ブロケードコミュニケーションズシステムズ日本法人は10月7日、9月下旬に本社が発表したOpen DaylightベースのSDNコントローラについて都内で説明した。この製品は、はっきり言えば差別化要素がない。なぜこうした製品をブロケードは出すのか。
ブロケードコミュニケーションズシステムズ日本法人は10月7日、9月下旬に本社が発表したOpenDaylightベースのSDNコントローラについて都内で説明した。これは同社の戦略上、重要な意味を持つものになりそうだ。
ブロケードは「Brocade Vyattaコントローラ」を2014年11月に出荷開始する(日本国内における販売・サポート体制などは2015年上期をめどに発表するという)。9月末に提供開始されたOpenDaylightの2番目のリリースである「Helium」を採用している。だが、新製品を「OpenDaylightベース」と形容するのは、実は適当とはいえない。「完全に」OpenDaylightのコードのみで構成された製品だからだ。
「OpenDaylghtベース」の商用SDNコントローラはすでに複数存在している。だが、既存のコントローラは、OpenDaylightのコードと独自開発のコードを組み合わせている。また、SDNアプリケーションのマーケットプレイスをつくるなど、ビジネス上の何らかの「フック」を設けているものが見られる。Open Daylightに限らず、オープンソースから商用製品を作り出す際に、上記のようなことを考えるのは、差別化の観点から至極当然な話だ。
Vyattaコントローラは、差別化の要素をまったく持たない。だがブロケードにとっては、逆にこのこと自体が目的のようだ。
Vyattaコントローラについて説明した米ブロケードのソフトウェア・ネットワーク製品担当ディレクター、ケヴィン・ウッズ(Kevin Woods)氏は、ブロケードは自社製品の売り上げを守るなどを考える必要がない、だから純粋にオープンな環境を目指せると話す。
ブロケード日本法人のCloud Technology Officerである小宮崇博氏は、「ネットワークを、プロトコルの世界からAPIの世界へ移行するのが目的」と説明する。つまり、ネットワークに関する新たな土俵をつくる取り組みだという。APIを介してネットワークを活用する世界になれば、個々のハードウェアは抽象化され、より純粋に機能やパフォーマンスが問われるようになる。少なくとも、既存の支配的なネットワーク製品ベンダーを採用し続ける理由は減る、という読みだ。
プロケードにとって、Vyattaコントローラは、下記の4つの意味で、ソフトウェア/サービスのための基盤として機能する。
上記のようなブロケードの取り組みは、キャリアNFV関連ビジネスの獲得に、特に好都合であるように見える。ベンダーロックインを回避したい通信事業者にとっては、SDNコントローラとネットワーク製品が完全に切り離されなければならない。また、NFVを進める通信事業者は、自社で安心してアプリケーションを開発できる一方、用途に応じてソフトウェアベンダーのアプリケーションを活用できる環境を望む。さまざまなネットワーク製品/機能のオーケストレーションを必要とするのも通信事業者だ。
「結局、Vyattaコントローラが最終的にターゲットとする市場はキャリアNFVなのか」とウッズ氏に聞いてみたが、同氏の答えは「イエス」ではない。通信事業者の間でこうした製品への関心が高いのはたしかだが、一般的なデータセンターでも、トラフィックフローやユーザー単位のきめ細かなコントロールが求められるケースでは、十分使われていく製品だと答えている。
ちなみに、ウッズ氏は以前、シスコシステムズで、OpenDaylightの立ち上げに関わった人物。「当時のシスコの意図は純粋なものだった。コントローラが乱立するのを避けたかった」と振り返る。だがその後、シスコはコードをフォークして独自コントローラを提供すると決断。意見が合わずに同社を辞めたのだという。一方でブロケードが「オープン」をベースに事業戦略を組み立てていることに共感し、SDN/OpenDaylight関連で活躍する友人とともに移籍。「今、非常にワクワクしている」のだという。
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