USBの新しいコネクタ/ケーブルの規格「USB Type-C」を採用したデバイスが増えてきた。このUSB Type-Cは、これまでのUSBコネクタ/ケーブルとどのような点が異なるのだろうか。その特徴を紹介する。
新しいスマートフォン(スマホ)に買い替えたら、これまでのMicro-USBケーブルが挿さらない、ということになるかもしれない。Micro-USBに似ているものの、これまでのMicro-USBコネクタとは異なる、新しいコネクタ規格「USB Type-C(以下、Type-C)」を採用したスマホが登場してきているからだ。
■USB 3.0のMicro-Bコネクタ
■USB Type-Cコネクタ
Type-Cは、新しいケーブルとコネクタの規格で、他のUSBコネクタ/ケーブルと同様、非営利の標準化団体の「USB Implementers Forum(USB-IF)」によって規格化された標準規格である。
USB 1.x/2.0では4ピン(半二重通信のみをサポート)、USB 3.0では9ピン(従来との互換ピン4本+新規追加5ピン。全二重通信をサポート)だったのに対して、Type-Cでは24ピンと、大幅にピン数が増えている。これは、USB 3.0ケーブル2本分とさらにいくらかの制御線を収容して、リバーシブル接続や「オルタネートモード」(後述)などをサポートするためだ。
これまでのUSBコネクタは、コネクタの表裏が決まっていたため、上下方向の間違いでケーブルをコネクタに挿せずにイライラした経験は誰にでもあるはずだ。Type-Cのコネクタは、リバーシブル構造でコネクタの表裏がなく、どちらを上の面にしてもケーブルを挿せるため、こうしたイライラから解放されることになる。
その半面、Type-Cコネクタは従来のUSBコネクタと互換性がなく、従来のUSBケーブルが使えないというデメリットもある。
Type-Cは、USB 3.1と同時にUSB-IFから規格が公開されたため、USB 3.1のコネクタ/ケーブル規格がType-Cである、という誤解が一部にあるようだ。
しかしType-C自体は、新しいUSBのコネクタ/ケーブルの独立した規格であり、Type-Cコネタクを採用したUSB 2.0やUSB 3.0規格のコネクタ/ケーブルというのも可能だ。逆にUSB 3.1も従来のUSB 3.0と同じコネクタによる提供も可能となっている(USB 3.0については、「用語解説:USB 3.0(Universal Serial Bus 3.0)」「PCハードウェア強化ラボ:第2回 普及し始めた高速インターフェイスUSB 3.0」参照のこと)。
つまり、信号線などのインタフェース仕様と、コネクタの形状は別に確認が必要だということだ。実際、USB 3.1かつType-Cのコネクタを持つ最新のスマートフォンを購入したとしても、PC側がUSB 2.0/3.0のType-Aの従来型コネクタなら、接続にはType-AのコネクタとType-Cのコネクタを持つUSB 3.1ケーブルが必要になる。
なおUSB 3.1は、USB 3.0の2倍となる10Gbit/sec(「SuperSpeed USB 10Gbps」と呼ばれる)のデータ転送速度を実現している。その上でUSB 3.0やUSB 2.0との下位互換性があり、それらをサポートした周辺機器を接続することが可能である(これにより、USB 3.1対応スマートフォンをUSB 3.0搭載PCに接続してデータ交換するなどが可能になる)。
USB 3.0までは、ホスト側とデバイス側のコネクタが異なっており、ホスト側(PC側)がAコネクタ、デバイス側(周辺機器側)がBコネクタといったように形状が異なるコネクタとなっていた。一方Type-Cでは、ホスト側もデバイス側も同じType-Cポートを使用する。そのためUSBケーブルは、ホスト側とデバイス側ともに同じType-Cコネクタとなる。Type-Cでは、ケーブルをつないだ機器同士が通信を行い、どちらがホスト側となるのか、デバイス側となるのかを決定する。
Type-Cコネクタは、最大で20V 5A(100W)の電源出力をサポートする、という誤解もあるようだ。しかしType-Cと、100Wの電源出力が規定されたUSB Power Delivery(USB PD) Specificationは異なる規格であり、Type-Cなら必ず100Wの出力をサポートしているというわけではない。
ただType-Cでは、USB PDで規定された100Wの出力がサポート可能となっているので、これをサポートしている機器であれば、バッテリーの充電時間が短くなったり、より電力消費の大きな周辺機器をUSBケーブルのみで稼働させることが可能になったりする。
Type-Cコネクタは、「オルタネートモード」という制御モードをサポートしている。これは、USB 3.0互換のデータ信号線の一部を、別の信号の送受信に利用する機能である。USB以外の信号も送受信できる。
例えば、MacBookではこのモードを利用して、別の高速インタフェース規格である「Thunderbolt 3」をType-Cコネクタで提供している。この他にもオルタネートモードを利用すれば、映像信号(HDMIやDisplayPortなど)をType-Cコネクタから出力するといったことも可能になる。
既にGoogleのスマホ「Nexus 5X/6P」では充電・データ転送用のコネクタとして、アップルのMacBookやASUSの「TransBook T100HA」などのPCでも拡張インタフェースとしてType-Cを採用している。今後、USBの新しいコネクタ規格として普及していくことになるだろう。
Type-Cでは、既存のUSBケーブルは利用できないし、周辺機器においても変換ケーブルなどを利用する必要が出てくる。購入するPCやスマホのUSB端子がType-Cコネクタなのか、既存のものなのかは事前に確認しておくとよいだろう。
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