データセンター事業者に加え、一般企業でも、OpenStackに注目する人が増えている。VMware vSphereの代替として使えるのではないかという期待を持つ人も多い。ただし、OpenStackを推進する人の多くは、OpenStackとVMware vSphereの間に、発想の違いがあることも認識している。
OpenStackへの注目度は非常に高まっている。2014年2月13、14日に開催されたOpenStack Days Tokyo 2014は、2日目が大雪だったにもかかわらず、延べ1100人の参加者を集めた。パブリッククラウド構築・運用基盤としてだけでなく、プライベートクラウドの構築・運用基盤として注目する人も多い。
組織内のITインフラ基盤として広く利用されてきたものといえば、VMware vSphereがある。では、OpenStackはVMware vSphereと競合し、場合によってはVMware vSphereから移行するべき技術なのだろうか。これについては、下記のようにさまざまな意見がある。
OpenStackは複数のハイパーバイザを運用管理の対象とすることができ、VMware ESXiもその対象に含まれている。VMware vSphere(すなわちVMware ESXi+vCenter)との併用を推奨する人がいるのはそのためだ。
上記の議論の前提として、OpenStackを推進する立場の人々の多くが認識しているのは、OpenStackとVMware vSphere(+vCloud vDirector)にはアーキテクチャ(発想)の違いがあるということだ。どちらがいいかという話は、これを踏まえて行う必要がある。
2013年11月に実施されたOpenStack Summit Hong Kongでは、ラックスペースのオープンクラウドアーキテクトであるケネス・フイ(Kenneth Hui) 氏とヴイエムウェアのエンジニアリングアーキテクトであるスコット・ロウ(Scott Lowe)氏が、OpenStackとVMware vSphereのアーキテクチャの違いについて、中立的な観点から分かりやすく説明していた。
フイ氏とロウ氏は「粗結合対密結合」、「家畜の飼育対ペットの飼育」などの表現を用いて両者の違いを説明した。
両氏は、もともとVMware vSphereがハイパーバイザ、ファイルシステム(ストレージ)、運用ツールが密接に連携して仮想化運用を実現しているのに対し、OpenStackはこの3要素が明確に分離され、目的に応じて組み合わせられるようになっていることを説明した。ヴイエムウェアのロウ氏は、VMware vSphereが「1本のハンマーで、あらゆるものをクギとして扱って対処する」という発想から来ているのに対し、「OpenStackは特化した機能を持つ道具を多数集めたもので、目的に応じて使い分けるようになっている」と話した。
ラックスペースのフイ氏は、「家畜の飼育対ペットの飼育」という発想の違いがあると話した。「OpenStackの世界では、アプリケーションの障害耐性はインフラのレイヤに属するのではなく、アプリケーションレイヤに属する。OpenStackは、仮想マシンはいつ死んでもいいという前提に立っている。言い換えれば、障害が発生した際にはアプリケーションで対処する必要がある。仮想マシンの再起動に、あまり焦点は当てられていない」(フイ氏)。
OpenStackは、上記をはじめとしたさまざまな発想の違いがある。OpenStackを推進する人々は、このことを認識した上で、クラウドサービス事業者だけでなく、一般組織における今後のプライベートクラウド構築にも、OpenStackが適していると訴え始めている。
フイ氏とロウ氏が、OpenStackとVMware vSphereのアーキテクチャの違いにつき、OpenStack Summit 2013 Hong Kongで行ったプレゼンテーションの内容を、「IT INSIDER No.27 VMware vSphereとの比較で考える、OpenStack超入門」にまとめました。ぜひお読みください。
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