新型うつは対岸の火事ではない。社員が新型うつ傾向に陥らないように企業が行っている予防と対策の実例を紹介する。
新型うつ問題は、どの職場でも起こりつつある問題として、企業に認知され始めています。今回は、企業がどこまで本気になって新型うつの予防と対策に取り組んでいるのかを、具体的に紹介します。採用時に行っているアプローチもあれば、新入社員研修時、1年後、2年後など継続的に行われているアプローチもあります。
企業からすれば、新型うつ傾向のある人はできれば採用したくないというのが本音でしょう。
従来型のうつであれば、なりやすい性格傾向として「まじめ、きちょうめん、責任感がある、他者配慮ができる」などがあることは、連載第2回で説明しました。しかし、この性格傾向はビジネスにおいてなくてはならない特徴でもあります。逆に「不真面目で、ずぼらで、責任感がなく、人に対して無礼な態度」な人は、ビジネスの世界ではやっていけません。
それでは新型うつの特徴はどうかというと、「他罰的傾向、自己中心性、他者配慮性に乏しい、社会的に未熟、ストレス耐性が低い」など、およそ採用したくならない特徴が並びます。そこで採用試験時の適性検査とともに、さまざまなアセスメントをしている企業もあります。
単純に現在の不調状態に焦点を当てたものから、ストレス耐性の評価、さらには新型うつ傾向を評価するアセスメントも開発されています。
また、最近話題となっている「圧迫面接」を行うことによって、コミュニケーション能力や感情のコントロール、ストレス耐性などを評価する企業も出ています。
今までのメンタルヘルス研修は、管理監督者向けのラインケアが中心でしたが、昨今は、若手に向けてのストレスマネジメントを要望する企業が多くなっています。
入社して間もない時期に退職してしまう、あるいは新入社員研修を終えられずに途中で辞めてしまうなどの事例が増えているため、新入社員研修時に、今までの研修に加えてメンタルヘルスのセルフケア研修を組み入れる企業が多くなっているのです。
内容は「ストレスに早く気付いて、自分で対処できるようにすること」と、「ストレス耐性を高めるアプローチ」が基本です。2時間から半日程度かける企業が多いのですが、中には丸1日かけて、セルフケアをしっかりと身に付けられるようにカリキュラムを組んでいる企業もあります。
新入社員の入社時にキャリアデザイン研修を行う企業が増えてきました。それは、入社後できるだけ早い時期に「自分のキャリア」という視点を持つことが欠かせなくなっているからです。
キャリアを意識しないと、目の前の仕事や人間関係に目を奪われて、さまざまな出来事に対して一喜一憂してしまうことになります。将来に対しての期待や人生への希望が薄くなる傾向にあり、自分の成長に対する意識や意欲が薄れてしまうことも少なくありません。
また、キャリアの遅れがストレス源となり、不調に至っているケースは決して少なくありません。さらに、新入社員の中にはモラトリアム状態(自己形成の途中で社会人になりきれていない)にある人もおり、社会人としての自覚が備わっていないために、仕事や人間関係で支障を来していることもあります。
以下の項目は、キャリアデザイン上大切な視点をまとめたものです。
これらの項目を考えることによって日ごろから意識に上り、自分のキャリア、将来に対しての視点、仕事のビジョンなどが養われていきます。ただ上司に言われたことだけやる状態から主体性を持って仕事を取り組む土台となるのです。
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