OpenPOWER Foundationに続き、オープンな低消費電力RISCプロセッサ開発にIT大手企業が複数参加。プロセッサでもオープンなエコシステム形成が進むかもしれません。
ARM並みの省電力で動作するオープンで新しいRISCプロセッサ用命令セットの開発を目指す団体「RISC-V」(リスクファイブ)に、グーグル、オラクル、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)などが参加すると、米『EE Times』が報じています。
まだRISC-Vからの正式発表は行われていませんが、RISC-Vの公式ツイッターアカウントがEE Timesの記事を紹介しています。
また、2016年1月5日(米国時間)に行われるイベント「3rd RISC-V Workshop」は、オラクルがホストとして会場を提供し、アジェンダの中にグーグルやHPEなどのセッションがあることが確認できます。恐らくこのイベントで、これらの企業の参加が発表されるものと予想されます。
RISC-Vはカリフォルニア大学バークレイ校のコンピュータサイエンス科が開始したプロジェクトで、創立メンバーにはRISCプロセッサの基礎を築いた計算機科学者のデイビッド・パターソン博士らがいます。パターソン博士が主導して開発した「バークレイRISC」は、その後サン・マイクロシステムズが「SPARCプロセッサ」として商用化しました。
RISC-Vは当初は教育に使うための命令セットとして始まりましたが、現在ではRISC-V Foundationの下で商業用プロセッサの命令セットの開発を目指しています。
RISC-Vの目的は、完全にオープンで自由に使える命令セットアーキテクチャの開発です。命令セットはBSDオープンソースでライセンスされます。
この命令セットをx86やARMの実行速度と比較した場合、実装に依存するとの断り書きを加えつつも「We believe there are no fundamental reasons that a RISC-V implementation should be less efficient than x86 or ARM」(RISV-Vの実装がx86やARMよりも非効率になるだろうという根本的な理由があるとは思えない)とし、電力効率においてもARMプロセッサに劣らないものが実現できるとFAQで説明されています。
オープンなプロセッサの開発は、POWERプロセッサをベースにし、IBM、グーグル、エヌビディア、メラノックス、カノニカルなどが参加する「OpenPOWER」や「OpenRISC」などがあります。
グーグルはOpenPOWERへも参加しており、x86以外のプロセッサアーキテクチャへの関心を絶やさないように動いているように見えます。HPEはかつてPA-RISCプロセッサを開発し、現在ではインテルと共同開発したItaniumをPA-RISCの後継として抱えています。オラクルはサン・マイクロシステムズを買収し、現在でもRISCプロセッサの代表的存在といえるSPARCを作り続けています。
現時点でこれらのベンダーがRISC-Vへの参加を表明したことは、今後のRISCプロセッサの動向を見る上で興味深い動きだといえるでしょう。
OSやミドルウェア、クラウド基盤ソフトウェアなど、ソフトウェアの分野ではオープンソース化が進むなかで、プロセッサの分野は企業独自のアーキテクチャが主流です。果たしてこの分野でのオープン化は進んでいくのでしょうか?
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