グローバルに打って出るという計画を立てて議論を進めていくと、多くの場合、現地法人設立、あるいは現地駐在が選択肢の中に入ってきます。同時に「そもそも現地に赴任できる(社員がいる)のか?」という疑問が出ます。最終的に現地に赴任するかどうかは置いておいて、赴任可能(な社員がいる)かどうかが早く分かれば分かるほど、その後の議論が進みやすくなります。
そこで、グローバルに打って出る第1歩として、現地赴任候補者はできるだけ早く、進出を検討している現地に行ってみましょう。旅行や視察ツアーでも行けますが、おすすめは2週間(最低1週間)、現地で仕事と生活をしてみることです。
現地での調査・準備が重要なのは言うまでもありませんが、初回は海外進出準備のみを目的として行くのではなく、日本で普段行っている業務をそのまま現地でも行ってみてください。この体験を通じて、下記3点をはっきりさせます。
「PCを持っていくので、インターネットと電源さえあればコードを書くのは問題なし!」となるのかならないのか、現地に2週間いると分かります。ネットワークのスピードや電源事情をはじめとした仕事の環境、食事や移動手段などの生活環境も見えてきます。
そもそも自分が属しているチームや会社は、メンバーの一部が遠隔地に(時差がある場所に)いる場合でも、仕事がスムーズに進むのかも体感できます。これらの点がはっきりすると、海外進出の議論が大分具体的になってきます。日本側で工夫や改善が必要な点も見えてくるでしょう。
私はこの春ベトナムに行きました。ホーチミンに2週間の滞在です。目的はもちろん、先に述べた通り「海外で働く」ことの現実感を得るためです。
最初の数日はホテルやカフェで、その後はすでに現地に進出されている方のオフィスに居候させていただき、仕事をしました。それにより、ベトナムのインターネット回線や電源事情を体感して、日本での仕事がホーチミンでも問題なく行えることが確認できました。日本のメンバーとの連携についても、Skype会議が予想以上に快適に行え、(工夫の余地はあるものの)特段支障がないことも分かりました。
そして、生活はどうか。仕事の環境と異なり、現地で生活できるか(環境を受け入れられるか)の基準は人によって差があります。私はパクチーが苦手なので食べ物が受け入れられるかが一番気になっていましたが、結果は「まったく問題なし」でした。ベトナムではほぼ全ての食べ物にパクチーが入っている(はず)という見当違いな思い込みは、数日で解消しました。
この時点で、自分がホーチミンで働くことについては、かなり現実的な感触を得られました。開発拠点立ち上げについては、現地での情報収集の結果「現地法人設立で進めよう」という結論になりました。ここまでが最初の1週間です。
その後は、とにかく現地で準備できることをやりきりました。アパートを借りて住み始め、生活環境を整え、並行して現地法人設立の準備も進めました。
初めてのベトナムでしたが、最後の方はもうずっと住んでいるのではないかという感覚になりました。オフィスも決め、現地採用の初期メンバー1人に内定を出したところで、帰国です。
今回は、グローバル化を具体的に考え、「海外で働く」という考え方に現実感を与えるまでのステップ、そして私がこのステップを踏んだ流れを簡単に紹介しました。
「そんな簡単にものごとが進むはずはない」とお思いの方も多いと思います。確かにその通りで、個々人やチーム、会社、進出先の国によって事情はさまざまです。ですが、思ったより簡単に進むのか、それとも難しいのか、それすらも第一歩を踏み出さない限りは分からないものです。ぼんやりとでも「グローバル」が頭に浮かんでいる方は、ぜひその具体化に動いてみてください。
次回以降はさらに具体的に、現地で働き始める、現地法人を立ち上げる過程で起こったこと、気付いたことをお話ししていきます。
株式会社インタレストマーケティング 執行役員
Interest Marketing Vietnam 代表 渡辺友太
2012年、早稲田大学大学院基幹理工学研究科卒。日本マイクロソフトに入社しクライアント系技術担当のエバンジェリストを務める。クロスプラットフォーム開発の他、スタートアップ支援などに取り組んだ後、2015年4月より現職。現在は、日本国内の新規事業および海外支社立ち上げを担当。
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