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» 2013年12月02日 18時00分 公開

現代っ子の習いごとはプログラミングも当たり前――「TENTO」レポート子ども向けプログラミングの現場から(2)(2/3 ページ)

[神谷加代,フリーランスライター]

発表会に向けて、2カ月の制作プロジェクトがスタート!

 10月の発表会に向けて、子どもたちは夏休み明けから作品作りを始めた。

 まず、紙にアイデアを書き出すところから始め、作りたいゲームやストーリーをイメージしながら、「どんなステージが必要なのか」「キャラクターは、どういう設定にするのか」「どうすれば、ゲームクリアになるのか」など思いのままに書き、アイデアを具体化させていく。

 途中、自分のアイデアが実装できるかどうかは講師からアドバイスをもらったり、また、その対話の中から自分で気付いたりして問題解決のヒントを見付けていった。

アイデア出しをする時に子どもたちが実際にメモしたもの。キャラクターの設定やステージの設定など、頭の中にあるイメージを具体化していく

 その後、作品のイメージが固まったら、今度はお絵かきソフトや「Scratch」の手描きツールを使ったりして、作品に必要な背景やキャラクター、パーツなどを作っていく。

 また、アニメーション作りにこだわる子どもたちは、オープンソースの高性能画像編集ツール「Inkscape」を使って作成しており、TENTOでは通常の講座のなかでプログラミングだけではなく、こうした画像編集ソフトなども教えているという。

 また発表会の作品に使う言語に対しては、子どもたち自身が好きなものを選んだ。今回、子どもたちが選んだのは、Scratch、ドリトル、HTML、JavaScript、PHPで、それぞれの作りたい作品をどう表現するのか、新しい技術を習得しながら、その作業に2カ月間取り組んだ。

コードやエラーを修正しながらプレゼンしてみせる子どもたち

 2013年10月20日の発表会当日、会場には保護者だけではなく教育関係者やIT従事者も訪れるなど関心も高く、審査員には、情報教育の分野で著名な筑波大学ビジネスサイエンス系教授 久野靖氏と、Squeak EtoysやScratchの日本語化を担当した青山学院大学・津田塾大学非常勤講師の阿部和広氏が招かれた。

 子どもたちの作品はいずれも個性的で、それぞれの良さが伝わってくる仕上がりであった。

 格闘ゲームで敵がなかなか倒れないようなゲーム性にこだわったものや、たくさんのステージを作り、飽きがこない趣向や仕掛けを巡らせたもの、またScratch 2.0の新機能「クローン」を使って、演出にこだわりを見せたもの。そのほか、BGMや効果音をうまくゲーム性と結び付けたものや、無重力の月面ジャンプ歩行をJavaScriptで表現したアイデア溢れるものなど、子どもたちのさまざまなこだわりやオリジナリティが作品を通して表現され、会場の観客たちは引き付けられた。

 「2カ月の制作期間中、子どもたちはいろいろな発見をしていきます。新しい機能を見付けたり、友達が作っているのを見て刺激を受けたり、何度も修正や変更を加えて、最初にイメージしていたのとは違う作品が出来上がることが多いです。

 いい換えれば、それは子どもたちが実際にプログラミングをしている時に、いかにクリエイティブな発想をしているかということで、制作期間は子どもたちの持つクリエイティビティにいつも感心させられます」(竹林氏)

 また、プレゼンの後に設けられた質疑応答では、会場の大人やTENTOの仲間たちから予期せぬ質問が飛び交った。それに対しても、子どもたちは動じることなく、スクリプトの中を見せて実際にブロックを動かしながら説明したり、ソースコードをいじって説明したりするなど対応力の高さも見せた。

 また、発表の途中でエラーが出たり、うまく動かなかったりした場合も、即座にその場で修正する子どももいれば、中には、SQLiteのデータベースをコンソールから操作してみせる中学生もいて審査員や観客を驚かせた。審査員の阿部氏からは「こういうことが何気なく、自然にできているところがすごい」と評価された。

表彰式で選ばれたのは、“こだわり”のある作品!

 表彰式では、「久野靖賞」、阿部氏が選出する「ニャタロ〜賞」、観客の投票で決まる「観客賞」の3つが用意された。

 「久野靖賞」に選ばれたのは、中学2年生がPHPで作った作品『チャットツールErfindung』。みんなが普段から日常的に使えそうなアプリケーションを中学生が作ったという点と、スマホでも使えるスタイリッシュな外見を備えたところが評価された。

「久野靖賞」に選ばれた中学2年生がPHPで作った作品『チャットツールErfindung』。マイナーなゲームで遊んでいる者同士がつながりたい!という思いがキッカケで作ったという

 外見がスタイリッシュに出来上がっているのは、ツィッターが提供している「BootStrap」というWebページのフレームワークを使用したためだが、講師陣からは、「講師が教えたわけでもなく、自分でその機能を見付けて、使い方も自分で調べたところが素晴らしかった」と積極性の部分を高く評価された。

 またプレゼンの見せ方も、来場者を巻き込んで観客とリアルにその場でチャットするなど工夫した演出も好感を得た。

 「ニャタロ〜賞」には、中学1年生がScratchで作った作品『F1』が選ばれた。このゲームは、ただ周回してスピードを競うだけではなく、優勝して獲得した賞金でショップに行って部品を買い、マシンをパワーアップできるなど、ゲーム展開の楽しさが評価された。

「ニャタロ〜賞」に選ばれた中学1年生がScratchで作った作品『F1』。スプライトや背景もすべて手描きするなど、作りこみの細かさが評価された

 また、開始時にシグナルランプを光らせたり、ミラーに写るレーシングカーを遠近法で表現したり、説明画面を別窓で用意したりするなど、作り込みの細かさも評価ポイントとして高かった。コースも12種類作り、1つ1つの操作にクリック音を割り当てるなど、そのこだわりは細部にまで至る。

 「観客賞」には小学6年生の女の子がJavaScriptで作った『猫の格闘技ゲーム』が選ばれた。一見すると普通の格闘技ゲームだが、すごいのは、画像を70枚も手描きし、キャラクターをスムーズにアニメーションさせたところ。昇天するところでは透明化のエフェクトを使うなど、猫の細かな動きをかわいらしく表現するのに苦労したという。

 また講師陣からは、「ライブラリを使わずに、すべて自分の手でコードを書いたところが素晴らしい」と評価された。「敵のキャラクターが自動で動くにもかかわらず、こちらの動きをよけたり、攻撃を仕掛けたりして、実際に人間が操作しているかのような動きを表現したことも、地味な部分ではあるがすごい」と猫の動きにこだわった力作を褒めた。

「観客賞」に選ばれた小学6年の女の子が作ったJavaScriptの作品『猫の格闘技ゲーム』。猫の滑らかな動きや愛くるしい表情には、会場からもため息が漏れた。

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