Windows 8.1の後継とされる「Windows 10」の技術プレビュー版が公開された。今度こそ、Windows XPやWindows 7ユーザー待望のスタートメニューが復活したのか? その概要を見る。
Windows 8.1の後継とされる次期Windows OS、「Windows 10」の「Technical Preview」版が2014年10月1日に公開された。今回はそのTechnical Preview版について見ていこう。
「Windows 10」は、Windows 8.1の後継と指定開発が進められている次期Windows OSである。バージョン番号は8.1から9をスキップして、いきなり10になっている。
Windows 10の製品版の出荷は2015年の年末以降とされており、1年以上先である。それに先立ち、2014年10月1日に「Windows 10 Technical Preview(以下Windows 10 TP)」というバージョンが開発者などに向けて公開された。Windows 8の時にあったようなDeveloper PreviewやConsumer Previewといった、より製品に近いバージョンではなく、次期Windows 10の方向性を示すための技術的なデモのようなバージョンである。登録すれば誰でも入手して試用できるが、最終的な製品とはかなり異なるし、どちらかというと新機能に対して各ユーザーがどのように考えているかという意見などを募集するためのもの、という扱いだろうか。
本記事ではWindows 10 TPの概要について見ていく。Technical Preview版ということもあり、細かい部分には触れず、スタートメニューやWindowsストアアプリに対する変更、マルチ仮想デスクトップなどについてのみ解説する。
Windows 10 TPは登録すれば誰でも入手して評価できる。詳しくは以下のページを参照していただきたい。ただし日本語版は提供されていないので、注意していただきたい。
Windows 10 TPのインストール方法についてはここでは触れない。インストール方法そのものは従来のWindows 8.1などと同じで、ISOイメージをダウンロード後、DVD-Rに焼いたり、USBメモリを使ってインストール用メモリを作成し、それを使ってシステムをインストールすればよい。なおこれはあくまでもTechnical Preview版であり、実業務に利用できるようなものではないことを了承の上、試用していただきたい。隔離されたPCシステムや仮想マシンなどで実験するとよいだろう。
Windows 8.1では[スタート]ボタンを押すとスタート画面が表示されていたが、これはWindows 7以前のユーザーが慣れ親しんだ[スタート]メニューではなかった。単にスタート画面に切り替わるだけのボタンに過ぎなかった。これに対してWindows 10 TPで[スタート]ボタンをクリックするとWindows 7の時のような[スタート]メニューが表示され、インストールされているアプリケーションを階層構造のメニューからたどって起動できるようになっている。
[スタート]ボタンを押してもWindows 8/8.1のようなスタート画面に切り替わることなく、デスクトップ画面のまま、このようなメニューが表示される。
表示されたメニュー画面の右側にはWindowsストアアプリのタイルが大きく表示されているが、左側は従来のWindows 7の時と同じようなメニューになっている。一番上にユーザー名と電源オフなどの項目が追加されているが、それ以外は特に迷うこともないだろう。
一番下にある[All Apps]をクリックすると、従来のWindows 7のようなメニューのツリーが表示され、ここから起動するアプリを選択できる。
ところでメニューの右半分にはWindowsストアアプリのタイルが表示されているが、これはWindows 8/8.1のスタート画面に相当する部分になり、カスタマイズが可能である。ここに項目を追加するには、[All Apps]メニューなどで目的のプログラムを表示させて右クリックし、ポップアップメニューから[Pin to Start(スタートにピン留め)]を実行する。
この方法でよく使うアプリ(Windowsストアアプリだけでなく、デスクトップアプリケーションでもよい)をスタートメニューにタイルとして登録しておけば、深いメニュー階層を辿らなくても素早く起動できて便利かもしれない。とはいえ、Windows 8/8.1のスタート画面のように多数のタイルを登録すると探すのが面倒になるので注意が必要だ。この辺りのユーザーインターフェースは、まだまだ改善の余地がありそうである。
