最新の、可能な限り安定したWindows 10環境を手に入れる最も確実な方法は、Windows 10を新規インストール(クリーンインストール)することです。Windows 10 バージョン1511からは、Windows 7、Windows 8、Windows 8.1の有効なプロダクトキーを使用したインストールメディア(誰でもダウンロード可能)からのWindows 10の新規インストールが可能です。
アップグレードインストールは、ユーザーデータや設定、アプリケーション、デバイスドライバを引き継ぐことができるという利点がある一方で、アップグレード前の環境がアップグレード後のWindows 10環境に意図せず残ってしまったり、それが原因でトラブルが発生したりすることがあります。
Windows 7とWindows 8以降では、「タスクスケジューラ」機能に重要な変更が行われました。その変更とは、「電子メールの送信」と「メッセージの表示」アクションがサポートされなくなったことです。Windows 7からWindows 10にアップグレードした場合、これが原因でWindows 7で登録されていたタスクがWindows 10で破損してしまうというトラブルがあります。
また、アップグレードで削除されたアプリケーションのタスクが残ってしまうという問題もあります。以下の記事では、タスクスケジューラ(taskschd.msc)の代わりに、「SCHTASKS」コマンドによるタスクの操作、タスクに関連するレジストリのクリーンアップ、Windows Sysinternalsの「Autoruns」ツールを使用したタスクの無効化や削除方法について説明しています。
Windowsの新バージョンでは、これまでの既定の動作が全く逆になるという“仕様変更”がこっそりと行われることがあります。Windows 10では「リモートデスクトップサービス(RDS)」のサーバ側(接続される側)で、「その他のサポートされているプラグアンドプレイ(PnP)デバイスのリダイレクト」の既定の動作が変更されました。
Windows 8.1およびWindows Server 2012 R2以前のリモートデスクトップサービスでは、リモートクライアントからのその他のサポートされているプラグアンドプレイ(PnP)デバイスのリダイレクトは既定で許可されていました。
Windows 10では既定では許可されなくなり、「グループポリシー」や「ローカルコンピューターポリシー」で許可しない限り、リダイレクトを受け付けなくなります。リダイレクト対象のデバイスには、RemoteFX USBデバイスも含まれます。
以下の記事では、Windows標準の「イベントビューアー」やWindows Sysinternalsの「Process Monitor(ProcMon)」、Windowsの標準コマンドを駆使して、この仕様変更を発見するに至るまでをレポートしています。
Windows 8.1以前のWindows Updateでは、インストール対象の更新プログラムやドライバをエンドユーザー自身が取捨選択することができました。更新プログラムを非表示にして、以後インストールされないようにすることも簡単にできました。
Windows 10のWindows Updateでは、Windows 8.1で普通にできていた更新プログラムのインストール制御が、簡単にはできなくなっています。通常、エンドユーザーは、Windows UpdateやWindows Server Update Services(WSUS)で配布された更新プログラムを全てインストールすることになります。もし、更新プログラムに問題がある場合、ユーザー自身で事前にインストールをブロックするということが簡単にはできません。
以下の記事では、デバイスドライバの更新の問題により、特定のデバイスが機能しなくなった場合の対処方法を説明しています。更新プログラムを自身でブロックするためには、マイクロソフトから別途ダウンロード提供される「Show or hide updates」ツールを使う必要があります(画面3)。
また、この記事では「デバイスガード」(仮想化ベースのセキュリティ)の有効化により、デバイスが動作しなくなるトラブルについても説明しています。デバイスガードはWindows 10 EnterpriseおよびEducationのセキュリティ機能であり、ハードウェアも選ぶので、一般ユーザーでこの問題に遭遇する人は少ないでしょう。しかし、新機能をいろいろと試してみたいパワーユーザーや企業のIT部門の方は、このようなトラブルがありうることを知っておいた方がよいでしょう。
筆者にとって、Windowsのトラブルシューティングには「Windows Sysinternals」の無料ツール群が欠かせません。Windows Sysinternalsは古くからあるツールですが、ほとんどはWindows 10でも利用できます。Windows 10への対応状況などについて、以下の記事で説明しました。
今回はこれまでに筆者が遭遇したトラブルの事例と、その解決方法を紹介した過去記事を紹介しました。皆さんもWindows 10へアップグレードする、またはアップグレード後に何かトラブルが発生した場合には、今回紹介した記事が役に立つことがあるかもしれませんので、ぜひ参考にしてください。
●Windows 10のトラブル解決に役立つ記事一覧
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。
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