OpenStackの“中の人”が語る「Juno」の狙い、次期バージョン「Kilo」の方向性とは?ITPro EXPO 2014

OpenStack Foundationのコミュニティマネージャー、トム・フィフィールド氏がITPro EXPO2014の講演に登場し、オープンなOpenStackコミュニティの性質をあらためて強調。ちょうどその日にリリースされたばかりの「Juno」の情報も飛び出した。

» 2014年10月20日 20時30分 公開
[高橋睦美@IT]

 「新しいアプリケーションには、新しいインフラが必要だ」――オープンソースのクラウド基盤構築ソフトウェア「OpenStack」の開発を取りまとめている非営利団体、OpenStack Foundationのコミュニティマネージャーを務めるトム・フィフィールド(Tom Fifield)氏は、2014年10月16日、「ITPro EXPO 2014」のセミナーにおいてこのように述べた。

OpenStack Foundation コミュニティマネージャー トム・フィフィールド氏

 フィフィールド氏によると、OpenStackのミッションは、さまざまな企業のビジネスをより素早く、より効果的なものにしていくことにあるという。

 過去のアプリケーションとは異なる、クラウドを前提とした新しいアプリケーションを動かすには、新規仮想サーバーの追加やネットワーク接続の追加、ストレージの追加やデータセンターをまたいだデータ移動など、次々と新たな要件に対応しなくてはならない。しかし、そうした要望が発生するたびにチケットを発行し、マニュアルで対応していてはビジネスのスピードに間に合わない。OpenStackならば、シンプルなAPIリクエストを送るだけでそうした環境を整えられる。それも、自動化された形でだ。

 こうした特徴により、「今やOpenStackは、業界を問わずありとあらゆるところで利用されている」(フィフィールド氏)。例えば自動車メーカーの独BMWではOpenStackを採用してサーバーファームの効率を向上させたし、米国の人気ドラマ「NCIS」の制作にもOpenStackのオブジェクトストレージが利用されているという。名前は明らかにされなったが、ある自動車メーカーでは、センサーで収集した膨大なデータの収集、分析基盤としてOpenStackとHadoopの組み合わせを採用した。それまで利用していたシステムに比べ、大幅なコスト削減を実現できたという。

 このOpenStackを支えているのが、業界全体にまたがるエコシステムだ。OpenStack Foundationには多くの企業が貢献しており、対応するサービスやハードウェアドライバーなどはOpenStack Marketplaceで確認できる。「全てを自力でやる必要はない」(フィフィールド氏)。

 フィフィールド氏はまた、ユーザーからの声を積極的にフィードバックしていることも、OpenStackプロジェクトの特徴だと述べた。「OpenStackの開発プロセスは、通常のものとは少しやり方が異なっている。その方向性は皆さんが決めるものだ」(同氏)。

 OpenStackはオープンデザイン、オープンデベロップメント、オープンコミュニティ、オープンソースという「4つの原則」に基づいており、開発プロセスや成果、今後の開発ロードマップはWeb上で公開され、誰に対しても透明性が確保されている。フィフィールド氏はこうしたプロジェクトの特質を紹介し、コードでの貢献という形だけでなく、要望のフィードバックやコードレビューなど、自分にできるさまざまな手段でぜひ参加してほしいと呼び掛けた。

成熟を求めた「Juno」のリリース

 「今日、この講演を聴きにきた皆さんはラッキーです。なぜなら、これから『Juno』に関する初めてのプレゼンを行うからです」――フィフィールド氏は講演の後半、このように述べ、10番目のリリースとなるJunoの主な機能を紹介した。

 フィフィールド氏が講演を行ったまさにこの日、OpenStackの最新リリース「Juno」が公開された。リリースノートによると、Junoでは300以上の新機能が追加され、また3000以上のバグが修正されている。

 フィフィールド氏によると、「Junoではまず、エンタープライズ向けのニーズを満たすために成熟度を高めた。新機能の追加はあえて抑え、バグ撲滅に取り組んだ。新しい基盤を作るため、安定性にフォーカスした」という。

 とはいえ機能面でも大きな進化があった。一つは、NFV(Network Function Virtualization)のサポート。もう一つはデータ処理サービスの追加で、HadoopとApache Sparkをサポートしている。他にも、ベアメタルドライバーの追加、スケジューラーの改善、オブジェクトストレージでのポリシーコントロールの柔軟性向上、IPv6サポートなどが主に加わった。また、アイデンティティサービスやデプロイ失敗時のロールバックなど、効率的な運用を支援する機能も追加されているという。

Kiloはベアメタルサービス関連機能の強化が軸に?

 フィフィールド氏はさらに、2015年4月に公開予定の次期リリース「Kilo」にも触れた。「現行のリリースでもサポートしているが、次のKiloでは完全なるベアメタルサービスを目指す」という。その先には、共有ファイルシステムの「Manila」、キューサービスの「Zaqar」、DNSサービスや鍵管理といったプロジェクトの統合も予定されているそうだ。

 いずれにせよ、どの機能が優先的に取り込まれていくかは、利用者の声次第。フィフィールド氏は、11月にパリで予定されている「OpenStack Summit」や、日本で2015年2月に開催される「OpenStack Days Tokyo 2015」、あるいは日本のコミュニティにぜひ参加し、声を聞かせてほしいと呼び掛けた。「OpenStackは、皆さんなくしては成り立たないのです」(同氏)

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