最後に、本連載を執筆するに当たってミャンマーに出張した際の印象や現地の様子を簡単にまとめたいと思います。
今回のミャンマー視察には、主に2つの目的があります。1つ目は、日系オフショア現地法人を訪問し、実際に現地ミャンマー人SEに社内研修すること。2つ目は日本企業によるヤンゴン新規事業立ち上げ現場の密着取材です。3泊4日ヤンゴン出張行程は以下の通りです。
訪問日 | 訪問先 | 内容 |
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2013年8月8日 | ヤンゴン国際空港/NTTデータヤンゴン | 空路でタイの首都バンコクから移動、NTTデータヤンゴンで社内研修 |
2013年8月9日 | グローバルイノベーションコンサルティング(ヤンゴン)/DIR-ACE(大和総研のヤンゴン合弁会社) | ミャンマー進出のヒアリング、BPO現場の視察/DIR-ACEで社内研修 |
2013年8月10日 | ヤンゴン市内の物件調査と採用面接 | 物件調査、社員寮の視察とマネージャ面談 |
2013年8月11日 | ヤンゴン市内のゴルフ場と寺院/ヤンゴン国際空港 | ゴルフと観光/空路でベトナムの首都ハノイへ移動 |
私たちオフショア大學ミャンマー視察団は、タイの首都バンコクからミャンマー最大の都市ヤンゴンに空路で入りました。飛行時間は1時間ちょっとです。経済発展が遅れ、最後の秘境と称される未知の国、ミャンマーですが、日本のものづくり産業が集積するバンコクからは目と鼻の先といった印象です。ミャンマーの概要は以下の通りです。
特徴 | |
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国名 | ミャンマー(Myanmar) |
首都 | ネピドー(ヤンゴンはかつての首都で、現在はミャンマー最大の経済都市) |
人口 | 5280万 (2012年世界銀行)、5240万(2003年7月ミャンマー大使館) |
面積 | 677000km2 |
言語 | 公用語はビルマ語、ミャンマー市内なら英語も通じる |
民族 | ビルマ族が6割を占める(8つの主要部族、全体で135の民族) |
宗教 | 上座部仏教89.2%、その他、キリスト教・イスラム教など |
気候 | 夏、雨季、そして冬の三気候 |
隣接国 | 国境線の長い順に、中国、タイ、インド、バングラデシュ、ラオス |
時期 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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気温 | 19度 | 23度 | 29度 | 32度 | 33度 | 33度 | 32度 | 32度 | 30度 | 28度 | 18度 | 16度 |
季節 | 冬 | 冬 | 夏 | 夏 | 雨季 | 雨季 | 雨季 | 雨季 | 雨季 | 雨季/夏 | 冬 | 冬 |
以下では、オフショア開発を行う上で関連する事柄を簡単にまとめます。
・宿泊先
今回、私たちが宿泊先として選んだホテルは、ヤンゴン市内の中央部に位置するSedona Hotel(5つ星)です。南部のダウンタウンからは少し離れますが、ホテルの目の前は美しいインヤ湖と整備された公園が広がります。気になる宿泊費は一室220USD/日から。
はっきり言って、高すぎる値段です。世界に開かれたお隣、バンコクのホテル相場と全く比較になりません。もしもバンコクで同じような設備のホテルに泊まったら、宿泊費はせいぜい80USD/日くらいでしょう。中国でも100〜120USD/日だと思われます。
ヤンゴン市内には、Sedona Hotelと同格の高級ホテルは片手で数えられるほどしかありません。当初、私たちはSedona Hotelよりも価格が高いダウンタウンの中心部にあるTraders Hotelに宿泊するつもりでした。ところが現地の人を通じて打診したところ、宿泊1週間前でも満室で予約が取れませんでした。時期にもよりますが、宿泊費は1室180〜250USD/日とのこと。これが2013年現在におけるミャンマーのホテル事情のようです。
ヤンゴン市内では、朝も夜も流しのタクシーを簡単に捕まえられます。私たちが訪問した8月は雨季のまっただ中。小雨がぱらつくと若干、時間がかかりましたが、それでもタクシーは簡単に見つかりました。
ヤンゴン市内はトヨタを筆頭に日本車だらけです。道路を走る乗用車の3〜4割はタクシーといった感じです。一方、2輪車は全くと言っていいほど見かけません。市内への2輪車乗り入れは禁止されているからだそうです。自転車もほとんど見かけません。そのため、市民の足はもっぱら路線バスとのことです。市内のソフトウェアパークに通う多くの若い技術者らもオンボロ路線バスでがたごと道を通っています。
