米マイクロソフトがPowerAppsを発表、業務アプリをノンプログラミングで作成Microsoft Azureで提供

米マイクロソフトは2015年11月30日、一般ビジネスユーザーが、モバイル対応の業務アプリケーションをノンプログラミングで作成、共有できるMicrosoft Azure上のサービス、「Microsoft PowerApps」を発表した。複雑なアプリケーションの作成も可能。

» 2015年12月01日 08時00分 公開
[三木 泉@IT]

 米マイクロソフトは2015年11月30日(現地時間)、スペイン・バルセロナで開催したカンファレンス「Microsoft Convergence 2015 EMEA」で、Microsoft Azure上の新サービス、「Microsoft PowerApps」を発表した。現在はクローズドベータテストの段階で、正式提供時期は明らかにしていない。

 これはだれでもがノンプログラミングで、業務アプリケーションを作れるツールを提供するサービス。「Project Siena」がベースになっているようだ。スマートフォンあるいはタブレット用の、ネイティブなアプリを作成可能。オフラインで利用し、ネットワーク接続が利用できるようになった時点でデータを同期する機能も、意識することなく作りこめる。

 PowerAppsでは、データの表示・追加・更新や、ワークフローを組み込んだアプリケーションを、簡単に作成できる。Azure上のアプリケーション開発環境、「Azure App Service」との密接な連携で、複雑なアプリケーションを構築することもできる。

データソースを選択するだけでアプリケーションが自動生成

 PowerAppsでは、データを閲覧するアプリケーションを、例えば次のような手順で手っ取り早く作成できる。

 まず、OneDriveなどに、データが登録されたExcelテーブルを保存しておく。その後、Power AppsからこのExcelテーブルへのコネクションを作成する。次にこのコネクションを選択すると、それだけで、データの一覧表示、詳細表示、編集の3つの画面を備えたアプリケーションが、自動的に生成される。画面レイアウトは、画面に示されている選択肢から選ぶことで、変更できる。その後のフィールド、コントロールの追加や編集ももちろん可能。

自動的に作成されたアプリケーションのデータ一覧画面で、各フィールドの表示項目を選択により変更しているところ

 PowerAppsの初期画面では、アプリケーション作成方法として「データから始める」「テンプレートから始める」「最初(スクラッチ)から始める」の3種類が提示される。上記は「データから始める」の場合だ。「テンプレートから始める」では、現在のところ、イベントへの参加登録管理、サービスデスク、セールスオポチュニティ管理、アンケートの4種類が用意されているようだ。この作成方法では、テンプレートを選択し、データをどのサービス上に置きたいかを選ぶだけで、アプリケーションが生成される。

 スクラッチから始める場合は、フィールドやコントロールにアクションを割り当てていくことになる。論理フローに基づくアプリケーションも作成でき、マイクロソフトのPowerAppsサイトでは、購読しているツイートで、特定の文字列が出現したら、自動的に電子メールを送信するというアプリの例を示している。

 作成したアプリケーションの他ユーザーとの共有は、Active Directoryとの連携で、共通したいユーザーを、編集可・不可の権限設定とともに指定するだけでいい。

 PowerAppsでは、データソースとして、OneDrive/GoogleDrive/Dropbox上のExcelファイル、SharePont Onlineのリスト、Office 365、Google Sheets、Salesforce、Dynamics CRMがデフォルトで利用できる。無料プランでも、各ユーザーが2つまでのデータソース接続を利用できるという。「Enterprise」プランでは、オンプレミスの多様なデータソースを無制限で利用できる。この場合、データはいったんAzureを経由することになるが、Enterpriseプランでは、他のクラウドユーザーと分離された、各組織専用のAzure App Service環境(マイクロソフトは「App Service Environment」と呼んでいる)を活用できる。ネットワーク的にもAzureの他のユーザーと切り離され、あたかも社内ネットワークの一部であるかのように運用できる。

 このように、PowerAppsは、社内のビジネスユーザーがプログラミングのスキルなしに業務アプリケーションを作れるサービスだ。だが、マイクロソフトは、アプリケーション開発者の価値が損なわれるものではないと強調している。

 PowerAppsは、Azure App Serviceを土台として使っている。このため、開発者はAzure App Serviceを活用して、複雑な機能を開発し、SwaggerによりREST APIを生成できる。これらのAPIを、アクセスセキュリティをはじめとした管理の下で、ビジネスユーザーに提供できる。

PowerAppsのアーキテクチャ。Azure App Serviceを土台としている。「App Service Environment」は、各ユーザー組織専用のAzure App Service環境

 つまり、PowerAppsでは、マイクロソフトによるデータコネクションおよびAPIと、各組織によるデータコネクションおよびAPIを、横並びでビジネスユーザーに提供できる。

 PowerAppsでは、ビジネスユーザー自身によるちょっとした業務アプリケーションの作成に加え、より複雑なアプリケーションの迅速なプロトタイピングが可能になる。マイクロソフトでは、各種業務アプリケーションのモバイル対応や、社外ユーザーも含めたデータの安全な共有、古いアプリケーションの再生などにも活用できるとしている。

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