第1回 Android向けMS純正リモート・デスクトップ・アプリを使いこなすMicrosoft Remote Desktopの基礎と実践

iOS/Androidスマートフォン/タブレット向けに、Microsoftから「純正」のリモート・デスクトップ接続アプリがリリースされた。まずはAndroid版アプリの使いこなし方や使い勝手、注意点について詳しく説明する。

» 2013年12月16日 16時18分 公開
[島田広道デジタルアドバンテージ]
Microsoft Remote Desktopの基礎と実践
Windows Server Insider


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連載目次

 遠隔地(リモート)にあるPCを、あたかも目の前にあるかのように操作できる「リモート・デスクトップ接続」は、Windows OSの数ある機能の中でも特に便利なものだ。例えばサーバの管理や自宅からのリモート作業などで、この機能を常用している読者諸氏もいらっしゃることだろう。

 2013年10月にMicrosoftは、iOS(iPhoneやiPod touch、iPad)とAndroid OS向けにリモート・デスクトップのクライアント・アプリ(以下、RDCアプリ)をリリースした(無償で利用可能)。これを使うと、iOS/Android OSを搭載したスマートフォンやタブレットからWindowsマシンへのリモート・デスクトップ接続が実現できる。これまでも同種のアプリは存在していたが、Microsoftブランドで登場するのはこれが初めてだ。

 本連載では、この「純正」RDCアプリの使い方や使い勝手、注意点を3回に渡って解説する。第1回となる今回はAndroid版アプリを取り上げる(2013年12月時点で最新のVer. 8.0.3で評価する)。まずは単純なイントラネット上のクライアント/サーバ間の接続に焦点を絞って解説する。重いノートPCを持ち歩かなくても、Androidタブレットで手軽にPC内のデータを参照したり、操作できたりするので便利である。第2回ではiOS版リモート・デスクトップ・クライアント・アプリの使い方を、最終回ではインターネット経由での接続方法について解説する。

Microsoft製のAndroid版リモート・デスクトップ・クライアント・アプリ Microsoft製のAndroid版リモート・デスクトップ・クライアント・アプリ
これはNexus 7(2012年版)からWindows 8.1のリモートPCに接続し、デスクトップを開いたところ。画面は小さくてもWindowsのデスクトップをまるまる表示できる。

Android向けRDCアプリから接続できるWindowsマシンの種類については、後述のコラム「リモート・デスクトップのサーバとして接続可能なWindows OS」にまとめた。


Android版リモート・デスクトップ・クライアント・アプリのインストール

 Android版リモート・デスクトップ・クライアントのアプリケーションは、以下のGoogle Playストアのページから無償でインストールできる。

 インストール完了後、[RD Client]というアイコンがホーム画面に作成されるのでタップしてアプリを起動すると、「コネクション・センター」と呼ばれる接続先コンピュータの一覧画面が表示される。UIはすべて英語表記だ(リモート・デスクトップの日本語は正常に表示される)。

Android版RDCアプリの初期画面 Android版RDCアプリの初期画面
起動すると、登録した接続先PCの一覧(コネクション・センター)が表示される(もちろん、初めて起動したときには何も登録されていない)。
  (1)まず、これを選ぶ。
  (2)これをタップして接続先のコンピュータを登録する。→[A]
  (3)RemoteAppを利用する場合はこれをタップする。
  (4)リモート・デスクトップ・ゲートウェイを利用する場合は、これをタップする(詳細は最終回を参照)。
  (5)いったん「信頼」した接続先コンピュータや証明書を確認したり削除したりするには、これらをタップする(「信頼」については「リモート・デスクトップ接続の開始と終了」で説明する)。

リモート・デスクトップの接続先コンピュータの登録

 さっそく接続先のWindowsマシンを登録してみよう。画面右上にある[+]アイコンをタップすると接続先の登録画面が現れるので、[PC Name]に接続先のコンピュータ名またはFQDN、IPアドレスのいずれかを指定する。また[CREDENTIALS]の[User name][Password]にはログオン・アカウントとそのパスワード(資格情報)を指定する。

