部活やサークルでやっていたこと「そのもの」は無理でも、楽しいと感じた「要素」ならば、仕事に生かせるかもしれません。
例えば筆者は、楽器の演奏を通じて次のような「楽しさ」を感じました。
一つ目は、「やればやるほど上達する成長感」でした。27年ぶりに楽器に触れた当初は、きれいな音が出ませんでした。しかし練習すればするほどいい音になり、楽しくなりました。
二つ目は、「みんなでやる面白さ」です。一人で練習するのもいいのですが、何人かで「音を重ねる」ことがこんなに楽しいものだということを、あらためて感じました。
三つ目は、「厳しさを乗り越える達成感」です。中学生との合同練習では音楽の先生から、「楽譜の通りに」「隣の音をもっと聞いて」「ここはもっと鳴らせて」などの指導を受け、厳しいと感じるシーンも多々ありました。けれども、厳しい練習をしてより良く演奏できるようになると、楽しさが沸いてきました。
このように、楽しく感じた「要素」を洗い出してみてあらためて思ったのです。「ボクは、成長感や、みんなでやることが好きなんだな」と。「『楽しさ』を味わいたいから厳しい練習もするし、厳しい練習をするから『楽しさ』が味わえるんだよな」と。
そんなことを考えていたら、「あ、仕事で感じる『楽しさ』も同じだ!」と思いました。今までできなかったことができるようになるとうれしいし、信頼できる人たちと仕事ができると楽しい。思い通りにならないこともあるし、悔しい思いをすることもたくさんあるけれど、それを乗り越えた後に味わう「楽しさ」は格別です。
「楽しい」と感じる要素は、音楽も仕事も共通しているのかもしれません。
私たちが物事を認知する流れを考えてみましょう。
私たちは「視覚」「聴覚」「嗅覚」「味覚」「触覚」の五感を通して、情報を受け取っています。実際にはさらに細かく、視覚なら「色」「形」「明るさ」「彩度」「動き」「距離」「位置」、聴覚なら「音の大きさ」「音程」「スピード」「リズム」「聞こえてくる位置」、触覚なら「温度」「湿度」「感触」「重さ」「圧力」などの要素で受け取っています。「視覚」の「色」には、さらに細かな要素があります。
それらの細かい要素の情報を組み合わせて、赤くて丸い物体なら「これはリンゴ」、メロディを奏でるものなら「これは音楽」、丸いボールを蹴る行為を「これはサッカー」とラベル付けし、認知しています。
このように、私たちが情報を処理している単位は、五感を通じた細かな「要素」で成り立っています。これを、専門用語では「サブモダリティ(五感の従属要素)」と言います。
「音楽が楽しい」「サッカーが好き」のような、「楽しい」「好き」という感覚も、「音楽」や「サッカー」の中にある、何かしらの「要素」に反応しているのではないかと、筆者は考えます。
「音楽が楽しい」でも、「歌うのが楽しい」「演奏するのが楽しい」「曲を作るのが楽しい」「詩を作るのが楽しい」など、何に「楽しさ」を感じるかは人それぞれ異なります。「演奏するのが楽しい」の中にも、「一人で」「みんなで」「細かなテクニックを磨く」「世界観を作る」など、いろんな「楽しさ」があるでしょう。
しかし通常はそこまで深く考えずに、「音楽が楽しい」くらいにざっくりと捉えています。
そこで、過去に夢中になっていたことの中にある、「楽しい」と感じる要素が何かを見つけてみましょう。今まで意識していなかった「楽しさ」が分かるかもしれません。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.