Windows 7流の[スタート]メニューは(特に古くから慣れているユーザーには)便利だが、Windows 8/8.1のスタート画面を使う方法に慣れてしまったユーザーも少なくないだろう。システムに多数のアプリケーションがインストールされていても実際によく使うアプリはそう多くない。そこで、よく使うアプリだけを選んでスタート画面に登録しておき、スタート画面から素早く起動する、というのがWindows 8/8.1流のやり方だ。
そのようなWindows 8/8.1のスタート画面に慣れてしまっているユーザーのために、新しいスタートメニューの機能を無効にして、Windows 8/8.1のスタート画面を有効にするモードも用意されている。
上の画面のチェックボックスをオフにすると、いったんシステムからサインアウトするので、再度サインインする。すると[スタート]ボタンを押したときの挙動がWindows 8/8.1の時と同じようになる。
Windows 8/8.1では、Windowsストアアプリはデスクトップ画面とは別の、隔離されたウィンドウ上で動作していた。つまり全画面を利用するか、画面を縦に2〜4分割して、その中の1つの領域の中で動作していた。
これに対してWindows 10 TPでは、ついに通常のデスクトップアプリケーションと同様に、重ね合わせ可能なウィンドウ上で動作するようになった。最小サイズには制限があるが、それ以上の任意のサイズにできるし(従来のような全画面モードにもできる)、デスクトップ画面上で他のアプリケーションのウィンドウと重ねて配置することも可能である。
このウィンドウ化に伴い、各アプリの上部にはタイトルバーが表示されるようになった。そしてアクティブなWindowsストアアプリのタイトルバーは色が変わり、どれがアクティブなアプリかが分かるようになっている(設定チャームなどを起動すると、このアクティブなアプリの設定チャームメニューが表示される)。
アプリケーション開発者にとっては、また仕様が変わって面倒が増えることになるかもしれないが、これでやっとWindowsらしくなったといえる(最初からこうしておいても良かったくらいだ)。
Windows 7以降では、[Windows]+[←]キーや[Windows]+[→]キーでアプリケーションのウィンドウを画面の左半分や右半分にスナップさせる機能(Aeroスナップ)が利用できる。
これに加えてWindows 10では画面の上下半分にスナップさせる機能が追加された。キー操作は、最大化や最小化で使う[Windows]+[↑]キーや[Windows]+[↓]キーと兼用である。左右にスナップさせる機能と組み合わせると、画面を4分割させるようなスナップも可能になった。とはいえ、Windowsストアアプリはちょうど4分の1のサイズにリサイズできないものもあるし、キー操作も複雑である。
Windows 10 TPでは新しく仮想デスクトップがサポートされている。複数のデスクトップ画面を切り替えて、より多くのアプリケーションを、混乱なく利用するための機能だ。スマホやタブレットのような狭い画面では特に有効だろう(スマホではもう当たり前の機能だ)。
マルチデスクトップ環境を実現するためのツールはすでにいくつもあるが、OSの標準機能として組み込まれることにより、インストールなどの手間をかけずに使えるようになるのはありがたい。
以下は、仮想デスクトップ画面を4つ作成して、それぞれの上でいくつかのウィンドウを開いたところである。タスクバー上にアプリケーションのアイコンがいくつか表示されているが、タスクバーの内容(実行中のアプリの一覧)は全デスクトップで共通である。切り替えたいアプリがどの仮想デスクトップ上にあるかを気にすることなく、切り替えたいアプリのアイコンをクリックすれば、仮想デスクトップ画面が切り替わり、そのアプリがアクティブになる。
[Alt]+[Tab]キーによるアプリ切り替え機能も同様で、どのデスクトップ上で動作しているアプリケーションかは関係なく選択できる。
仮想デスクトップを切り替えるには、タスクバーにある[Task View]アイコンをクリックするか、[Windows]+[Tab]キーを押す。すると仮想デスクトップの切り替え画面が表示されるので、目的のデスクトップを選ぶか、その上で動作しているアプリケーションをクリックして選択する。下段右端の[+]マークをクリックすると、新しい仮想デスクトップ画面を追加できる。[Windows]+[Ctrl]+[←]もしくは[→]キーでも切り替えられる。
デスクトップを削除すると、その上で動作していたアプリケーションは他の仮想デスクトップ上へ移動する。デスクトップ間でアプリケーションだけを移動する方法はないようである。