[A]

接続先コンピュータを登録する画面 接続先コンピュータを登録する画面
リモートPCに接続するために必要な情報を記入する。これは接続先コンピュータごとに行う必要がある。最低限(2)だけは設定すること。
  (1)この接続先に付ける名称を指定する。
  (2)接続先コンピュータのコンピュータ名またはFQDN、IPアドレスのいずれかを指定する。RDアプリ Ver. 8.0.3から「PC01」のようなコンピュータ名でも接続できるようになった。コンピュータ名での接続に失敗する場合のみ、FQDNかIPアドレスを指定すればよいだろう。
  (3)リモート・デスクトップ・ゲートウェイを設定する項目。イントラネット上では特に設定する必要はない(詳細は最終回を参照)。
  (4)ログオン・アカウント名とそのパスワードを指定する。UPN形式(<ユーザー名>@<ドメイン名>)やMicrosoftアカウント(メール・アドレス形式)、「<ドメイン名>(ワークグループ構成の場合は<コンピュータ名>)\<ユーザー名>」形式で指定できる。最後の形式では、区切り文字は「\」(半角バックスラッシュ)を記入すること。「¥」(半角円マーク)だと接続に失敗する。アカウントは1つ指定するたびに、もう1つ入力可能な空欄がその下に現れる。通常は1つ指定しておけばよい。
  (5)これをタップすると設定が保存され、コネクション・センターに戻る。
  (6)コンソール・セッションに接続したり、端末のSDカードをリモート・コンピュータからアクセス可能にしたりする場合には、これをタップして設定する。

 RDアプリ Ver. 8.0.3からNetBIOSによる名前解決に対応したため、Windows OSと同じ感覚で[PC Name]に「PC01」といったコンピュータ名を指定して接続できるようになった。コンピュータ名での接続に失敗する場合のみ、「pc01.example.jp」のようなFQDNかIPアドレスを指定すればよいだろう。IPアドレスの調べ方については関連記事を参照していただきたい。

 [User name]には、UPN形式(<ユーザー名>@<ドメイン名>)やMicrosoftアカウント(メール・アドレス形式)、「<ドメイン名>(ワークグループ構成の場合は<コンピュータ名>)\<ユーザー名>」形式で指定できる。このうち最後の形式の場合、<ユーザー名>の直前の区切り文字として「¥」(半角円マーク)を指定すると、認証に失敗してしまう。必ず「\」(半角バックスラッシュ)を記入すること。「\」はソフトウェア・キーボードで記号入力モードを選ぶと入力できる。

リモート・デスクトップ接続の開始と終了

 入力を終えて右上の[DONE]をタップすると、指定したコンピュータが接続先一覧に登録されたはずだ。その名前の部分をタップすると即座にリモート・デスクトップ接続が始まる(もちろん、事前に端末を接続先コンピュータに到達できる無線LANに接続しておくこと)。接続先コンピュータのセットアップについてはコラム「リモート・デスクトップのサーバとして接続可能なWindows OS」を参照していただきたい。

登録した接続先コンピュータへの接続を始める 登録した接続先コンピュータへの接続を始める
これは2台のPCの接続設定を登録した後のコネクション・センター画面。
  (1)この部分をタップすると、対象のコンピュータへの接続がすぐ始まる(→[B]へ)。タップして長押しすると、この接続先を削除したり複製を作ったり、お気に入り(Favorites)に登録したりできる。
  (2)接続設定を変更するにはこれをタップする。
  (3)ここをタップすると、(4)のように接続時のログオン・アカウントの選択肢が現れる。
  (4)[No credentials]をタップすると接続が始まり、手動でログオン・アカウントを指定できる。その右隣は登録済みのログオン・アカウントで、それぞれタップすると各アカウントでの接続を開始できる。

 すると、Windowsからリモート・デスクトップに接続しようとしたときと同様に、証明書のエラーが発生することがよくある(この原因と対策の詳細は、TIPS「リモート・デスクトップ接続のサーバに『正しい』証明書を割り当てる」参照)。接続するには[Trust Once][Trust Always]のいずれかをタップする(後者をタップすると、以後この接続先に対して同じ警告は現れなくなる)。なお、この段階から表示の向きが横長(ランドスケープ)になる。

