ドミノピザにあって、ピザハットにないものとは?Go AbekawaのGo Global!〜Udacity編(前)(3/4 ページ)

» 2014年12月16日 18時00分 公開
[取材・文 阿部川久広(Go Abekawa)、構成 鈴木麻紀,@IT]

企業が求めるニーズと学生が持つスキルのギャップ

阿部川 私が大学生の時にこのような講座があったら、きっとしっかり勉強できたでしょうね。勉強そのものはしなかった可能性もありますが(笑)。

シェン氏 今からでも遅くはありませんよ。私たちは2カ月前に、「Nanodegree(ナノディグリー)」というオンライン学位のプログラムを開始しました。このプログラムの特徴は、“nano(小さな)”という名前からもお分かりの通り、9カ月程度の比較的短い期間で、仕事を続けながら学習できる点です。まず入門からある程度の知識までを短期間で習得し、その後、シリーズで幾つかのクラスを受講し、Webの開発者になりたい、フルスタックのエンジニアになりたい、モバイル開発者になりたい、データアナリストになりたいといった希望の実現に向けて学習してもらうものです。

 講座は、現在シリコンバレーのトップ企業で仕事をしているエンジニアが行います。Googleのアンドロイド開発者が、ClouderaやMongo DBのデータサイエンティストが、FacebookやTwitterのエンジニアが講座を担当するのです。生徒は「シリコンバレー大学」で学習の機会を持てるのです。ハイテク企業のリーダーから実践的な内容の講座を聞くことでモチベーションが高まるでしょうし、その知識を元にどうやって実際の仕事に就けるかも聞けるでしょう。

 従来は有名な大学が授業を提供することが、その講座の質の高さを保証していたかと思いますが、NanodegreeはIT企業が、またIT業界全体がその価値を保証しているのです。

阿部川 講座の分野やカリキュラムはどのように決めているのですか?

シェン氏 多くのマーケティング的なデータを精査します。例えば「どの分野により多くの就職の機会があるか」「求人情報はどのようなスキルを必要としているものが多いか」などを常時調べています。

 実はそれで分かったことですが、米国では企業が求める人材のスキルと、新卒学生が持つスキルとの間に大きなギャップがあります。米国労働省の予測によると、2020年の終わりまでに、米国で140万人のコンピューターサイエンス関連のプログラマーが必要になるのですが、そのときまでにそのスキルを持って卒業する学生は、たったの40万人しかいません。そのギャップを埋めるにはどのような内容の講座を提供するべきか、何を知っていれば就職の機会があるか、そのように考えてカリキュラムを考えています。モバイルやクラウド技術に関する講座、フルスタックエンジニア、Webデベロッパー、あるいはベーシックプログラミングなどの講座があるのは、偶然ではありません。それが今、そして今後も、企業にとって必要となるスキルだからです。

 私たちのパートナーの一社である「Capital One」には、現在500人以上のプログラマーやデベロッパーの求人ポストがあります。もし可能なら、今日にでも500人のプログラマーが欲しいのです。「Bank of America」は、現在180人のプログラマー求人があります。Udacityはこのように市場の状況を調べ、また多くの企業がどのようなスキルを必要としているのかを聞き取り、それらを勘案してカリキュラムを決めています。

阿部川 求人のギャップは日本も同じ状況です。優秀なエンジニアやプログラマーが不足しているのはもちろんですが、ご承知の通り2020年にはオリンピックが東京で開催されます。あのような世界規模のイベントを実現させるには、多くのコンピューターテクノロジのプロが必要となります。

シェン氏 そうですよね。私は今後、日本や他のアジアの地域も同じような状況になると考えています。日本の企業もAndroidやiOSの開発者、フルスタックエンジニア、データ分析などの専門家が必要になるでしょう。そのときはまさにUdacityの出番です。

阿部川 現在Udacityが提供する講座は、IT業界、あるいはテクノロジに関するものがほとんどですが、それ以外の分野の講座も検討しているのでしょうか?

シェン氏 現在は、エンジニアやプログラマーといった、IT業界でもコアとなる技術関連の人材に向けた教育に焦点を当てていますが、近い将来はそれに隣接する分野にも対応する講座を考えています。具体的には、「起業するための講座」「プロダクトデザインの講座」「プロダクトマネジメントの講座」などです。

 現在のエンジニアは複数のメンバーによるチームで仕事をすることが多くなっているからです。企業が求める人材のポジションやスキルを考慮して、新しい講座が必要だと判断すれば、新講座を開設することになるでしょう。

 ただ、いわゆる総合的な教科を提供することはないと思います。もし学生が英文学や歴史、哲学、音楽、アートなどを学びたい場合は、Courseraをお薦めします。もちろんそのような分野を学習するのは素晴らしいことです。ビジネスからのみでは得られない視点が得られますし、ものの見方も広くなると思います。しかし私たちがそれらをあえて選んで投資することはないでしょう。先ほど述べた隣接分野の講座が現実的だと思います。

阿部川 それら隣接分野の講座はいつ開設予定ですか?

シェン氏 幾つかはすでに準備を始めているので、2015年には開設できると思います。複数の企業と協議していますし、協同で準備も進めています。

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