なお、仮想デスクトップと言いながらも、デスクトップ上にあるファイルやフォルダー、ショートカット、個人設定などは全デスクトップで共通である。そのため、仮想デスクトップと言うよりは、実行中のアプリケーションのグループ化機能という方が適切かもしれない。各デスクトップが分離しているわけではないので、例えば2つのデスクトップ(上のアプリケーション)間でファイルをコピーしたい場合は単にデスクトップなどに置いてからアプリケーションを切り替えるだけでよい。
Windows 10ではなぜか、コマンドプロンプト(cmd.exe)の機能がいくらか強化されている。なぜ今になってこんな強化を行うのかは不明だが、コマンドプロンプトの需要はまだまだ衰えていないということだろうか(PowerShellへの移行が進んでいない?)。理由はともかく、コマンドプロンプトをよく使うユーザーにとっては便利な機能なので、ありがたく使わせていただこう。
コマンドプロンプトを使っていて一番不便なのが、表示された内容のスクロールバックやコピー操作だろう。まずバッファサイズがデフォルトでは300行になっていて、dirコマンドの結果すら満足に保存できない。Windows 10ではデフォルトバッファサイズを9000行にし(最大値が9999行なのは変わらない)、さらに「簡易編集モード」をデフォルトでオンにしている。このモードがオンだと、マウスで範囲を選択して簡単にコピーできるようになる。またバッファーをスクロールバックしたい場合、以前はスクロールバーをマウスで操作するか、ホイールを回すしかなかったが、Windows 10では[Ctrl]+[↑]や[↓][Page Up][Page Down]キーなどでスクロールできるようになっている。
さらにコマンドプロンプトのウィンドウをリサイズした場合に、自動的に「画面バッファーのサイズ」と「ウィンドウのサイズ」(の幅)を合わせるようにしている。幅が狭くなる場合は、さらに表示された文字列のラップ(折り返し)処理も行う。
一番大きく強化されたのが文字列の選択コピー機能である。コマンドプロンプト上でテキストを選択コピーした場合、以前は「ブロックモード」という方法でコピーされた。このモードでコピーすると、本来は1行のはずのテキスト出力が、選択範囲の右側で改行され、複数の行に分かれたテキストになってしまう。新しい「行選択モード」では、メモ帳や通常のアプリケーションと同様に、テキスト出力を行単位でコピーできるようになる(選択中に[Alt]キーを押すと、従来のブロックモードになる)。
キーによる操作も強化された。選択のためのカーソルの移動開始は[Ctrl]+[M]、文字列の選択は[Shift]+矢印キーなど、コピーは[Ctrl]+[C](か[Enter])、貼り付けは[Ctrl]+[V]、全選択は[Ctrl]+[A]などである(詳細は上のブログ参照)。
コマンドプロンプトの新しい強化機能は場合によっては非互換性の問題を起こす可能性があるので、設定によってオフにすることもできる。
以上の他にもいくらか機能強化点はあるが、まだTechnical Previewという仕様が確定していない段階でもあるので今回は触れない。実際の製品出荷までは1年以上あるので、最終的なWindows 10がどのようなものになるかは不明だが、その方向性は少しだが見えてきた(ような気がする)。まず、スタートメニューの改善でWindows 7以前のWindowsに慣れたユーザーへの便宜を図っている。その一方で、Windowsストアアプリをウィンドウ表示できるようにして(デスクトップアプリのように)使いやすくしたり、仮想デスクトップで機能強化するなどして新しいWindows OSを魅力的なものにしようとしている。今後必要になる、Windows VistaやWindows 7の後継OSとしての役割は果たせそうである。
だが、なかなか普及が進まないWindowsストアアプリのプラットフォームとしては、どうなるか分からない。Windowsストアアプリの挙動や操作性はデスクトップアプリケーション(やエクスプローラーなど)とはかなり異なっており、この両者が同じウィンドウの上で混在して動くことは、場合によってはユーザーに混乱をもたらすかもしれない。例えば、通常のデスクトップアプリケーションのオプションや設定メニューはウィンドウ上部からドロップダウンで開くが、Windowsストアアプリは画面右端から設定チャーム画面が開く、などの違いがある。PCに詳しくないユーザーがこのような違いに納得できるだろうか。今後のWindows 10の開発動向に注目したい。
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