[B]

サーバ証明書を確認するためのダイアログ サーバ証明書を確認するためのダイアログ
リモート・デスクトップ接続の際には、このように接続先コンピュータの証明書を信頼できないという警告ダイアログが表示されることがよくある
  (1)これをタップすると、接続せずに元の画面に戻る。
  (2)これをタップするとリモート・デスクトップの表示に進む。次回の接続時にも同じダイアログが表示される。→[C]
  (3)これをタップするとリモート・デスクトップの表示に進む。(2)と違って対象コンピュータを永続的に「信頼」したことになり、以後の接続時には同じダイアログが現れなくなる。→[C]

 接続とログオン(ユーザー認証)に成功すると、接続先コンピュータのデスクトップ画面が現れる。

[C]

接続中のリモート・デスクトップの画面 接続中のリモート・デスクトップの画面
これはWindows 8.1で稼働しているリモートPCに接続して、デスクトップを表示させたところ。
  (1)「コネクション・バー」と呼ばれるバー。ドラッグすることで横方向に移動できる。
  (2)タップすると拡大表示のオン/オフが切り替わる。→[D]
  (3)この名前(とその周囲)をタップすると、「ユーティリティ・バー」と呼ばれる[Ctrl]キーや[Alt]キー、[Windows]キーといった特殊なキーを押すためのバーが表示される。→[E]
  (4)タップするとソフトウェア・キーボードの表示をオン/オフできる。→[E]
  (5)リモート・デスクトップ接続を切断するには、このアイコンをタップすると「Press back once more to disconnect.」と表示されるので、すぐにもう1回タップする。

 リモート・デスクトップ接続を切断するには、画面下端の[戻る]アイコンをタップし、「Press back once more to disconnect.」と表示されたらもう1回タップする。

画面解像度は変更できないが拡大表示は可能

 リモート・デスクトップの解像度は、接続先コンピュータによらず、接続元の端末によって一意に決まり、変更はできないようだ。いくつかのAndroid端末での解像度を以下に記す。

製品名 LCDの実解像度 リモート・デスクトップ接続時の解像度
Nexus 7(2013年版) 1920×1200ドット 1920×1104ドット
Nexus 7(2012年版) 1280×800ドット 1368×767ドット
Xperia Acro HD IS12S 1280×720ドット 1368×770ドット
Galaxy SII SC-02C 800×400ドット 1280×768ドット
スマートフォン/タブレットの実解像度とリモート・デスクトップの解像度との関係
4種類の端末でRDCアプリを実行して調べてみたが、リモート・デスクトップの解像度は端末のLCDの実解像度によって決まり、変更はできないようだ。なお、リモートPCのWindows OSを変えても解像度に変わりはなかった。

 LCDのサイズが小さいわりに解像度が高い端末では文字が小さくなりすぎて、拡大しないと正直にいって見にくい。

 その拡大表示だが、2種類あるマウスの操作モード(詳細は後述)によって挙動が異なる。デフォルトの「ダイレクト・タッチ・モード」では、前述のコネクション・バー左端にあるアイコンをタップするたびに、拡大表示と通常表示が切り替わる(拡大率は固定であり、変更できない)。拡大したときにはパン・コントロールと呼ばれる円形のアイコンが表示され、これをタップして動かすことで拡大表示される範囲をデスクトップ上で移動できる。

[D]

拡大表示したときのリモート・デスクトップ画面(ダイレクト・タッチ・モード時) 拡大表示したときのリモート・デスクトップ画面(ダイレクト・タッチ・モード時)
デフォルトのマウス操作モード「ダイレクト・タッチ・モード」(後述)の場合、拡大率は固定であり、自由には変更できない。そのため端末によっては表示範囲が狭くなりすぎて、それを移動するのに何回もフリックが必要で使いにくいこともある。
  (1)これをタップするたびに拡大表示と通常表示が切り替わる。拡大時には(2)が表示される。
  (2)パン・コントロール・アイコン。タップしてドラッグすることで拡大表示の範囲をデスクトップ上で移動できる。このアイコン自体を移動するにはダブル・タップしてそのままドラッグする。

