EXILEのコンサートを諦めることは、「5000円−4000円=1000円」の利益を放棄することになるので、正解は(2)だ。できただろうか。
もっとも読者は、不正解でもがっかりするには及ばない。この問題は、経済学部の学生を相手に出題しても正解率が低く、経済学の常識を日常に当てはめて考えることが難しい例として有名なものだからだ。
機会コストを考える際にビジネスパーソンが常に考えるべきなのは、「時間」の費用だろう。
例えば、通勤に片道30分かかる場所から60分の場所に引っ越すと、通勤時間が毎日1時間延びる。毎月20日出勤するなら20時間だ。
年収が1千万円の人が年に250日、1日8時間働くと計算すると、1時間当たり5000円稼いでいることになり、遠距離通勤の機会コストは、毎月ざっと10万円になる。
会社が1時間5000円払うということは、その労働は会社にもっと大きな収入をもたらしているのだから、この見積もりは小さ過ぎるかもしれない。加えて、長時間通勤の疲れやストレスの影響も計算する必要がある。
こうした計算ができると、タクシーを使うか使わないかといった意思決定の損得計算が納得して行えるようになる。ビジネスパーソンは自分の「時間の値段」を知っておくべきだ。
もう一つやってみよう。一冊3000円で、読むのに4時間かかる本の総合的なコストはいくらだろうか。
「年収1千万円の人の時給は5000円」という数字を使うと、この本のコストは2万3000円ということになる。
多くのビジネスパーソンにとって、読書はそれにかける時間のコストの方が高く、本代そのものは案外安い。ならば、気になった本は買ってしまって、読むか読まないか、あるいは、どこを何分かけて読むかを後で厳密に判断するといい。
二つ目の概念は「サンクコスト(埋没費用、sunk cost)」だ。すでに使用してしまって、戻ってくることのない費用(金・時間・労力など。利益も含む)を指す。
サンクコストを理解するために、次の問いに答えてみてほしい。
これまで建設費に3000億円掛かった工事中のダムがあるとする。完成までにさらに2000億円の費用が必要だが、完成後には、治水の改善や電力利用などで3000億円のメリットがある。工事は続けるべきか
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