「Azure Marketplace」は、ISVが自社のソリューションを世界のMicrosoft Azureユーザーに提供できるようにするオンラインマーケットプレースです。2016年1月より、日本国内での本格展開がスタートしています。
2014年10月に米国で発表、展開されてきたオンラインのアプリケーションおよびサービスのマーケットプレース「Microsoft Azure Marketplace」(以下、Azure Marketplace)が、2016年1月から日本国内でも利用できるようになりました。独立系ソフトウェア開発ベンダー(ISV)は、Azure Marketplaceを利用することで、自社のアプリケーションやサービスを世界中のMicrosoft Azureユーザーに提供できるようになります。
Azure Marketplaceは、Microsoft Azureの複数のパートナーエコシステムを組み合わせて作られた1つの統合プラットフォームで、Azureユーザーは数クリックでさまざまなアプリケーションやサービスを簡単に検索、購入、デプロイすることが可能です。
Azure Marketplaceはスタートしてから1年ほど経過しましたが、既に3500以上のアプリケーションやサービスが登録されています。マイクロソフトのアプリケーションやサービスはもちろん、他社の製品やサービス、Linuxに代表されるオープンソースソフウトウェア(OSS)が豊富に登録されていることも大きな特徴になっています。
国内企業からの登録第1号となったのは、人気のコンテンツ管理システム(Contents Management System:CMS)の1つである「WordPress」の実行環境をパッケージにした仮想マシンイメージ「KUSANAGI for Microsoft Azure」です。開発元は、WordPressに特化したソリューションを展開するプライム・ストラテジーで、「CentOS(OS)」「Nginx/Apache(Webサーバ)」「MariaDB(データベース)」「HHVM(PHP実行環境)」という構成のAzure環境に最適化されたLinux仮想マシンとなっています。
この他にも、歴史的な提携として話題となったレッドハットが提供する仮想マシンイメージ「Red Hat Enterprise Linux 6.7/7.2」や、Microsoft Azure Active Directory(Azure AD)を使用してレッドハットのポータルサイトへのユーザーアクセスを有効にするアプリケーション「Red Hat Portal Login」などが登録されています。
日本マイクロソフトの青木卓氏(マーケティング&オペレーションズ部門 クラウド&エンタープライズビジネス本部 シニアプロダクトマネージャー)は、Azure Marketplace本格始動の意義について、次のように述べています。
「日本のISVがアプリケーションやサービスを直接Azure Marketplaceにアップロードして、販売できるようになったことが大きいです。また、エンドユーザーも、これまで米国やその他の地域のものしか入手できなかったのが、日本のISVによる国産アプリケーションやサービスを直接購入できるようになりました。これは、国内ISVが海外にも販路を広げることができるようになったということでもあります」(青木氏)
今後、国内ISVからは、さまざまなアプリケーションやサービスが登録、提供される予定とのことです。現在、国内向けに日本語化された「Azure Marketplaceのポータル」や、「Azureの新しい管理ポータル」から簡単に利用できるようになっています(画面1、画面2)。
Azure Marketplaceのポータルでは、各カテゴリーで人気のあるサービスが一覧できます。簡単に見てみましょう。カテゴリーは現在、以下の7つに分けられています。
ポータルではカテゴリーごとに「おすすめ」を見たり、条件を指定して検索したりすることができます。例えば、Virtual Machinesの項目の右側にある「すべて表示」をクリックすると、「おすすめのAzure Virtual Machinesイメージ」が表示されます(画面3)。
その中には、Windows Server 2012の他、ビッグデータ分析用Hadoopソリューションの「Hortonworks Data Platform」、WAF(Web Application Firewall)ソリューションの「Barracuda Web Application Firewall」、データベース基盤の「SAP HANA Developer Edition」「Oracle Database」など、マイクロソフトと協業しているベンダーやパートナーの多岐にわたるソリューションが用意されています。また、「すべて」タブでは、オペレーティングシステム(OS)、発行元(コミュニティー、パートナー、Microsoft)、MSDNサブスリプション向けなどの条件で絞り込み検索が可能です。
同じように、API Appsには、Office 365やSharePoint、ビッグデータ分析のHDInsightなどとAPI連携するための「Office365 Connector」「SharePoint Server Connector」「HDInsight Connector」などがあります。マイクロソフト製品だけでなく、「Salesforce」「Facebook」「Twitter」「Dropbox」「Box」など、他社サービス用のコネクターも用意されています。
Azure Active Directoryアプリケーションは、シングルサインオン(SSO)やユーザーアカウント管理を簡単に実行するためのアプリケーションです。対象となるクラウドサービスとしては、「Google Apps」や「Salesforce」の他、Web会議「Citrix GoToMeeting」、経費精算「Concur」、ERP「NetSuite」、人事管理「Workday」などがあります。
登録数を見てみると、これら3カテゴリーが数多く占めていることが分かります。日本マイクロソフトの佐藤克彦氏(デベロッパーエバンジェリズム統括本部 ISVビジネス推進本部 ビジスデペロプメントマネージャー)は、次のように説明してくれました。
「事前に構成された仮想マシンを簡単に使いたい、クラウドサービス同士を簡単に連携させたい、シングルサインオンやユーザー管理を効率化したいといったニーズが企業ユーザーには強くあります。特に、オンプレミスのActive Directoryで管理しているユーザーをクラウドサービスと連携させ、効率化していくことは企業の大きな関心事になっています」(佐藤氏)
基幹システムやオンプレミスシステムとの連携はニーズが強いものの、企業ごとに環境が大きく変わります。そのため、ISVによるソリューション開発が求められる分野であり、実際に登録件数が多くなっているということです。
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