 一方、マウス操作モードを「マウス・ポインタ・モード」に切り替えると、ピンチ操作でリニアに画面の拡大/縮小ができる。これは2013年11月にリリースされたRDCアプリ Ver. 8.0.2の新機能で、ダイレクト・タッチ・モードと比べて拡大位置や拡大率を自由に操作できて便利だ。マウス操作モードは以下の画面のように切り替えられる。

マウス操作モードの切り替え マウス操作モードの切り替え
  (1)この部分をタップすると、(2)を含むバーが表示される。
  (2)今のモードがダイレクト・タッチ・モードであることを表しているアイコン(リモートPCのOSがWindows 8以降の場合)。タップするとマウス・ポインタ・モードに切り替わる。
  (3)今のモードがマウス・ポインタ・モードであることを表しているアイコン。タップするとダイレクト・タッチ・モードに切り替わる。
  (4)これもダイレクト・タッチ・モードを表すアイコンだが、リモートPCのOSがWindows 8より前のバージョンの場合、このように表示される。

■約2倍に拡大したときの画面

拡大表示したときのリモート・デスクトップ画面(マウス・ポインタ・モード時)

■さらに拡大したときの画面

拡大表示したときのリモート・デスクトップ画面(マウス・ポインタ・モード時) 拡大表示したときのリモート・デスクトップ画面(マウス・ポインタ・モード時)
マウス操作モードを「マウス・ポインタ・モード」にすると、ピンチ操作で素早くリニアに拡大/縮小ができる(自由に拡大率を決められる)。そのため、小さな文字を読むときは拡大し、表示範囲を移動したいときは縮小する、といったことが簡単にできて便利だ。表示範囲を移動するには、1本指でタップしたままドラッグしてマウス・カーソルを移動させる。

マウス操作はタッチでエミュレート

 マウスを装備していないほとんどのスマートフォン/タブレットでは、リモート・コンピュータのGUI操作にマウスが使えない。そこでAndroid版RDCアプリでは、タッチ操作でマウス操作の代替ができる。その代替操作には「ダイレクト・タッチ・モード」と「マウス・ポインタ・モード」という2種類のモードが用意されていて、用途に応じて選択できる。前者はタッチしたところにあるもの(アイコンやウィンドウなど)を直接操作できるのに対し、後者では画面にマウス・カーソルが表示され、それをタッチ操作でコントロールする。

マウス操作 ダイレクト・タッチ・モードでの操作方法 マウス・ポインタ・モードでの操作方法
マウス・カーソルの移動 (カーソルを移動したいところをタップ) 1本指でタップしたままドラッグ
左クリック 1本指でタップ マウス・カーソルを対象に乗せてから、1本指でタップ
左ダブル・クリック 1本指で2回続けてタップ マウス・カーソルを対象に乗せてから、1本指で2回続けてタップ
左クリックしてドラッグ 1本指でタップしたままドラッグ マウス・カーソルを対象に乗せてから、1本指で2回続けてタップして、そのままドラッグ
右クリック 1本指でタップしたまま長押し(ロング・タップ)し、四角いマークが表示されたら離す マウス・カーソルを対象に乗せてから、2本指でタップ
右クリックしてドラッグ 1本指でタップしたまま長押し(ロング・タップ)してからドラッグ マウス・カーソルを対象に乗せてから、2本指で2回続けてタップして、そのままドラッグ
マウス・ホイールによるスクロール (対応する操作はない。スクロール・バーをタップしてドラッグする必要がある)*1 2本指でタップして、そのまま上下にドラッグ(水平スクロールは不可)
Windowsのマウス操作に対応するタッチ操作
「ダイレクト・タッチ・モード」はタッチしたところにあるもの(アイコンやウィンドウなど)を直接操作できる。「マウス・ポインタ・モード」では画面にマウス・カーソルが表示され、それをタッチ操作でコントロールする。

