉と表情(簡単な顔文字の表現)だけです。これなら特別なスキルがなくても簡単に表現することができます。
ストーリーボードは、ペルソナの視点と言葉で書いていきます。ここで重要なのが、利用する製品・サービスのデザインには触れないことです。あくまでもペルソナの体験にフォーカスして、どのような体験をしたくて、どのような感情を持つか、利用者側の視点で記述することが肝要です。
例えば、天気deコーデのアプリ開発では、ペルソナ(花子)は「『天気deコーデ』で明日の天気を確認」し、「『明日はいきなり寒くなるのね』と考える」ことをストーリーボードで表現します(マンガ2コマ目)。ここで「花子は『天気deコーデ』で明日の天気を確認するために、日付とエリア入力を行う」といった製品の具体的なデザインに触れた記述は行わない、というわけです。開発者はつい、アプリがどのように動くか、どのように作るかを考えてしまいがちですが、利用者に優れたUX(利用体験)を提供できるかどうかは、利用者視点で考えられるかどうかにかかっています。
今回は、「3. ストーリーボード」についてお話ししました。次回は「4. スケッチ、プロトタイプ」についてです。お楽しみに。
著者プロフィール
金山豊浩(かなやま とよひろ)
ミツエーリンクス UXエバンジェリスト [2011年〜]
UXを啓蒙するため、執筆・講演・研究などの活動に従事。
最近特にUXデザインワークショップ開催の実施に注力している。
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