IoTからスパコンまで、階層・分散ネットワーク型気象予測システムで社会は変わるかJAMSTECとNTTがコラボ

国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)とNTTは、階層・分散ネットワーク型気象予測システムの共同研究を始める。JAMSTECの「地球シミュレータ」と、NTTのエッジコンピューティングを活用する。

» 2016年02月10日 16時24分 公開
[@IT]

 国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)とNTTは2016年2月9日、階層・分散ネットワーク型気象予測システムの共同研究を始めると発表した。JAMSTECの「地球シミュレータ」と、NTTのエッジコンピューティング技術を活用し、内閣府がとりまとめた第5期科学技術基本計画の「超スマート社会」の実現に向けた基礎技術開発を進める。2019年3月末までに技術的な研究開発を進め、最終的にはモデル地域で実証実験を実施して、有効性や可能性を検証する予定だという。

 JAMSTECは、地球規模から都市・街区スケールまでの気象を予測するシミュレーションモデルを地球シミュレータ上で開発している。一方NTTは、スマートフォンやIoTデバイスなどで収集した情報を、デバイスに近い地域にあるサーバ(エッジサーバ)で分散処理する「エッジコンピューティング」の基盤技術を開発している(NTTではこれを「エッジコンピューティング構想」と呼んでいる)。共同研究では、これらの技術を組み合わせることで、地域分散型気象予測の精度向上を図るという。

エッジコンピューティング構想(出典:NTT) エッジコンピューティングでは、端末に近い設備で一定の処理を行うため、通信量が削減でき、中央サーバの処理性能に依存しにくい。NTTでは「リアルタイム性を要求するサービス(ゲーム、交通制御など)やサーバとの通信の頻度・量が多いデータ処理など、新たな領域のサービスの実現を目指したもの」と説明している

 具体的には、センサー群のデータを各地に分散配置するエッジサーバで収集、他の要因と掛け合わせて気象を予測。さらに、各エッジサーバの予測データを統合し、地球シミュレータで得られた予測情報と組み合わせて解析することで、広域気象の予測精度の向上につなげるという。最終的な予測データを個人が利用するデバイスに自動配信するようなサービスの実現も目指しているという。

共同研究の概要(出典:NTT)

 技術開発の背景として、NTTでは近年のいわゆる「ゲリラ豪雨」や猛暑といった極端な気象現象や災害の頻発を挙げている。今回発表した共同研究では、局所的で高精度な気象予測を実現し、ゲリラ豪雨や猛暑が予測される際に交通やエネルギー供給などの都市活動を最適化したり、激甚災害時の防災のために装置を最適配置したりして、個人、企業、社会の要求に基づいてIoTを制御し利便性や安心・安全を向上する「超スマート社会」の実現を目指すとしている。

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