メンタリングとは、新入社員などが仕事をする上での不安や悩みなどを気軽に話せるようにあらかじめ相談者(メンターといいます)を決めておくことです。
メンターは、通常3〜4年程度上の先輩格が対応し、話を聞きながら不安を軽減したり、励ましたり、アドバイスを行い、自分の体験談なども話しながら、新入社員の職場適応を進めていきます。それを会社の取り組みとして行っているのがメンター制度です。
なぜ、わざわざメンターをあらかじめ決めるのか(マッチングといいます)というと、昨今の新入社員の中には、仕事上の悩みがあっても気軽に相談できずに一人で悩み続け、結果として職場不適応やメンタルヘルス不調になって職場を去っていく人が多くなっているからです。あらかじめマッチングしておけば、必要なときに相談できるのではと期待して取り組んでいるのです。
もともと新入社員が先輩や上司に相談しやすい環境であれば、メンター制度などそもそも立ち上げる必要はありません。しかし、先輩や上司に気軽に相談できない雰囲気であったり、実際に相談したときに適切な対応でなかったりすることで、徐々に相談ができなくなるケースが多いのです。
先輩や上司も自分のことで精いっぱいで、新入社員を育てる余裕が無くなっているからこそ、メンターを制度として立ち上げる企業が増えているのでしょう。
若手全員を対象に、総合的にメンタリティ強化を図る研修を行う企業もあります。一人一人のモチベーションの源泉は違います。自分の源泉を探り、人生の目標と仕事との連動を図り、目標達成のために自分でモチベーションをコントロールできるようになることがこの研修の目的です。
前述した「セルフケア」「キャリアデザイン」に加え、「モチベーションアップ」「目標達成力強化」「コミュニケーション力の強化」「ストレス耐性強化」などを集中して高めていきます。
企業でこのような研修への要望や関心が高くなっており、筆者が行う2日間の研修にも、あらゆる業種からの引き合いが多くなっています。特に近年では、IT業界からの引き合いが急増しています。
いくら予防をしても、新型うつ傾向になる人はいます。しかも、不調で休職をし、職場復帰してもまた再発してしまうという事例がかなりあります。また、再発するまではいかないものの、従来のようなパフォーマンスが得られない、あるいは休みがちというケースも後を絶ちません。職場復帰日を何度も延ばしてしまうというケースも珍しくありません。
なぜそのようなことが起こるのか。それは、本人が最初に不調になった時点(A地点)と現在(B地点)で何も変わっていないがために起こるものです。変わるとは何か、何が必要なのかを具体的に見てみましょう。
しかし、問題は複雑に絡み合います。疾病性の問題、人間関係、適性・能力、業務負荷、困難性、配置や仕事の配分、職場風土、職場環境、コミュニケーションスキル、周囲の対応、サポート、本人のキャリア、性格、パーソナリティ、トラウマ……。
これらの問題に対して、真正面から取り組むのが「職場復帰直前プログラム」です。これは筆者が提唱している少人数限定の2日間の合宿プログラムで、ちまたで行われている通常のリワークプログラム(職場復帰プログラム)とは異なります。プログラムの最大の目的は本質的な問題に気付くことです。
特に重視している内容は、自分の不調の原因を素直に見つめ、分析し、取り得る効果的な対策を考えることです。そのときに一緒に参加した少人数のメンバーも共に考え、意見を出し合うことで、自分が気付かなかったことに気付く、他者からの支えを感じ感謝の気持ちを芽生えさせる、そして職場に適応するための努力が足りないことに気付いて、これから努力していきたいという気持ちを生じさせる、といったことが大きな目的です。
新型うつ傾向社員の職場復帰が順調にいっていないときに、管理職ではなく本人をこうした研修に参加させる企業が増えています。このようなプログラムを必要とするくらい、本質を見ていく作業とそこに向けたアプローチが重要であると企業が気が付いてきたのでしょう。
今回は、企業のさまざまな取り組みを見てきました。どれも今日本で実際に実施されているアプローチです。ここまで本気になっている企業もあれば、「最近の若い奴は……」「弱くなった、甘えだ!」と言うだけで、新型うつは本人の責任とばかりに何も手を打っていない企業もあり、二極化が進んでいる印象があります。
次回は、最終章として新型うつに対して最も効果があると思われる「価値観の創造」について触れていきます。
エディフィストラーニング マネジメント/ビジネススキル トレーニング担当講師。
外資系コンピュータメーカーなどを経て、1998年に野村総合研究所入社。メンタルヘルス研修の他、カウンセリングや職場復帰支援、カウンセラー養成の実技指導、海外でのメンタルヘルス活動など、多岐にわたる活動を行っている。
日本産業ストレス学会正会員、日本産業カウンセリング学会正会員、日本産業カウンセラー協会正会員(シニア産業カウンセラー、キャリアコンサルタント)他。
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