ちょっとまじめな話もしておきましょう。北米在住でMongoDBを開発している10genと戦略的提携を結んでいる鈴木逸平氏(写真)が、米国における最新MongoDB事情を解説しました。日本在住の筆者から見るとMongoDBはNoSQLデータベースの中では一定の地位を確立し、普及しているというイメージでした。ところが、米国では日本よりはるかに浸透しているというのです。
いまやMongoDBの累計ダウンロード数は400万を突破しているそうです。米国では特にユーザーコミュニティ活動が活発だそうで、地域別ユーザーコミュニティが約30ほどあり、中でもカリフォルニア州には5つもユーザーグループがあります。こうしたユーザーグループをベースにオフ会や勉強会のようなイベントが開催され、情報交換や交流が進んでいます。
鈴木氏は直近のGoogleトレンドで見るとNoSQLデータベースのなかでMongoDBがダントツのトップだと指摘します。また、SNSサービス「LinkedIn」ではデータベースエンジニアが「スキルと専門知識」欄に記入するものの中で、NoSQLではMongoDBが最多だそうです。このことから、アメリカではMongoDBのスキルを持つとアピールする人が多いということになりますね。
では、米国でMongoDBのエンジニアが飽和しているかというとそうでもなさそうです。求人サイト「Indeed.com」では、ITエンジニアに求められるスキルトップがHTML5、その次にMongoDBが来るのだとか。ちなみに3位はiOS。にわかには信じがたいほどですが、アメリカではかなりMongoDBがブレイクしている模様です。
実際に採用事例が続々と増えています。地域情報コミュニティサイト「Craigslist」、位置情報に特化したSNS「foursquare」、「MTV Networks」がコンテンツ管理に採用するなど。最近では大手の採用発表が続いています。例えば、保険のMetLifeがカスタマーサービス向けアプリケーションのエンジンとしてMongoDBを採用、また投資銀行ゴールドマン・サックスが従業員向け文書管理にMongoDBとApacheを採用するなど。
6月には米IBMが10genと「BSON」標準化で提携するとのニュースもありました(関連記事)。大手での事例が増えていることとIBMと10genの急接近は無関係ではなさそうです。
MongoDBを採用したとあるユーザー企業はMongoDBを「ファイルシステムとRDBのスイートスポット」と表現したそうです。いい意味で中間的な存在なのでしょう。MongoDBはNoSQLでありつつもインデックスをサポートしており、JOIN処理はできないもののRDBに近いこともできます。つまり、データ構造が適度にしっかりしつつ、さほど制限がないため、ちょうどいい「スイートスポット」にいるのかもしれません。
ほかにもMongoDBが評価されるポイントとして鈴木氏は「スケーラビリティ、セキュリティモデル、データ構造、それなりに性能が出せる、開発者から見た使い勝手、10genのサポートがあること」などを挙げていました。
米国で快進撃といえる勢いを見せるMongoDB。この勢いはいずれ日本にも来るかもしれません。
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