*1 リモートPCのOSがWindows 8以降の場合、ウィンドウをタップして上下にスワイプするとスクロールできる。これに限らず、ダイレクト・タッチ・モードではローカルのAndroid端末でWindows 8のタッチ操作をすると、そのままリモートのWindows 8を操作できる。

 ウィンドウやアイコンを操作するには、ダイレクト・タッチ・モードの方が直感的に操作できて簡単だ。一方、画面の拡大/縮小は前述のとおり、マウス・ポインタ・モードの方がリニアに拡大率をコントロールできて便利だ。このように両方とも一長一短なので、状況に応じて使い分けるのがよさそうだ。

 特筆すべきは、リモートPCのOSがWindows 8以降の場合、Windows 8のタッチ操作が利用できることだ。例えばローカルのAndroid端末で画面外の右端から画面中央に向けてスワイプすると、リモートのWindows 8ではチャーム・バーが表示される、といった具合だ(ダイレクト・タッチ・モードを選択する必要がある)。まるでAndroid端末がWindows 8タブレットに変身したかのような操作感を味わえる(もちろん、本物のWindows 8タブレットに比べれば、リモート操作の分だけタッチに対する画面の応答は遅れてしまうが)。

Windows 8以降に接続すると、Windows 8のタッチ操作がそのまま使える Windows 8以降に接続すると、Windows 8のタッチ操作がそのまま使える
これはWindows 8.1に接続してから、画面外の右端から真ん中にスワイプしてチャーム・バーと日時を表示させたところ。Android端末にもかかわらずWindowsタブレットのように勘違いしそうな操作感である。

キー入力では複数のソフトウェア・キーボードを使い分ける

 マウス操作ほどではないが、キー入力についても使い方に気を付ける点がある。

 物理キーボードを持たないスマートフォン/タブレットの場合、キー入力には一般的にOSが提供するソフトウェア・キーボードを利用する。しかしAndroid OSの場合、それにはWindows使用時に必要な[Ctrl]キーや[Alt]キー、ファンクション・キー、そして[Windows]キーといった特殊なキーが配置されていない。そこでAndroid版RDCアプリは、独自にこれらのキー入力用UIを別途用意している。ユーザーはこれとOS提供キーボードを併用して、リモート・デスクトップ接続中のキー入力を行う必要がある。

 [Ctrl]キーや[Alt]キー、[Tab]キー、[Windows]キーを使うには、コネクション・バーの真ん中付近をタップしてユーティリティ・バーを表示させる。そこで[Ctrl]を1回タップすると[Ctrl]キーを押し込んだ状態になり、次にOS提供キーボードで[C]キーをタップすると、リモートPCには[Ctrl]+[C]キーの入力が伝わる。

[E]

キーボードその1: OS提供キーボードとユーティリティ・バー キーボードその1: OS提供キーボードとユーティリティ・バー
ソフトウェア・キーボードを表示すると画面が狭くなるため、表示範囲を移動するためのパン・コントロール・アイコンが自動的に現れる。
  (1)コネクション・バーの真ん中付近をタップすると、このユーティリティ・バーが表示される。
  (2)左から[Shift]キー、[Ctrl]キー、[Alt]キー、[Windows]キー、[AltGr](欧州圏でよく実装されているキー。日本語環境では使われない)、タブ・キー。水色で点灯しているランプは、キーを押し込んだままの状態を表している。
  (3)前述のマウス・カーソル操作モードを切り替えるボタン。
  (4)これをタップすると、OS提供キーボードと入れ替わりに、ファンクション・キーやカーソル・キー、テン・キーなどが並んだキーボードが表示される。→[F]
  (5)コネクション・バーの右端のキーボード・アイコンをタップすると、ソフトウェア・キーボードが現れる。ここではOS提供キーボードが表示されている。

 ファンクション・キーやカーソル・キー、テン・キーなどを使うには、ユーティリティ・バーの右端のボタン(上の画面の(4))をタップすると、これらのキーが並んだキーボードがOS提供キーボードと入れ替わる形で現れる。もう一度同じボタンをタップするとOS提供キーボードに切り替わる。