8月8日午前、ヤンゴン国際空港からホテルまで向かう40分間ほどの道中、私はタクシー運転手と話し込みました。なぜ、初対面のタクシー運転手(30代・男性)と長時間話せたかというと、彼が驚くほど流暢な英語を話したからです。その後、ヤンゴン市内で複数のタクシーに乗車しましたが、全員が英語を話せました。ただし、最初に出会った運転手ほど流暢に英語を話せる者はいませんでした。たまたま最初に出会ったタクシー運転手があまりに出来過ぎたため、ミャンマー人は皆「きれいな英語を話す」と誤解しそうになったほどです。彼は中学校を卒業後、ミャンマーでは仕事にありつけないため、海外に出稼ぎに行き、そこで英語力を身につけたようです。ヤンゴンには2012年から日本人客が急増しているので「これから日本語も勉強したい」と明るく語ってくれました。
日本人や中国人とは異なり、一般のミャンマー人はあまりお酒を飲みません。ですが、全く酒を飲まない、というわけではありません。2013年8月、ヤンゴンの友人宅を訪問した際、私たちは用意された葡萄酒を遠慮なく飲み干しました。一方、乾杯のために「とりあえずビール」という習慣はなさそうです。最初から最後まで、ゆっくり自分たちのペースで葡萄酒を頂きました。
余談ですが、もし、中国で一般家庭に招待されたなら、間違いなく「飲め飲め」と歓迎の乾杯攻撃を受ける局面です。私が暮らす地域なら、有無を言わさず白酒攻撃の洗礼を受けます。先日は自家製の白酒を振る舞われました。昔は私の故郷沖縄でも“飲め飲め攻撃”がありましたが、最近はだいぶ落ち着いてきた感じです。もしかしたら私が付き合う層が、だんだん高齢化してきたためかもしれませんが。
ヤンゴン観光は最終日に集中させました。ヤンゴン観光の目玉は何と言っても中心部に位置する寺院=シュエダゴン・パゴダ (Shwedagon Pagoda)です。
圧倒的なスケール感は全ての訪問者を魅了します。この寺院を見学するだけでもミャンマー文化の真髄に触れられます。なぜ、かつて経済封鎖に苦しめられたミャンマーなのに、街には浮浪者がいないのか。なぜ、ミャンマー人は苗字を持たなくても平気なのか、などなど。歴史ある巨大な建築物と信仰心溢れる参拝客を間近で見ることで、書籍などに記載された日本とミャンマーの文化的相違、例えば遵法意識や時間概念の違いなどもすっと腹に落ちてくる気がします。
ついでに、現地で生活する日本人駐在員と気持ちを通わせるために、ヤンゴン中央部のホテルから車で30分ほど離れたゴルフ場に足を運びました。コース上では意外にもタイ人観光客が目立ちました。逆に韓国人が少なかったのが不思議な感じでした。
前出のヤンゴンの友人宅は、現地水準では明らかに富裕層に分類される豪邸です。それでも以下のような、ホテルやお店では絶対に味わえないミャンマー文化の一部を肌で味わうことができました。
友人宅には、後から某国大使館関係者夫妻(旦那さんは欧州人、奥さんがミャンマー人)も飛び入り参加して、話題錯綜する混乱気味の宴が繰り広げられました。
私が主催するオフショア大學でも、機会があればミャンマー人富裕層との交流について講座の中で紹介していく予定です。ミャンマーの文化や生活について、より詳しく知りたい方は以下を参考にしてはいかがでしょうか。
いうまでもありませんが、オフショア開発はビジネス的な背景だけではなく、現地の文化や風俗、商習慣なども知っていなければ、円滑に進めることが難しくなります。これを受けて、幅広い視点でここ13年間のオフショア開発の歴史と背景、ミャンマーの今を紹介したわけですが、いかがだったでしょうか。この連載が、オフショア開発を行っている、あるいは検討されている皆さんの参考になれば幸いです。
▼幸地 司(こうち つかさ)
アイコーチ株式会社 代表取締役社長
日本初のオフショア開発コンサルタントとして、中国オフショアを中心にコンサルティング業務(PMメンタリング、PMO業務支援オフショア開発実践セミナー実施多数など)に従事。日本唯一のオフショア開発コミュニティ「オフショア開発フォーラム」を主宰。 企業の実情に応じた現実的な提案が評判を呼び、セミナー参加者や4000名のメルマガ読者から「実体験に即した具体的な話が本当にありがたい」との高評価を得ている。
著書・論文:「オフショア開発に失敗する方法」(ソフト・リサーチ・センター)/「オフショアプロジェクトマネジメント【SE編】【PM編】」(技術評論社)/アイティメディア「@IT情報マネジメント」連載/「オフショア開発PRESS」(技術評論社)/「エンジニアマインド」(技術評論社)連載など執筆多数。
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