「老害」「キラキラミドル」あなたはどっち?――40、50代エンジニアに必要な「能力観」田中淳子の“言葉のチカラ”(28)(2/2 ページ)

» 2016年03月14日 05時00分 公開
[田中淳子@IT]
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変化をいとわない「キラキラミドル」エンジニア

 ある企業で、プレゼンテーションスキル研修の講師を担当したときのことだ。

 30〜40代ばかりの参加者の中に、50代のベテランエンジニアがいた。彼は、「部を代表して受講しに来ました。ここで学んだことを部に戻って若手に伝えたい」と受講目的を述べた。

 それだけでも「スゴいなぁ」と思ったし、実際に彼のプレゼンはとても上手だった。それなのに、研修1日目の終了時に、「自分の在り方やスタイルについて気付いたことがたくさんありました。若手に伝えるために参加したつもりだったけれど、私自身の勉強になっています」と感想を口にしたことに驚いた。

 とても熱心にメモをとっている様子が印象的だったので、何をメモしていたのか尋ねると、「田中さんの説明や、参加メンバーの発言から得た気付き、自分の改善点などです」と答えてくれた。

 「『頑固』で『変わろうとしない』中高年」の悩みをいつも若手から聞かされていたので、「『長年このスタイルでやってきた』とやり方を変えなかったり、他者からのフィードバックを受け止めなかったりするベテランが大勢いるのに、他の参加者の意見を参考にしたり、ご自身のやり方を変えようとしたりするのはスゴイですね」と伝えたところ、彼はこう応じた。

 「私、自分にはまだ多くの『ポテンシャル』があると信じているんです。だから、勉強したら変われると思っているんです」

成長できる人が持つ「拡張的能力観」

 「多くのポテンシャル(可能性)があると信じる」とは、何と心強い言葉だろう。

 50代なんて、まだまだだ。60歳定年制が廃止され、65歳まで、あるいは70歳を超えて働く人も増えてきた。50歳とは「今後15年も20年も職業生活が続く」年齢である。40代も50代も先は長い。

 心理学者キャロル・ドゥエック氏によると、人には2つの能力観があるという。

 「人の能力は固定である」と信じる「固定的能力観(Fixed Mindset)」と、「人の能力は、努力次第でいくらでも向上する」と信じる「拡張的能力観(Growth Mindset)」。「ポテンシャル」があると信じると、人はいくらでも成長できる。研修に参加した50代のエンジニアは、後者の能力観を持っているのだろう。

 自分には、まだポテンシャルがあると信じる――30代でも20代でも、どの年代の人にも通じる良い考え方だ。

筆者プロフィール  田中淳子

 田中淳子

グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー

1986年 上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで、延べ3万人以上の人材育成に携わり28年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。

日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。著書:「ITマネジャーのための現場で実践! 若手を育てる47のテクニック」(日経BP社)「速効!SEのためのコミュニケーション実践塾」(日経BP社)など多数。電子書籍「『「上司はツラいよ』なんて言わせない」(ITmediaのebook)、「田中淳子の人間関係に効く“サプリ”――職場で役立つ30のコミュニケーション術」(ITmediaのebook)

ブログ:田中淳子の“大人の学び”支援隊!


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