[F]

キーボードその2:ファンクション・キーなどのキーボード+ユーティリティ・バー キーボードその2:ファンクション・キーなどのキーボード+ユーティリティ・バー
ファンクション・キーやカーソル・キー、テン・キー、[Home][End][Esc][Tab][Ins][Del][P↑](Page Up)[P↓](Page Down)の各キーが使える。ただ[Print Screen][Scroll Lock][Pause](Break)の各キーはなく、利用できないようだ(もっとも[Print Screen]キーの機能は、Android端末側のスクリーン・キャプチャ機能で代用できるだろう)。また[Ctrl]+[Alt]+[Del]キーのようなショートカット・キーも利用できるが、リモート・デスクトップ用ではなくローカルWindowsに対応するショートカット・キーを使うこと
  (1)これをタップするとOS提供キーボードに切り替わる。

 日本語の入力については、ローカルのAndroid端末側で日本語に変換してもよいし、リモートPCのIMEで日本語に変換することも可能だったが、通常はAndroid端末側で変換した方が操作しやすいだろう。ただ、筆者が試した限りでは半角カナをAndroid端末側で変換・入力すると、リモートPCでは文字化けしてしまった(Nexus 7(2012年版)+Android OS 4.3.0+Android版RDCアプリ8.0.3の組み合わせで確認した)。このとき、リモートPCのIMEでは正常に変換・入力できたので、使い勝手は落ちるものの本現象の回避は可能だ。

Android版RDCアプリで使える機能・使えない機能

 Windows版クライアントからリモート・デスクトップ接続を常用しているユーザーにとって、Android版ではどれくらい機能が落ちているか気になるところだろう。そこでいくつかの機能について調べてみた。

●サウンドとSDカードはリダイレクトできる

 Android端末のリソースのうち、リダイレクトすなわちリモートPCに接続して利用できるのは、サウンドとSDカードに限られる。サウンドはデフォルトでAndroid端末側で再生される。SDカードの場合、各接続設定の[Advanced]−[Redirect SD Card]にチェックを入れてオンにしてから接続すると、リモートPCのエクスプローラに「localhost の Android システム フォルダー」といった名称のドライブが現れる。これを開くとAndroid端末に装着したSDカード内のファイルにアクセスできる。

●同時に接続できるのは1つの接続先だけ

 試した限りでは、複数のリモートPCに対して同時に接続することはできないようだ。あるPCへ接続中に別のPCへ接続するには、いったん現在の接続を切断しなければならない。

●物理キーボード/マウスにも対応している

 Nexus 7(2012年版)+Android 4.3.0にBluetooth経由で物理マウスを接続してから、RDCアプリ Ver. 8.0.3で接続を試したところ、リモート・デスクトップ上にマウス・カーソルが自動的に現れて、物理マウスで操作できるようになった。

 物理キーボードは、RDCアプリの画面右上隅にあるメニューアイコンをタップして[Settings]−[Hardware keyboard mode]−[Desktop]を選択すると、[Alt]や[Ctrl]といった特殊キーが正しく使えるようになった。日本語の入力も可能だが、スペース・バーの両脇にある[無変換]や[変換]、[カタカナ ひらがな ローマ字]キーによるIMEの制御はできないようだ。それでも前述のソフトウェア・キーボードに比べれば物理キーボードの方がWindows OSでの操作に近く、ずっと使いやすい。

●色数や壁紙などのエクスペリエンスは変更できない

 Android版RDCアプリには、リモートPCのデスクトップを表示する際の色数や壁紙を調整する設定項目がない。例えば壁紙を表示せず、色数も落として表示速度を高めるといったことはできないようだ。

●ビットレート2Mbps程度の動画再生は「視聴できる」

 Nexus 7(2012年版)+Android OS 4.3.0+RDCアプリ Ver. 8.0.3で試した限りでは、Windows 8.1のリモートPCでビットレート2Mbps(852×480ドット/30fps/MPEG-4エンコード)の動画を再生したとき、多少のコマ落ちはあれど、内容を理解できるレベルで視聴できた。もちろん、Android端末の描画性能や回線速度によっては、これよりビットレートの低い動画でも見るに堪えないコマ落ちが生じることもあるだろう。ただ、少なくとも本アプリではリモートでの動画再生を実用的に閲覧できる機能を有しているとはいえる。

