エンジニアが生き残るために、頼りにすべきものとは経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」(2)(1/2 ページ)

会社にキャリアを託す時代は終わった。ではエンジニアは、何を頼りに社会人人生をサバイブすればよいのだろうか。ビジネスのプロである経済評論家の山崎元さんが、非エンジニアの立場からあえて、エンジニアが持つべき視点をアドバイスする。

» 2014年06月03日 18時00分 公開
[山崎元,@IT]
経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」

連載目次

会社の寿命は約30年

 ある工学系の学会の会員募集パンフレットを見て驚いた。「入会後のエンジニアリングライフ」というタイトルの図が載っていた。

 大学院(修士)を出て会社に入り、入社の年から数えて12年目に「主任研究員」に昇格、15年目に「技術士資格取得」および「海外研究所に赴任」、18年目に「部長」に昇格、23年目に「営業副本部長」へ昇格、27年目に「事業本部長」に昇格とあって、30年目に「新規事業を立ち上げ」とこと細かく書き込まれている。その途中には、学会賞を受賞したり、フェロー称号を得たり、理事となったり、という学会での立場の変化も記されていた。

 人により、会社によって、研究職で就職したエンジニアが、このような経路をたどることが絶対に無いとは言い切れない。しかし、1つの会社にずっと勤めていられて、そこで時間をかけて昇進していくコースを標準で普通だと考えている人がいるとすると、その人の将来はかなり心配だ。それは、あまりに1社に頼り過ぎた人生設計だ。

 一つのビジネス、あるいは会社の寿命はさまざまだが、かつては、大まかに「30年」といわれていた。

 技術の進歩や経済のグローバル化を考えると、これはもっと短くなっている可能性がある。先のパンフレットのように修士卒から働き始めるとしても、65歳まで働くと考えると、職業人生の時間は約40年もあり、一社にこの全ての面倒を見てもらおうと考えるのは無理がある。

 内外を問わず、かつて隆盛を誇った大企業が衰退したり、倒産したりした事例は多い。元ファンドマネージャーの経済評論家として言うが、「20年後に絶対に存続している」と言い切れる会社は日本に一つも無いと言っていいくらいのものだ。

たとえ会社が存続したとしても

 加えて、職場と自分との相性の問題がある。

 会社が傾かなくとも、会社が将来特定の分野の技術者を必要としなくなる場合があり得るし、何らかの理由で社員を個別に必要としなくなる場合もある。趨勢(すうせい)として、解雇に関する規制は緩和される方向にあり、一度就職できたらずっとクビにはならないという想定は甘い。

 また、職場の人間関係が合わないということも十分起こり得る。職種を問わず、実質的な理由が職場の人間関係だという転職は少なくない。

 さらに、興味や関心、あるいは人生でやりたいことが変化して、会社が自分に合わなくなる可能性もある。

 では、1社を選び一生を会社に託すことが現実的ではないとすると、どうするとよいのだろうか。

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