NECは、ITとネットワークにおける長年の実績を生かして、いち早くSDNの実用製品を市場に投入している。
2013年5月29日、最新のクラウド基盤ソフトウェア「WebSAM vDC Automation Ver.2.0」を発表。OpenFlow対応コントローラ「UNIVERGE PF6800」を組み合わせて運用を自動化し、商用クラウド基盤でOpenFlowベースのSDNを実現することを発表した。続いて6月10日、UNIVERGE PFシリーズが最新のOpenFlow 1.3に対応したことを発表している。
6月に幕張メッセで開催されたInterop Tokyo 2013では、WebSAM vDC AutomationはBest of Show Award People's Choice部門(プロダクト部門)でグランプリを、UNIVERGE PFシリーズは同準グランプリを受賞するなど、来場者から先進性と将来性を大いに期待された。
夢から現実のソリューションへ
http://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/1307/05/news108.html
OpenFlow 1.3.1の相互接続検証ネットワーク上で実アクセスを提供
http://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/1306/14/news047.html
NECのソリューションは、すでに多くの導入事例を持ち、データセンターのみならず一般の企業ネットワークにおいてもSDNの利点が活用されている。その1つが、金沢大学附属病院の事例だ。
金沢大学附属病院には、集中治療室や手術室などの医療機器、電子カルテや医事会計など、非常にミッションクリティカルなシステムが多く、すべてがネットワークに接続されている。部門ごとに異なるポリシーを適用する必要があり、ネットワークの分離が複雑になっていたため、これらの運用管理には膨大な費用が掛かっていた。また、新しい医療機器の導入も頻繁で、そのたびに煩雑な設定・工事が発生し、ネットワーク自体も安定的とは言いにくかった。
同院では、新しい新臨床研究棟の建設に当たり、新しいネットワークを導入する必要があり、従来のネットワークの課題を解決するためUNIVERGE PFソリューションを採用することにした。
ハードウェア費用は、旧来のネットワーク技術とほぼ同じにもかかわらず、運用管理や設定変更に関わる人的コストを80%削減できたという。ネットワークの追加・移動・変更を高速に実行できるようになり、新しい医療機器の接続も数分で完了するようになった。また、ネットワークの安定性も大幅に向上したとのことだ。
野口氏によれば、「これまでのNECのSDN事業は、主にデータセンター向けの技術と製品を軸に展開していた。2013年からは製品事業の実績を基に、『NEC SDN Solutions』として本格的なソリューション事業を展開し、企業や通信事業者向けの市場へ拡大していく」という。
NECは、上述したような企業・データセンターネットワークでの導入実績を持つだけでなく、通信ネットワークにおいても、スペインのTelefoniaやポルトガルのPortugalTelecomなどと共同で、SDNの実証実験を行っている。また6月には、イギリスのNECヨーロッパに「SDNテクノロジーアンドマーケティングセンター」を設立し、世界の通信事業者に向けたソリューションの開発・提案やシステム構築・サポートの体制を強化した。同センターでは、ETSI(ISG NFV)などの標準化団体への参画も積極的に行っていくとしている。
NECでは、このように他に先行した製品や事例、技術力・組織力をベースとして、SDNソリューションメニューを確立している。データセンター市場だけでなく、企業や官公庁、通信事業者を含めた適用範囲の広い体系になっているところが特長だ。
「すでに多くのベンダが、『SDN』を冠した製品やソリューションを展開しているが、当社ほど幅広い適用範囲を持ったプレイヤーはほかにない。特に、エンタープライズの領域では、ソリューションとして提供できるのはNECだけだ」(野口氏)
前述したように、ネットワーク事業者向けのSDNソリューションを展開していることは、企業向けソリューションにとっても重要なことだと野口氏は強調する。
「通信ネットワークは、安定性や性能において非常に高いパフォーマンスを求められる。NECは、そのための技術を常に追いかけている。現在は、IPよりも低いレイヤを総合的に制御するトランスポートソリューションの開発にも注力しているが、こうしたキャリア向けの技術はエンタープライズネットワークでも活用できる領域だ」(野口氏)
NECの取り組みを知ると、SDNという技術・コンセプトの適用範囲の広さ、可能性の大きさを認識させられるだけでなく、数々の事例によって有用性も実感させられる。SDNは、もはや“これから期待の新技術”ではなく、既存の課題を解決するためのソリューションとして捉えるべきものである。
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