次第に広まっていくWindows 10だからこそセキュリティは気になるところ。新機能「Wi-Fiセンサー」によるセキュリティ上の影響と対策をシステム管理者の視点で解説。
対象OS:Windows 10
新たにWindows OSが登場すると、たとえ自分自身が当面使わないとしても、プライバシーやセキュリティといった点は気になるところだ。例えば、他人が使っているWindows 10のせいで自分(あるいは自社や自分の家庭など)のセキュリティが脅かされるのは、誰しも避けたいだろう。
本TIPSでは、Wi-Fiネットワークのセキュリティに関わるWindows 10の新機能「Wi-Fiセンサー(Wi-Fi Sense)」の注意すべき挙動と、セキュリティ上の対策についてシステム管理者の視点で解説する。
Wi-Fiセンサーをひと言で説明するなら、Wi-Fiネットワークの接続情報をWindowsユーザー間で共有することで、Wi-Fi経由のインターネットアクセスをもっと簡単にするための機能だ。
Wi-Fiセンサーの機能は次の2つに大別される。
前者については、オープンなWi-Fiだと通信内容が傍聴される危険性が高いという問題はあるにせよ、一般に公表されている接続情報がWi-Fiセンサーによって共有/提供されることに大きな問題はないだろう。
気になるのは後者だ。上記の説明だけでは「社内のWi-Fiに接続しているユーザーから、その知り合いにSSIDや暗号化キー(パスワード)が漏えいする!?」と疑っても無理はない。
Wi-Fiセンサーでは、以下のような仕組みでWi-Fiの接続情報を他者と共有する。
Wi-Fiセンサーによって、暗号化キーを知らない人が対象のWi-Fiに接続できるようになるには、複数の前提条件がある。また接続できたとしても、その利用には制限がある。
■Wi-Fiネットワークごとに明示的な許可が必要
Wi-Fiセンサーで接続情報を共有するには、上図の「社内スタッフ」側が対象のWi-Fiネットワークごとに共有を明示的にオンにする必要がある。Wi-Fiセンサーを有効化したからといって、即座に全ネットワークの共有が始まるわけではない。
■Windows 10/Windows Phone 8.1/Windows 10 Mobileが対象
Windows 10以外のOSを搭載したPCでは、Wi-Fiセンサーによる共有は利用できない。一方、Windows Phone 8.1や登場予定のWindows 10 Mobileを搭載するモバイル機器では、Wi-Fiセンサーが利用できるとのことだ。
■Wi-Fi接続情報の「又貸し」は不可
上図の「つながり」のある人達から、そのまた「つながり」のある人達に対して社内Wi-Fiの接続情報が提供されることはない。あくまでも直接「つながって」いるユーザーだけに限定される。
■IEEE 802.1Xが導入済みのWi-Fiは共有されない
IEEE 802.1Xによる認証が求められるWi-Fiネットワークの場合、Wi-Fiセンサーを有効にしても、その接続情報は共有されない。
■暗号化キーそのものは閲覧できない
上図の「つながり」のある人達は、Wi-Fiの暗号化キーそのものを閲覧することはできない。また、この暗号化キーは通信路上でも保存先のマイクロソフトのサーバー内でも暗号化され、平文で露出することはないとされる。
■共有されたWi-Fiではインターネットへのアクセスのみが可能
上図でいえば、「つながり」のある人達は社内Wi-Fiに接続できるものの、そこからインターネットへのアクセスのみが許可される。Wi-Fiネットワークにつながっているイントラネットやその他のネットワーク機器へのアクセスはできない。
以上のように、Wi-Fiセンサーによって無制限にWi-Fiの暗号化キーが漏えいしたり、接続できる人がどんどん増えたりするわけではないことは分かる。それでも問題点はある。
一つは、友達として、あるいは連絡先に登録されている全員に対してWi-Fiの接続情報が提供されることだ。連絡先から特定の人だけ選んで提供を許可/禁止することはできない(Facebook/Outlook.com/Skypeというサービス単位で許可/禁止することは可能)。
もう一つは、いくら社内リソースへのアクセスが禁止されるといっても、インターネットへのアクセスだけで何らかの不正行為が行われる可能性が残ることだ。
少なくとも社内Wi-Fiのように、エンドユーザーとシステム管理者が分かれている環境では、誰なのかすぐに分からない人が社内Wi-Fi経由でインターネットにアクセスできる、という事態は避けるべきだろう。
以下では、システム管理者の視点で、Wi-FiセンサーによってWi-Fiの接続情報が意図せず「共有」されるのを防ぐ方法を解説する。
本来は、社内Wi-Fiに接続する全てのWindows 10マシンに対し、Wi-Fiセンサーの無効化を強制したいところだ。しかしそれは、私物PC(いわゆるBYOD)も含めて、ユーザーがむやみに設定を変更できないようにPCをしっかり管理/監視している環境でないと難しいだろう。
一方、共有されたくないWi-FiのSSIDに「_optout」という文字列を加えると、Wi-FiセンサーはそのWi-Fiを共有対象から外す。例えば現在のSSIDが「MYWLAN1」となっているなら、「MYWLAN1_optout」「MY_optout_WLAN1」のように変更すればよい。
SSIDの変更手順はWi-Fiアクセスポイントによって異なるので、アクセスポイントの取扱説明書などを参照していただきたい。また、SSIDを変更した場合は、クライアント側でも設定を変更して再接続する必要がある。
その他の対策としては、Wi-FiネットワークにIEEE 802.1Xの認証システムを導入することが挙げられる。企業であれば、むしろこちらの方が「真っ当」な対策といえる。ただ、SSIDの変更に比べて手間やコストが大幅に増える点は覚悟する必要がある。
Windows 10のGUIから手動で無効化するには、[設定]アプリを開いて[ネットワークとインターネット]−[Wi-Fi]−[Wi-Fi設定を管理する]とクリックして表示された画面で、以下のように設定にする。
Windows 10のセットアップ時に無効化したり、グループポリシーやレジストリ設定で無効化したりする手順については、次のページが参考になる。
なお、Windows 10をインストールした際に[簡単設定を使う]を選択した場合は、Wi-Fiセンサーが最初から有効になる。具体的には、上の画面の(1)(2)がそれぞれオンになる。それでも、前述したようにWi-Fiネットワークごとに共有を明示的に有効化するまで、「クローズド」なWi-Fiの接続情報の共有は始まらない。
■関連リンク
■更新履歴
【2015/08/24】[簡単設定を使う]と指定してWindows 10をインストールした場合、Wi-Fiセンサーは最初から有効になるものの、「クローズド」なWi-Fi接続情報の共有がすぐに始まるわけではないことを追記しました。
【2015/08/24】初版公開。
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