「米グーグル、KubernetesでDockerのライバルをサポート」の文脈コンテナの標準仕様は広がるか

米グーグルは2015年5月4日(米国時間)、同社が主導するコンテナオーケストレーションのオープンソースプロジェクト「Kubernetes」で、米CoreOSの提唱するコンテナの標準仕様、「App Container spec(appc)」をサポートすることを明らかにした。その文脈をお伝えする。

» 2015年05月05日 22時20分 公開
[三木 泉@IT]

 米グーグルは2015年5月4日(米国時間)、同社が主導するコンテナオーケストレーションのオープンソースプロジェクト「Kubernetes」で、米CoreOSの提唱するコンテナの標準仕様、「App Container spec(appc)」をサポートすることを明らかにした。Kubernetesは、appcを実装しているCoreOSのコンテナランタイムrktを通じ、この仕様をサポートする。

 Kubernetesはもともと、Dockerというコンテナイメージ形式/ランタイムにオーケストレーション機能を付加することで、コンテナアプリケーションの開発・運用を改善することを目的として始められたプロジェクト。グーグルが社内で開発・利用してきたコードを基にしている。

 米Dockerは、コンテナイメージ形式/コンテナランタイムとしてのDockerの人気に力を得て、Dockerを中心に据えたコンテナアプリケーション開発・運用環境の構築を進めている。この動きのなかで、Kubernetesは事実上、Dockerにグーグルの「お墨付き」を与えるものと受け止められてきた。

 今回発表されたKubernetesにおけるappcサポートは、上記のような認識が必ずしも正しくないことを明らかにする効果があるとも解釈できる。関連する動きとして、グーグルのベンチャーキャピタルであるGoogle Venturesは2015年4月、CoreOSに出資した。

「コンテナランタイムを自由に選び、併用できる」

 今回の決定に関して、グーグルのプロダクトマネージャーであり、Kubernetesの共同創始者のクレイグ・マクラッキー(Craig McLuckie)氏は、同氏のブログポストで、次のように説明している。

 「Dockerは、コンテナ技術を民主化し、外の世界が広くこれを利用できるようにするという点で、素晴らしい仕事を成し遂げてきた。私たちは、Kubernetesが今後もずっと、Dockerをサポートしていくだろうと考えている。(一方、)CoreOSもrktで面白いことをやり始めた。とても興味深い特徴を持つ、エレガントで、クリーンで、シンプルでオープンなプラットフォームをつくっている。コンテナ運用環境として、高いセキュリティと性能を提供できる可能性がでてきた。Kubernetesのチームは、CoreOSのappcチームと、これまで一緒に仕事をしてきており、多くの点で、彼ら(CoreOS)はKubrernetesを意識しながら、rktをシンプルでプラガブルなランタイムコンポーネントとして開発してきた(と理解している)」

 「とても素晴らしいのは、(今回のappcサポートによって、)Kubernetesを使うユーザーが、自身のワークロードのニーズに応じ、これに最適なコンテナランタイムを選べるようになったことだ。(コンテナ)クラスタ環境を入れ替えることなくランタイムを変更し、場合によっては、同一クラスタ上で異なるコンテナランタイムで動作する様々なコンポーネントを組み合わせたアプリケーションをつくることもできる。選択肢が増えることは、究極的にはエンドユーザーである開発者に確実なメリットをもたらすことになる」

appcはファウンデーションに移管される

 appcは、CoreOSが2014年12月に始めたコンテナ仕様開発プロジェクト。CoreOSは当初Dockerを支持していたが、その後、Dockerが独自のコンテナ運用機能を強化するためにエンジンを肥大化させ始めたことを批判するとともに、Dockerにはセキュリティ上の欠陥があるとして、appcプロジェクトを開始。同時に、DockerのライバルとなるコンテナランタイムRocket(rkt)を発表した。

 appcのテーマは、「構成の柔軟性」「セキュリティ」「イメージ配布の容易さ」「オープンさ」。またappcでは、プロセス管理でsystemdを使うなど、基盤となるLinuxの機能を最大限に活用し、それ自体はコンパクトなコードであることに努めようとしている点が特徴だ。

 CoreOSのrktは、appcを実装した初めてのコンテナランタイム。だが、appcが成熟するに従って、これに準拠する他のコンテナランタイムが登場することは十分考えられる。

 CoreOSは2014年5月4日に、ファウンデーションを設立し、appcをこれに移管することを発表した。同ファウンデーションには、グーグル、ヴイエムウェア、レッドハット、Appceraが参加する。グーグルはappcのメンテナーとして参加。ヴイエムウェアはProject Photonで、appcを具体的にサポートすると発表している。

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