【コラム】リモート・デスクトップのサーバとして接続可能なWindows OS

 リリースされたMicrosoft製RDCアプリから接続可能なWindows OSの一覧を以下に記す。といっても、Windowsクライアントから接続可能なWindows OSと共通である。

接続できるWindows OS 接続できないWindows OS
Windows XP Professional/Tablet/Media Center Windows XP Home
Windows Vista Business/Ultimate/Enterprise Windows Vista Home Basic/Home Premium
Windows 7 Professional/Ultimate/Enterprise Windows 7 Starter/Home Premium
Windows 8/8.1 Pro/Enterprise Windows 8/8.1(無印エディション)
Windows 2000 Server/Advanced Server Windows 2000 Professional
Windows Server 2003/R2  
Windows Server 2008  
Windows Server 2008 R2  
Windows Server 2012  
Windows Server 2012 R2  
Android版RDCアプリから接続できるWindows OSと接続できないWindows OS
WindowsクライアントOSの場合、一般消費者向けの下位エディションにはリモート・デスクトップのサーバ機能がない。利用するにはProfessionalなど上位エディションにアップグレードする必要がある。なお、Windows Small Business Serverシリーズにも接続可能だ。

 Windows OSでリモート・デスクトップのサーバ機能を有効にする方法については、TIPS「リモートから『リモート デスクトップ』を許可する」を参照していただきたい(決して難しくはない)。



 MS純正のAndroid版RDCアプリを実際に使ってみた筆者の感想は、「用途によっては実用的に使える」というものだ。英語表記のUIは取っ付きにくいが、慣れれば使い方はそう難しくはない。複数のソフトウェア・キーボードの使い分けはまどろっこしいが、原稿執筆のようにキー入力が頻繁でなければ使い物になるレベルとも感じた。例えば、トラブルが発生したWindows Serverの状況を探ったりする場合、常時持ち歩いているAndroid端末から素早くリモートのWindowsマシンに接続・操作できるので重宝するだろう。それに可搬性は犠牲になるものの、物理マウス/キーボードをAndroid端末に接続すれば操作性を高めることができる。

 実用上、最も気になったのは解像度が変更できないことだ。筆者の視力がよくないせいもあるだろうが、画面サイズが4インチ台のスマートフォンでは、拡大していないときの表示が細かすぎて非常につらい。これはAndroid端末やMS純正RDCアプリに限ったことではないだろうが、より実用的に使うには7インチ以上のタブレットがほしいところだ(もっともLCDの実解像度が1920×1200ドットに達すると、たとえ7インチ・タブレットでも画面表示はかなり細かくなってしまうが)。さらにいえば、ダイレクト・タッチ・モードで画面表示のリニアな拡大/縮小が実現されることを強く望みたい。

 さて次回はiOS版RDCアプリの使い方や注意点を解説する。インターネット経由で会社や自宅のPCにリモート・デスクトップで接続する方法については、最終回で解説する。

■関連リンク


■更新履歴

【2013/12/16】2013年12月にリリースされたRDCアプリの新バージョン8.0.3にあわせて、マウス・ポインタ・モードでの操作方法およびマウス操作モードの切り替え方法、コンピュータ名を指定した接続について追記・修正しました。またVer. 8.0.1で確認した、物理キーボードの使用時にキーを押さなくてもキーが入力されることがあるという不具合は、Ver. 8.0.3で再現しなかったため、該当の記述を削除しました。

【2013/11/20】インターネット経由でリモート・デスクトップ接続を利用する方法については、最終回で説明させていただきます。ご了承ください。

【2013/11/07】「Android版RDCアプリで使える機能・使えない機能」で、SDカードのリダイレクト時にリモートPCからどのようにSDカードへアクセスできるのか、補足しました。



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