抽象的なゴールと具体的なマイルストーンを設定すること、それが僕の自分戦略の根幹だ
今回の企画を頂き初めに行ったこと、それは自分の中でゴールが何であるのかを問いただすことでした。「想いを貫く」ためには、ちょっとやそっとでは揺るがない確かなゴールを設定することが重要です。一般的には、そのゴールの基準が明確であるほど、その達成意欲も湧きますし、さまざまな環境の変化に対しても、モチベーションを継続できます。「果たして、自分の中のゴール、達成基準は何なのだろう」―― それを、まず再認識することから始めました。
例えば英語を学習する場合でしたら、「英語を上手に話せるようになりたい」という曖昧なゴール設定では、そのゴールをクリアすることは、なかなかかないません。自分でも経験があるのでよく分かるのですが、曖昧な目標のままでは日々の業務に忙殺され、環境の変化に振り回されるうちに、モチベーションが低下していってしまいます。明確なゴール、例えば「国際会議の場で、海外著名人の〇〇さんと真剣にディスカッションがしたい」「2年後に海外に移住し、現地で働きたい」といったように設定しないと、多忙な業務に追われながら語学力を向上させることは難しいものです。
このような「明確に達成基準のあるゴール」として何を設定しているのだろう? そこについて考えあぐねました。その結果、到達したゴール、それは明確な達成基準を設定したものではなく、抽象度の高いものであることに気付かされました。
最新Web技術がもたらす、新たなイノベーション・社会構造の変化に貢献したい。Webの可能性の先にあるものを、この目で、この手で明らかなものとしたい。
それがゴール。それが僕の中の結論でした。
もちろん、抽象度の高いゴール設定だけでは、具体的な一歩を踏み出すことは困難です。実際、日々の活動を進めるに当たっては、その指針を明確なものとするよう努めています。
例えば、「日本に良質なHTML5専門のメディアを作り、国内のWeb技術レベルを高めたい」という思いからHTML5 エキスパートコミュニティサイト“HTML5 Experts.jp”を開始しました。「日本のWeb開発者のグローバル化を進展させたい」という目標から、海外のW3Cメンバーと日本人開発者の交流イベント“W3C Developers Meetup”のモデレーターを務めました。「最新Web技術を活用した新たなサービスを始めたい。日本に最新Webを技術を浸透させたい」という思いから、WebRTCのBaaS サービス「SkyWay」を手掛けました。
しかしながら、これらの活動とそれに対する具体的な目標を最終到達点として位置付けるのは、自分の中でふに落ちません。むしろ「自分が実現したい何かに向けてのマイルストーン」として捉えた方がすっきりとします。
一体この先どう進むか予測もつかないWebに真正面から向き合い、試行錯誤しながらそれと共に歩み続ける、その道筋が具体的な日々のマイルストーンのクリアであると整理しました。
Webの歴史が始まって20年余り、技術文書の共有の場として始まったWebは、幾つかのターニングポイントを経て、今の形へと進化しました。
主だったところでは、2004年ごろに起こったいわゆる“Web2.0”。Google Mapsが象徴的ですが、この時を境に、Webはインタラクティブな“Webアプリケーション”を提供可能なプラットフォームへと進化しました。
日本国内では2010年ごろから盛んとなったFacebookやTwitterなどの“リアルタイムコミュニケーション”も、大きな変革点です。ソーシャルメディアを中心にリアルタイムにメッセージが拡散していくことで、社会構造までをも揺るがすようになります。「アラブの春」などは、その代表的なものでしょう。
純粋に技術的な観点から見ると、これらの変革期にWebで具現化されたそれぞれのサービスのベースとなるものは、それほど目新しいものではありません。Google Mapsで実現されたスクロール地図は、ネイティブアプリケーションでは当たり前のものでした。FacebookやTwitterも技術的にはインターネットの黎明期からあるチャットを取り込んだものといえます。
重要なのは、それらの出現により“情報と情報”“ヒトと情報”“ヒトとヒト”が有機的に結合し、化学反応を起こしたことでしょう。有機的なこれらの結合がリーズナブルな形で実現されることにより、誰も予期しなかった新たなマーケットの出現や社会構造の変化をもたらしました。
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